澤村洋兵
フォトグラファー 1985年生まれ、京都府出身。美容師、和食料理人、バリスタ、珈琲焙煎士などさまざまな職業を経験してきた異色の経歴を持つフォトグラファー。企業案件や広告写真、オンラインサロン主宰やSNSブランディングアドバイザーなど幅広く活動。YouTube「キョウトボーイズ|写真と京都と男旅」も人気。
愛用カメラ:Nikon Z 5、Nikon Z 7II、Leica M10
愛用レンズ:NIKKOR Z 50mm f/1.8 S、Voigtlander COLOR-SKOPAR 35mm F2.5 PⅡ、Leica Summilux 50mm f1.4 1st
駅と人。
当たり前の日常をどう魅力的に切り取るか
「大阪駅。たくさんの人が行き交う様子が水族館の大きい水槽の魚たちに見えました。その感じを表現したくてスローシャッターでブラして撮影」。
「撮影帰り、スマホを覗く男女の姿が。デート中で『次どこ行くー?』って調べている感じですかね?デートいいなーって勝手に思いながら素敵な瞬間を撮影しました」。
「写真を始める前から、アンリ・カルティエ・ブレッソンや木村伊兵衛、スティーブ・マッカリーが好きでした。彼らのスナップ写真に魅せられて、憧れからストリートスナップを撮り始めています。そんな写真のことも、昔は『ギャンブル』って言ってました(笑)。いい写真をゲットするために時間とお金を費やして。でも現在は『今を未来に持っていけるもの、時代を繋ぐもの』って感じています。当たり前の日常もなんかいいもんだよってのを写真で伝えたいし、今生きて実際に見ている自分の世界を未来に持っていきたいんです。だから観光地の絶景などではなく、生まれて育って今も住んでいる京都をメインに、日常をスナップすることが多い」。
「旅の途中、駅員さんが出迎えてくれる。そこには朝日が生み出してくれる綺麗な木漏れ日。持っていたLeica M10で思わずシャッターを切りました。奥にいる旅のメンバーの一人が、旅感を引き立たせてくれています」。
駅って多くの人が滞在する時間があるんですよね。で、それぞれの時間を過ごしていて、もちろんそこで働いている人もいて。一つの場所でいろんな状況が起きていて、おもしろいんですよね。
「京都駅で出会った景色。待ち時間がたっぷりできちゃったのかな、子どもたちは暇だからゲームでもしてるのかな?一人足りないけど映画『スタンド・バイ・ミー』みたいだな、なんて想像していました」。
「夜も更けてきた時間帯、仕事帰りなのかスーツで寝ちゃっている人がいました。『お疲れ様です』と心で呟きながらシャッターを切りました」。
「清掃員さんの服、ゴミ袋を集める大きな袋、新幹線のデザインのライン、その三つが青なのも面白いと思いました」。
「赤い帽子と青い帽子の駅員さん。お二人のバランスもいい。『これは撮らねば!』と。でも奥が明るくてハイキーになりすぎる状況だったので、電車が通るのを待って撮影しました」。
「子どもの行動って予測不能で実に面白いなって思います。この瞬間を逃したくないと思い、首からかけていたLeica M10で、ぶらさげたまま目測でシャッターを切りました」。
「東京での移動中、ホームで電車を待っていました。前を見ると着物を着た女性の後ろに大きい広告の女性。バランスが面白いなって思っていたら上からエスカレーターで人が降りてきました。急にいろいろなことが目に入ってきて、急いでシャッターを切りました。駅って場所によっては要塞のような建築になっていて、そういうところも面白いですよね」。
「この駅のシリーズも、わざわざ撮りに行っているわけではなく、どこかへの移動の際に見た景色を切り取っています。自分らしさの投影はその時々の自分によって変化していきますけど、派手にすごーい!って写真ではなくて、日常的な当たり前の景色をどう魅力的に切り取るか、というのは変わらない部分としてありますね」。
Information
『あの人が自分らしい写真を撮れる理由』
写真の“自分らしさ”って、どうやって見つけるの?自分らしい写真表現の「芯」を手に入れるための、写真表現・活動のヒントが詰まったフォトエッセイ。
(著者:澤村洋兵/発行:株式会社インプレス/構成:A5判、176ページ/定価:1,980円)
GENIC vol.63 【街の被写体、それぞれの視点】
Edit:Chikako Kawamoto
GENIC vol.63
GENIC7月号のテーマは「Street Photography」。
ただの一瞬だって同じシーンはやってこない。切り取るのは瞬間の物語。人々の息吹を感じる雑踏、昨日の余韻が薫る路地、光と影が落としたアート、行き交う人が生み出すドラマ…。想像力を掻き立てるストリートフォトグラフィーと、撮り手の想いをお届けします。