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【撮影と表現のQ&A】コハラタケル/Q.万能なLightroomのプリセットを作るコツは?

さまざまな写真家、フォトグラファー、クリエイターが登場するQ&A企画。
「知ることは次の扉を開くこと」。
今回は、感情のゆらめきを繊細に写し取るフォトグラファー、コハラタケルさんに質問です。

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コハラタケル

1984年生まれ、長崎県出身。建築業を経てフリーランスのライターとして経験を積み、その後フォトグラファーに転身。セクシー女優たちのデジタル写真集“とられちシリーズ”を撮影するほか、山本文緒『自転しながら公転する』や、島本理生『あなたの愛人の名前は』(文庫版)など、書籍カバーにも写真が採用されている。
愛用カメラ:Leica Q2/SL2-S、FUJIFILM X-Pro3
愛用レンズ:XF23mmF1.4 R/35mmF1.4 R、Leica Vario-Elmarit-SL 24-90mm f/2.8-4 ASPH.

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Q.万能なLightroomのプリセットを作るコツは?

A.8割の出来で作り、あらゆるシーンに適用してみる

人物写真にも対応させたいなら、暖色系にするのがおすすめ

「プリセットを作る時は、まず、写真の全体の色味を寒色系にするか暖色系にするかを考えます。個人的には人物写真にも適用させたいなら、暖色系のほうがどのシーンにも対応しやすいプリセットを作れると思います。なぜかと言うと、肌の色に関わってくるからです。寒色系は自然光・定常光、朝・昼・夕方、晴れ・曇りなど、各シーンで肌色がばらつきやすいですが、暖色系であれば不健康な肌色に見えることは少ないです。人物写真においてもっとも繊細に考えるべき部分であり、プリセットに関しても肌の色に問題が出ないかが大きなポイントとなります」。

自分らしいプリセットの基本的な作り方

①完成形に近い写真で制作を開始

写真1

「最初に、好きな写真、柔らかい光で撮影した写真を選んでください。明暗差が激しい写真からプリセット制作を始めると難しいです。現像で明るさを調整しなくても、すでに完成形に近いかな、と思う写真で、さらに自分の作風としてこだわりたい色が入っている写真を選びます。僕は植物の緑色にこだわっているので、植物が入っている+光が柔らかい写真をセレクト(写真1)」。

②自分がこだわりたい色だけをとことん調整して理想の色に

写真2

「プリセット制作で大切なのは、ひとつずつ理想の色を作っていくこと。一気に全体を調整しようとすると、前に進めません。僕の場合は、まず植物が理想の緑色になることだけを考えて調整します。写真2は、緑色を寒色にするために全体の色温度を下げて調整したもの。緑色は理想の色になったかわりに、肌の色は悪くなりましたが、この段階では一旦これで良しとします。100%は目指さないでください。80%良い色が作れたかなと思ったら、次の色に進みます」。

③理想の色を維持したまま、ほかの色も理想の色に近づけていく

写真3

左:写真2、右:写真3

「次に、植物の理想の緑色を維持したまま、肌を理想の色に調整します。これも80%の出来で十分です。そもそもプリセットはその写真にあてはめても完璧に出来上がるというものではなく、適用後に写真ごとに微調整するのは当たり前です。完璧を目指すよりも、どの写真でも使える下地を作れるプリセットに仕上げることのほうが重要です。写真3は理想の緑色をキープしたまま、肌の色を調整したもの。植物の部分に注目して2と3の写真を比べてみると、緑色に多少の違いはありますが、これくらいなら良しとします」。

④80%の出来のプリセットをいろいろなシーンで撮った写真に適用してみる

順光

逆光

緑があるシーン

「植物の緑色、肌の色、どちらも80%の出来のプリセットが出来たら、今度は条件の異なるさまざまなシーンで撮影した写真に適用してみます。朝陽と夕陽でも適用後の変化が違うので、いろいろ試すこと。室内の順光、室内の逆光。晴れの日の海、曇りの日の海。黒い服を着ている場合、白い服を着ている場合など、試してみるシーンは100パターンでも少ないくらいではありますが、可能な限り、いろいろなシーンの写真に適用してみて、大きく破綻することなく、自分の表現らしい色が出ていれば、プリセット完成となります」。

【POINT】基本補正の露光量とコントラストは適用後、調整することを前提に

「プリセットは、自分らしい色味に調整できるものであるかどうかが重要なので、明るさやコントラストに関しては、あまり気にしなくて良いと思います。Lightroom上の基本補正にある『露光量』と『コントラスト』のレバーは0の状態で、好きな色味にだけなるようなプリセットを作っておき、各写真に合わせて露光とコントラストは微調整したほうが、使いやすいと思います。80%のベースプリセットを制作した後、その朝陽バージョン、夕陽バージョン、室内バージョン、などのように、各シーン別に細かくプリセットを作ってみるのがおすすめです」。

GENIC vol.67【撮影と表現のQ&A】コハラタケル/Q.万能なLightroomのプリセットを作るコツは?
Edit:Yuka Higuchi

GENIC vol.67

7月号の特集は「知ることは次の扉を開くこと ~撮影と表現のQ&A~」。表現において、“感覚”は大切。“自己流”も大切。でも「知る」ことは、前に進むためにすごく重要です。これまで知らずにいたことに目を向けて、“なんとなく”で過ぎてきた日々に終止符を打って。インプットから始まる、次の世界へ!
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