目次
- プロフィール
- 小見山峻のステートメント
- 写真が“詩”であり続けるように、エモーショナルな言葉を選ぶ
- Project:call, overhaul, and roll
- しっかり自分の動機を表明しなければ、 それはただカメラロールを見せているようなもの。だからステートメントはある意味、作品以上に重要。
- Project:9876543210(Nine to Zero)
- シャッターを切ることへの前提と向き合うと、 カメラが“ただ世界を写す道具”から、“自分を表現する手段”になる。
- Project:City Dive Shinjuku
- 写真とは、人生を楽しむための遊び道具であり、自分と世界を繋ぎ止めてくれる杭のようなもの。
- Photo Book「call, overhaul, and roll」
- GENIC vol.76
- おすすめ記事
プロフィール
小見山峻
写真家 神奈川県出身。「現実の出来事に対する視点を記録する」という写真の本質を突き詰め、コンピューターによる合成加工などに頼ることなく、グラフィカルな世界を建築する。
愛用カメラ:Nikon NewFM2、Konica現場監督HG、Nikon F100
愛用レンズ:Voigtlander NOKTON 58mm F1.4 SL II N、Voigtlander ULTRON 40mm F2 Aspherical SL II S
小見山峻のステートメント
写真が“詩”であり続けるように、エモーショナルな言葉を選ぶ
「僕にとってオリジナルプロジェクトは、特別な意味があるような認識ではありません。写真に関して、自分が思うことや思いつくことを一つ一つまとめたもので、それ以上でも以下でもないと考えています。言ってしまえば、自分が撮る写真はすべて、オリジナルプロジェクトです。単なる思い出アルバムではなく、プロジェクトや作品として写真をまとめたり撮ったりする行為は、もう一段深く自分と向き合うきっかけになります。それによって、自分がどんなものが好きで興味を引かれるのか、自分が写真を通して世界に何を求めているのか。そして、写真によって何を伝えたいのか。そんなことを考えるようになります。そういった、シャッターを切ることへの前提と向き合うと、カメラが“ただ世界を写す道具”から、“自分を表現する手段”になり、写真を撮ること、そして他者の写真を観ることがより楽しめるようになると思います。展示や写真集などでアートを“作品”として発表する際には、ステートメントはある意味、作品以上に重要視されます。特に写真は、ステートメントでしっかり自分の動機を表明しないと、ただスマホのカメラロールを見せているのと大差なくなってしまう可能性がある。僕のステートメントは展示内容や会場にもよりますが、コマーシャルギャラリーやアート的な展示では、より学術的な言い方を選びます。過去の写真史との対比や、その中で自分が選んだスタンスなどに重きを置きながら。ただ、その展示でも写真が“詩”であり続けるように、けっして論文にならないように、エモーショナルな言葉を選びます。ロジカルに動機や目的を伝えられることと、感情に触れる言葉で空気を理解してもらうことを両立できるよう心掛けています。プロジェクト制作で大切にしているのは、行動の結果であること。“撮影行為”の結果として“写真”が生まれるという認識で撮っているので、まず何か行動が先行するようにします。また、撮りたいもの、自分がカッコいいと思えるものであることも重要です。自分らしい写真とは、本当に自分が好きなものを撮っているか、だと思います。僕にとって写真とは、人生を楽しむための遊び道具であり、自分と世界を繋ぎ止めてくれる杭のようなものです」。
Project:call, overhaul, and roll
しっかり自分の動機を表明しなければ、 それはただカメラロールを見せているようなもの。だからステートメントはある意味、作品以上に重要。
いつの間にか、道を間違えることや遠回りすることを
悪手かのように避けてばかりの毎日になっていました。
迷うことなんて、下手をすれば食事の回数よりも多い代謝のひとつだと言うのに。
ならば今こそ迷えるだけ迷ってみせようと。馬鹿げた時間の使い方に踏み切ったのです。
思いつきのような衝動に駆られ、バイクのハンドルに安物の方位磁針を取り付け、
それを頼りに北を目指しました。
写真を生業にして、あれやこれやと格好をつけ、撮る理由をでっち上げている毎日ですが、その実、
