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プロフィール
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フォトグラファー 東京都出身、在住。インスタグラムをきっかけにフリーランスに転身。国内外で風景からブツ撮りまで幅広く撮影。雑誌やウェブで旅にまつわる執筆をする傍ら、全国でフォトワークショップを開催するなど「写真の楽しさ」を伝える活動にも取り組む。著書『日々を美しく記録するフォトレッスン』(玄光社)が発売中。
愛用カメラ:Sony α7R V、Leica Q2、Hasselblad 500C/M
愛用レンズ:FE 85mm F1.4 GM II、Summilux F1.7/28mm ASPH.、Carl Zeiss Planar C 80mm F2.8
炎と静寂に包まれた未知の国
「撮りたいものがそこにある」写真家としての好奇心が、不安を軽々と飛び越えていった
謎を解き明かすには、行くしかない
「年に30回ほど旅に出ますが、トルクメニスタンはこれまで訪れたどの国ともまったく違っていました。旅先として選ぶ人は少なく、情報も極端に少ない。厳しい情報統制や独裁的な政治体制など、『謎の国』として語られることが多く、旅の前はまるでミステリー小説の冒頭のような不穏な空気に包まれていました。それでも、私のなかでは目的がはっきりしていました。撮りたいものがそこにある。謎を解き明かすには、現地に足を運ぶしかない。写真家としての好奇心が、そんな不安を軽々と飛び越えていきました。一番の目的は、ダルヴァザのガスクレーター。通称『地獄の門』と呼ばれるその場所は、カラクム砂漠の真ん中にぽつんと存在しています。1970年代、旧ソ連時代に天然ガスの採掘中に起きた落盤事故によって生まれた巨大な穴で、有毒ガスの拡散を防ぐために火を放ったところ、50年以上燃え続けているというのです。近年では閉鎖の検討もされていると聞き、『今行かなきゃ、もう二度と見られないかも』という気持ちが背中を押しました。実際にその場所に立ったとき、目の前に広がる光景は、まるでファンタジー映画の世界。大好きな映画『ロード・オブ・ザ・リング』の終幕の地のようで、私にはたまらないビジュアルでした。カラクム砂漠は国土の約80%を占めています。砂漠に足を踏み入れたのも今回が初めてで、嵐の中で過ごした時間も含めて高揚しました。なぜこんな気持ちになったのか、今でもはっきりとは分かりません。ただ、こんな感覚を味わえたのはここが初めてでした」。
純白の街並みはまるで無人のテーマパークのよう
アシガバードは都市そのものが強いメッセージを持っているようだった
「首都 アシガバード。大統領令によって造られた純白の街。黒い車の走行が禁止されているなど、白さへのこだわりが徹底されています。街全体が大理石で統一されていて、驚くほど清潔。公道にはゴミどころか、葉っぱひとつ落ちていない。最初は不思議に思っていましたが、街中で掃除をする婦人たちが常に街中に点在していて納得。完璧に保たれた都市の美しさが、逆に人の気配を遠ざけているようにも感じました。街を歩く人がほとんどおらず、CGアニメやゲームの中を歩いているようです。街の空気はどこか不自然で、生活の息遣いがまったく感じられない。単に人口が少ないのか、それとも観光客が交わらないように設計された都市なのか。帰国後もその謎は解けず、こんな都市が本当に存在するのかと、いまだ驚きが残っています。建築も非常にユニークで、モニュメントも建物もどこか可愛らしくておもちゃのようでした。特に世界最大の室内観覧車アレムは日本では見かけないデザインで、行ってみてほしいスポットのひとつです。ただし、撮影禁止場所も非常に多いので、事前に確認することをおすすめします。街全体がラグジュアリーな無人テーマパークで、そこに迷い込んだような感覚。それほど現実離れした空間です。日本以上に整えられた都市空間に、魅せることへの強い執念と妥協のない美意識を感じました。そして、ただ美しいだけではなく、アシガバードは都市そのものが強いメッセージを持っているようでした。その静けさと白さのなかで、私はずっと『これは現実なのか?』と問い続けていた気がします」。
現地で出会った人々は穏やかで、親日国でもあった
もっと世界を知りたいという気持ちが強くなった旅
「2024年7月、初めて訪れたトルクメニスタン。携帯のローミングは使えず、電話もインターネットも完全に遮断。GoogleもYouTubeも使えず、地図も翻訳も頼れない。ここまで情報が遮断された旅は初めてで、正直かなり不安でした。eSIMやポケットWi-Fiの準備は必須です。中央アジアもイスラム圏も初上陸で、普段は『なんとかなる』と呑気に構えている私でも、この旅は違いました。こんなに不安になった旅は他にありません。外出には常に現地民が同行。不自由は感じませんでしたが、普段の旅では味わえない妙な緊張感がありました。それでも、現地で出会った人々は穏やかで、家族や友人と暮らし、日本のアニメが好きだと話してくれ、学校では日本語教育も行われている親日国でもありました。街では朝昼晩にアザーンが空に響き渡り、人々は祈りを捧げます。イスラム教徒が多く暮らす土地を訪れたのは初めてで、断食中の同行者の姿や、飲酒を避ける文化、チキン中心の食事など、リアルな異文化に触れることができました。厳しいルールも国民を守るための仕組みなのかもしれない。そう思うと、少し納得できた気がします。ミステリーな国が完全に解き明かされたとは言えませんが、自分の目で見ることができたことが大きな収穫です。旅の経験値はまだまだだと痛感し、もっと世界を知りたいという気持ちが強くなった旅でした。旅はハプニングの連続を楽しむ時間であり冒険!良くも悪くも思い通りにいかないのが旅であり、人生とそっくりだなと感じました」。
GENIC vol.77【Best Destination 写真家が選んだ、最高の旅先】
Edit:Megumi Toyosawa
GENIC vol.77
2026年1月号のテーマは「写真家が選んだ、最高の旅先」
どんな旅をしたらいい?
その答えは、As you like. お好きなように、自分らしく。ルートを持たない余白たっぷりの旅でも。行先を詰め込んだ時間割びっしりな旅でも。
だって、旅は表現だから。
さて、旅人でもある写真家たちが選んだ「最高の旅先」はどこでしょうか?何かがあなたの心を撫でたなら、そこは次の目的地かもしれません。
永久保存版、GENICらしい、新しい旅のガイドブックの登場です。