sugar
経理事務、フリーカメラマン 台湾生まれのクォーター。10歳より東京在住。2007年、オーロラの旅をきっかけに写真を始める。デジタル・フィルム・モバイルなどをそのときの場面や場所によって使い分け、それぞれの持ち味を写真を通じて発信。物語を感じる写真、幻想的な写真、遊び心のある写真を好む。共著に『「ポーズ・光・色」が最高の表情を作り出すポートレート写真術』(インプレス)がある。
愛用カメラ:Sony α7Ⅱ、Sony α7Ⅲ
愛用レンズ:Sony Planar T* FE 50mm F1.4 ZA、PENTAX M42 Super Takumar 50mm F1.4、Voigtlander NOKTON Classic 35mm F1.4
ポートレートにも遊びゴコロを
基本的にどんな撮影でも「楽しむ」ことが一番大事
「この写真、実は4枚の写真を重ねています。あらかじめ多重素材として使えるように鳥や飛行機など、日常で目に留まったものを撮り溜めているので、ちょっと物足りないなと思ったときにPicsArtというアプリを使ってエッセンス要素として足しています。同じモデルさんが同じ菜の花畑で違うポーズで撮った写真を3枚と、別の場所で撮った飛行機だけの写真1枚を重ねています」。
ストーリーを持たせることでモデルの魅力をさらに引き出す
見ている人も楽しく感じられる、遊び心のある作品を撮り続けているsugarさん。
「どんな撮影でも楽しむことが一番大事だと思っているので、それが写真に反映されているのかもしれません。また、人を撮るときに、ただモデルがかわいいだけの写真にならないように気を付けています。私のポートレートはロケーションありきなので、欲しいイメージの空やかわいい雲が青空に浮かんでいる日はそれだけでテンションが上がります。背景にはなるべく自分の好きな色が入るように意識したり、玉ボケがいっぱい出るところを選んだり、ただの記念撮影の写真にならないように、写真に“ストーリー性”を持たせることがモデルの魅力を引き出すことにも繋がると思っています」。
「江の島海岸の光に反射した海がとてもきれいだったので、斜光×ローアングルで撮影しました。光に反射したキラキラとした水しぶきと躍動感が印象的な一枚になりました」。
sugarさんへ質問
Q1.ポーズはどのように決めていますか?
「何を表現したいかにもよりますが、例えば視線ひとつとってみても、上を向いていると前向きなイメージ、下を向いているとしっとりとした雰囲気、などちょっとした違いで変わるので、まずはどんなイメージで撮りたいのかを明確にするのがポイントです。また、小道具は行き先やロケーションに合わせて決めますが、晴れている海などは明るいイメージで撮りたいので、カラフルな風船を用意することが多いです。ただ同じ場所で風船写真ばかりだと飽きてしまうので、その都度違う小道具をそこにひとつ加えて違う雰囲気で撮るようにしています」。
「白いラインが真ん中にくるよう、左右のバランスに気を付けながら上からの構図で撮りました。ここは広場なんですが、白いラインの幅が広くて、まるで大きなトラックの上にいるかのようで面白かったんです。ただ立っているだけのポーズでは面白くないので、敬礼ポーズをしてもらいました。ほかにも“前にならえ”バージョンもありましたが、こちらの方がハマりました!」。
Q2.演出やイメージ作りはどのようにしていますか?
「雨の日だったら水たまりができているであろうことを予測して映える傘を持って出かけるなど、あらかじめイメージを膨らませて小道具を用意していくこともあります。雨の日はただ傘を持って立っているだけでもしっとりとした雰囲気になりますが、雨あがりで青空が写りこんでいるときは、大振りに闊歩してみるなどして敢えて明るい雰囲気づくりをしたり、その場のシチュエーションによって演出を考えています」。
「傘の模様がきれいに水たまりに映りこむように、ビニール傘の角度を調整しながら撮影しました。雨の日のしっとりとした雰囲気と散っていく桜の切なさを表現しています。水たまりに桜の花びらが浮いていて、まるで桜吹雪のような美しさに」。
「とてもとても大きな水たまりに惹かれて何度も水たまりを横切ってもらい撮影しました。明るいイメージで躍動感を出したかったので、青い空と白い雲がきちんと映りこむよう角度にはこだわりました。もし、青い空だけだけだったらシャッターは切らなかったかもしれません」。
NGカットがベストショットになることも
Q3.新しい視点の見つけ方を教えてください。
「視点や場所で“これが正解”というものはないと思うのですが、案外ポーズが崩れたときやキメ顔が崩れたときなどのNGカットの方がいい写真が撮れていたりするので、どんな場面でもとりあえずシャッターを切ってみてください。最初はイマイチだと思っていた写真があとから見ると一番よかったということがよくあります」。
「この日集まった記念に友人の集合写真を撮りました。傘を持って、躍動感が出るように大きく行進してもらったのですが、ひとりだけ足並みが揃っていないところが逆にコミカルになって、結果オーライな一枚になりました」。
Q4.人を撮るときに欠かせないカメラガジェットはありますか?
「iPhoneで撮ることも多いので、tokyo grapherのテレレンズとワイドレンズというアタッチメントレンズをよく持ち歩いています。また、tokyo grapherのレンズフィルターもおすすめです。OPF 550-Lは寒色寄りになり、OPF 650-Lは暖色寄りに写るのですが、描写が柔らかくなりポートレートにとても向いているフィルターだと思います」。
GENIC VOL.59 【あの人の表現に近づく! ポートレート撮影Q&A】
Edit: izumi hashimoto
GENIC VOL.59
特集は「だから、人を撮る」。
最も身近にして最も難しい、変化する被写体「人」。撮り手と被写体の化学反応が、思ってもないシーンを生み出し、二度と撮れないそのときだけの一枚になる。かけがえのない一瞬を切り取るからこそ、“人"を撮った写真には、たくさんの想いが詰まっています。泣けて、笑えて、共感できる、たくさんの物語に出会ってください。普段、人を撮らない人も必ず人を撮りたくなる、人を撮る魅力に気づく、そんな特集を32ページ増でお届けします。