コハラタケル
フォトグラファー 1984年生まれ、長崎県出身。大学卒業後、建築業の職人を経てフリーのライターに。その後フォトグラファーに転身。セクシー女優たちのデジタル写真集”とられち”シリーズ撮影担当。#なんでもないただの道が好き 発案者。noteサークルを主宰 https://note.com/takerukohara/n/nb23cb712fd18
愛用カメラ:FUJIFILM X-Pro3、Leica Q2/M11
愛用レンズ:FUJIFILM XF23mmF1.4R、Leica APO-SUMMICRON M f2.0/50mm ASPH.
#なんでもないただの道が好き
ふつうの道だって見方を変えれば決して絶景に負けていない
「壁に背を向けるパターンを撮りがちですが、モデルさんに壁側を向いてもらうことで、普段やらない行動になり、写真としての面白さが出たと思います。バケツや自転車、植木鉢などを寒色系の色合いで統一したのもこだわり」。
「写真を始めたのは2016年。当時はセルフポートレートや自宅でブツ撮りをすることが多く、撮り続けていくことに難しさを感じていました。ある日、友達を撮影させてもらう機会があり、その時初めて自分の好きなように撮影をしました。場所はその子が住んでいる街。下見もせずに撮り始めたのですが、写真を見返すと、その子の姿も街の姿もころころと変わり、見え方が豊かだったんです。『これなら続けられる』。この体験をきっかけに『僕はストリートで勝負しよう』と思うようになりました。日本の街って、とにかく複雑。脇道も多く、自動販売機や看板もたくさんあります。少し歩くだけで次々と景色が変わっていきます。特に東京は新旧の入れ替わりが激しく、混在しているのも魅力。例えば、近所を散歩しながら撮った写真を見ても、『10分でこんなにいろいろな景色を見ていたんだ』ということに気づきます」。
雲は多いけれど朝日を見ることができた、夏の早朝に撮影。
「カメラ側は光が差していたのですが、モデル側は雲が多いという違和感が好きだったのと、地味な道ですが、奥の方が坂になっているレア感で撮影場所に選びました」。
なんでもないただの道=日常の大切さに気づくため
「平凡な道ですが、何もないからこそ遊べる余地があると考え、モデルさんより目立つように電話ボックスを配置し、左上の空を埋めるため、この構図に。被写体に地面のタイルが反射しているのも好きなポイント」。
手すりの波のような影を主張した1枚。
「背景情報が少ない場所を探しましたが見つからず、マンホールの上にモデルさんを座らせることで、被写体をひとつにまとめました。道路の奥が見えないようにハイアングルで」。
「歩道橋から見下ろした時、マンホールが三角形に並んでいることに気づき、思い付いた構図。晴れの日にビニール傘を使うと影の表現が面白いため、JURI さんには顔を見せず、やや右寄りで歩いてもらい、バランスを図りました。彼女はダンス経験者で歩き方がうまいからこそチャレンジできた写真」。
相武えつ子さんのご家族と遊んだ時の写真。
「夕陽が沈みかける頃、アブに追われました(笑)。ふたりの視線はアブの確認で、だから不安そうな顔に。実は細かいことが気になる写真ではありますが、ふたりの存在と表情で魅力的な1枚に」。
「何気なく見ていた景色も、写真にすると何気なくない瞬間が訪れる時がある。ストリートは”日々、変化している”というメッセージを受け取りやすい場だと思います。ロケーションへのこだわりはありません。どこでもいいですし、探せばどこにでも面白い部分がありますから。絶景というのはどこを切り取っても良い景色だからこそ絶景と呼ばれるのであって、ふつうの道では自分で良いと思う場所を探さなければいけません。その探す行為に面白さを感じています。用意されているか、自分で用意するか、その差だと思っています。自分で用意する余地がある、なんでもないただの道のほうが僕は好きです」。
【人気ハッシュタグの発案者】
#なんでもないただの道が好き
コハラさんにとって当たり前のようにある感覚を言葉にしたという、#なんでもないただの道が好き はいまやInstagramで40万近く投稿されている人気ハッシュタグに。コハラさんのnote記事で、「"なんでもないただの道が好き"への想い」をチェックしてみて。
GENIC vol.63 【街の被写体、それぞれの視点】
Edit:Yuka Higuchi
GENIC vol.63
GENIC7月号のテーマは「Street Photography」。
ただの一瞬だって同じシーンはやってこない。切り取るのは瞬間の物語。人々の息吹を感じる雑踏、昨日の余韻が薫る路地、光と影が落としたアート、行き交う人が生み出すドラマ…。想像力を掻き立てるストリートフォトグラフィーと、撮り手の想いをお届けします。