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アフターオール 蓮井元彦

紙の良さも味わえるZINEや写真集を精力的に手掛ける、写真家の蓮井元彦。母のことや生まれ育った東京を撮ったシリーズの続編である、母の生と死、そして自身の想いに向き合った記録「アフターオール」について伺いました。

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目次

プロフィール

蓮井元彦

写真家 1983年生まれ、東京都出身。2003年渡英、Central Saint Martins Art and Designにてファウンデーションコースを履修した後、London College of Communicationにて写真を専攻。卒業後、2007年帰国。以降、東京を拠点に活動する。
主な写真集に『Personal Matters』(Bemojake)、『Deep Blue – Serena Motola』(私家版)、『吉岡里帆写真集 so long』(集英社)、『for tomorrow』(Libro Arte)、『VIATOR / SWELL』(Libro Arte)、アーティストブック『つづいてゆくものの中で』(私家版)、『アフターオール』(私家版)など。
愛用カメラ:Canon EOS 5D Mark IV、Sony α7R IV、Phase One XF + Phase One IQ180/IQ250、ALPA 12 TC + Phase One IQ180/IQ250、FUJIFILM X100V
愛用レンズ:EF50mm F1.4 USM、FE 20-70mm F4、Phase One SchneiderKreuznach LS 55mm f 2.8、ALPA HR Alpar 35mm F4

アフターオール

母の生と死、そして自身の想いに向き合った記録

#1

「『アフターオール』は、母の末期癌が発覚してからの最後の家族旅行とその前後の様子を撮ったもの。人はいつかは死んでしまうということ、そしてそれによって自分にどのような変化があったかを伝えたいと思いました。人の死を含め、生きている中で起こることは大体受け身のこと。どう受け止めどうやり過ごすかに自分の表現があり、自分のモヤモヤ、悲しみなどが作品として表出するのだと思っています。そこで初めて写真が自分ごとではなくなり、展示などを通じて作品を見た他者との間に接点が生まれる、それを体感したいのかもしれません」。

精神的な写真なので、自分の美意識を出しすぎるよりシンプルに

#4

「このプロジェクトは、同じく母のことや生まれ育った東京を撮ったシリーズの続編に当たるのですが、今思えばその中の『空』というシリーズから始まったような気がします。これは母が癌を宣告された直後に通りかかった、三軒茶屋の空を撮影したもの。『空』から『アフターオール』までをまとめた『650』という複合プロジェクトの展示も行いました。これらの中にはカラー作品もありますが、『アフターオール』に関しては、自分の気持ちの沈み具合などもあり、モノクロの世界で表現しています。撮影には、中判カメラのALPA12 TC(一部、FUJIFILM X100F)を使いました。ALPAはフィルムカメラとしても使える機種ですが、エモーショナルになりすぎないよう、デジタルで無機質に仕上げています」。

写真をビジュアルとして捉えすぎないようにしている

#24

#30

「普段から思っていることですが、特にこのプロジェクトに関しては、写真をビジュアルとして捉えすぎないようにしています。写真は視覚芸術ではあるけれど、かっこ良すぎるのは自分らしさと違うし、なぜ写真を撮っているかという本質が置き去りになってしまう気がして。それに、今回は精神的な写真でもあり、自分が思っている美意識みたいなものを出しすぎるより、もう少しシンプルでいたい。プロジェクトのタイトル『アフターオール』も、結局最後は…という自分の心情を表現したニュアンス。最初にパッと思いつき、かっこ良すぎないところも自分の虚無感を表す言葉としてしっくりきました」。

母もまた生命なのだと思った

#36

#39

#40

直感的と思考的を行き来してプロジェクトが生まれる

「写真を撮ることは、自分のことをより深く知るために自分が見つけた表現手段だと思っています。そもそも写真を撮ることで人のことを知ろうとするのは無理な気がしていて、それよりも自分のことを知ること。自分について本気で知ろうと思えば、人の気持ちもわかるんじゃないかと思って写真をやっています。自らの弱さを認め、自分と向き合う、それが溢れ出てきちゃうのが写真なのかなと。だから人と違っていいし、それが写真の面白さであり怖さでもある。直感的に撮り、持ち帰って、どうしてこれを撮ったんだろう、自分は何を考えているんだろうと思考の中で検証する、そんな風に直感的と思考的なことを繰り返すうちに、プロジェクトが発生するような気がします」。

自分の中の行き場のない想いを形にする

#41

「プロジェクトをやろうと思ってやるというよりは、写真家として写真活動をやっているだけ。それが自然に『アフターオール』のような形になるのだと思います。また、写真は紙になって初めて写真だと考えているので、プロジェクトを写真集やZINEとして表現することも大事。作家が自らの手で作ったものとほぼ同じものに、物理的に触れられるのが最大の魅力です。『アフターオール』でも、落ち込んだ気持ちや行き場のない思いをきちんと形にすることにこだわり、写真集や展示にしました。
『アフターオール』でひとつのシリーズが終わった今、もう少し意図的に写真を撮ろうという気持ちが湧いています。経験したくないけど経験してしまうことにどう向き合うか、受け身で自分の中の世界を撮ることを続けたせいか、人に積極的に会いに行ってみたり、撮ろうと思って撮ったりと、もう少し能動的に撮りたい気分なのかもしれません」。

Photo Book『アフターオール』

ZINE

GENIC vol.76 【アフターオール】
Edit:Satomi Maeda

GENIC vol.76

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