つまるところは「僕はここにいた」と伝えたいだけ。
何事もなければ、まだ何十年と生活は続いてゆくと信じています。
その折々で、「僕はここにいた」をただ愚直に積み重ねていくのでしょう。この本のように。
踏み出せない誰かに、何故か帰りたくない夕方に、太陽がもどかしい朝に、
毛布にしがみつく真夜中に、道に迷うあなたに。
そして天国にも届くよう願いを込めて。
「『call, overhaul, and roll』は、2022年に行った、横浜から札幌までのバイク旅の過程で撮った写真をまとめたもの。地図や高速道路を使わず、迷いながら北上した旅です。迷ったからこそ出会えた道や景色が、たくさんありました。正しいルートを最短でなぞるのではなく、迷いながら自分なりの答えを見つける大切さを、この現代に再認識してもらいたい趣旨があります。もともと発表するつもりは一切なく写真を撮っていて、僕自身も目的があることがすべてではないと身をもって気付かされました」。
Project:9876543210(Nine to Zero)
シャッターを切ることへの前提と向き合うと、 カメラが“ただ世界を写す道具”から、“自分を表現する手段”になる。
「数字」という、全世界で共通の意味を持ち、人間だけが認識しえるモチーフを素材にすることで、数字が持つ寓意的な意味を探る。
人類は古くから数字を用いて、他者との関わりを築いてきた。現代においても同じく、数字は言葉が通じない状況でも意思を伝えるための強力な記号であり、概念である。
一方で、それら記号は、時に人々を縛り付けるという逆説的な意味を持ち合わせている。
資本主義社会においても、記号として用いられることで価値を有していた数字が、ラベルとして意味づけされることで、本来持ち合わせている価値が埋没することもある。
現在の写真表現は、複製可能性や印刷等の特性に目が向けられ、写真が持つ本質的価値や表現が希薄化しているのではないか。
そのような写真の存在を数字になぞらえて、写真が持つ本質的価値の再定義を試みる。
※原文より一部を抜粋して掲載。
「街中の数字を見つけて捉えていく写真たち。自分の根幹であるストリートスナップから数字にフォーカスを当て、数字の持つ便利さと機能性、そして恐ろしさを伝えたいと思いました。発想の根源は、10年前にキューバを旅した際に英語が通じず、インターネットもあまり整備されていない場所で、数字によってコミュニケーションが取れたこと。普段、当たり前に使っている数字がほぼ世界共通で、普遍的であることを体感しました。世界共通の何かをテーマにしたいと考えたのと、タイポグラフィ自体に興味があることも一役買って、このプロジェクトを制作」。
Project:City Dive Shinjuku
写真とは、人生を楽しむための遊び道具であり、自分と世界を繋ぎ止めてくれる杭のようなもの。
カメラをバイクに搭載し街を縫い回ることにより、
運転と風の振動によって夜の街を描き出すシリーズ。
“City Dive”と名づけた本作は、2019 年に発表した作品群の新作。
その街の特有の地形や光源、リズムを可視化させ、
街そのもののバイタルを心電図のように昇華させる。
夜の新宿にて“City Dive”を行い、
忙しない都市の呼吸を光の波形をもって読み解いた軌跡を制作した。
※原文より一部を修正して掲載。
「フィルムカメラをバイクに搭載し、走りながらシャッターを切れるようにしました。バイクの振動と運転する自分の体重移動、バイクの軌道による街の光…。伝えたかったのは、街を生き物として捉える面白さ。道路という街の大動脈の中を人が行き交うことによって街が成立しているという考え方を、ユーモアを踏まえて表現しています。新宿はたくさんの写真家が向き合ってきた場所ですが、好きなバイクと組み合わせることで、僕なりの新宿を切り取っています」。
Photo Book「call, overhaul, and roll」
GENIC vol.76 【小見山峻のステートメント】
Edit:Satoko Takeda
GENIC vol.76
2025年10月号のテーマは「 撮ることのその先へ This is My Project.」
あなたは「何」を撮っていますか? 自分の表現を説明できますか?
タイトルをつけることができますか?
オリジナルのプロジェクトを持つことは、自分の写真を「言語化」すること。
1つの企画によってまとめられた作品群からは、“作家の声”が聞こえてきます。
あなたも、写真プロジェクトを始めませんか。
一歩進む。撮ることのその先へ。