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プロフィール
橋本とし子
写真家 高校生の時に父親の二眼レフを譲り受けて以来、日常的に写真を撮り始める。大学卒業後に写真を学び、プロラボ、新聞社に勤務後フリーとなる。以来、旅や身辺の情景をテーマに、雑誌・個展等で作品を発表している。2026年には、フランス国立図書館(BnF)による企画写真展への参加を予定。
愛用カメラ:Leica Q2
キチムは夜に飛ぶ
長女が口にした“キチムはよるにとぶ”という言葉の言霊みたいなものに、希望を託した
「キチム、キチム、キチムは よるに とぶ」
夢と現実が交錯する2歳の長女が、あるとき口ずさんだ。
キ、チ、ム。
耳慣れない響き。まるで呪文のようだ。
「きちむ」は「吉夢」。
「縁起の良い夢」「幸先の良い夢」という意味があることを後に知った。
この言葉を当時の彼女が知る由も無く、突然口にしたこの言葉が、
未来のお告げのように、朧げだけれど確かな明かりに見えた。
吉夢のイメージは、
毎日繰り返される日常、時に味わう非日常の断片をすくい続ける。
これまでもこれからも。
私は何を見るのだろう。
── 橋本とし子 写真集『キチムは夜に飛ぶ』あとがきより
日常の中でふとした瞬間に立ち現れる、夢のような非日常を切り取って
「ふたりの娘を出産し、ようやく少し落ち着いてきたころ、できるタイミングで自分の見てきたもの、撮ったものをまとめたいと思いました。そこで長女が誕生してから撮りためてきた写真を展示しました。その展示を見たアートディレクターの長尾敦子さんが写真集の制作を提案してくれたことが、『キチムは夜に飛ぶ』のはじまりです。子どもと行動を共にすることで新たな世界が広がり、親になっていく過程で新しい視点を得ました。けれど同時に、自分の世界を持ち続けることの難しさや葛藤も感じていました。その狭間で揺れていた時期に撮影したのがこれらの写真です。タイトルは、長女が遊びの中でふと口にしたもの。日常の中のふとした瞬間に立ち現れる夢のような非日常を集めた写真と、娘が発したこの言葉がピッタリだと思ったのです」。
この本が誰かの心と共鳴して残り、時間超えて、また誰かの手に届くかもしれない。そう思うととても嬉しい
「このプロジェクトは、単なる子どもの成長記ではなく、自分が本来持っている感覚的な部分を大切にしました。大事な宝物をそのままそっとしておきたい気持ちと、誰かにも見てもらいたい気持ち、期待と不安が入り混じる中で、自分の世界を外の世界に解き放ちました。すると、さまざまな立場の方々から反応をいただき、とても励みになりました。詩人の谷川俊太郎さんが心が震えるような詩を寄せてくださったこと(付録『キチムは夜に飛ぶ』メッセージブック)も、自分の写真を超えた自分自身の理解者となってくれたような気がして、大きな喜びでした。私が捉えた世界を“本”という形で残すことで、誰かの手に届き、誰かの心と共鳴して残り、時間と空間を超えて、また誰かの手に届いたとしたら嬉しく思います」。
Photo Book『キチムは夜に飛ぶ』
ふげん社
GENIC vol.76 【キチムは夜に飛ぶ】
Edit:Izumi Hashimoto
GENIC vol.76
2025年10月号のテーマは「 撮ることのその先へ This is My Project.」
あなたは「何」を撮っていますか? 自分の表現を説明できますか?
タイトルをつけることができますか?
オリジナルのプロジェクトを持つことは、自分の写真を「言語化」すること。
1つの企画によってまとめられた作品群からは、“作家の声”が聞こえてきます。
あなたも、写真プロジェクトを始めませんか。
一歩進む。撮ることのその先へ。