目次
プロフィール

市川渚
クリエイティブ・ディレクター/写真家 ファッションデザインを学び、海外ラグジュアリーブランドのPRを経て独立。感性とロジックを行き来しながら、ブランドやサービスの体験、コミュニケーションの設計を手がける。近年は写真を軸に、映像や言葉など多様なメディアを通じて、見る人の中に小さな気づきや余韻を残す表現を探っている。
光の当たり方で立体感や造形の美しさが際立つシルバーモデルは、ファッションの一部としても成り立つ

市川渚
本日はどうぞよろしくお願いいたします。最初にシルバーのZfを見たとき、ブラックとはだいぶ違う印象を受けました。色だけではなく、Zfのイメージごと変わるような感じです。どうしてZfのシルバーを、今、開発するに至ったのでしょうか。
添島賢一(デザインセンター)
きっかけは、Zfブラック発表後、多くのお客様からシルバーモデルへの強いご要望や「シルバーはいつ出るんですか?」というたくさんの声をいただいたからです。
市川
私もシルバーは出ないのかな?とまさに思っていたひとりです。発売されると聞いたときは、ついにキタ!と思いました。
添島
そうだったんですね。ありがとうございます。中でも、Zfcシルバーをご愛用の方々や、よりクラシックなデザインを好むお客様からのご期待の声が多く寄せられていました。また、Zfcは、他のラインナップと比べると若い方、特に女性ユーザーの方がそのデザイン性に惹かれていることが分かりました 。
市川
Zfc可愛いですもんね。
添島
ZfcからZfへステップアップされる方も多いので、Zfの魅力をさらに拡張して、多様な層へフルサイズの体験をお届けしたいという想いから、Zfシルバーの開発をスタートしたんです。

市川
今回のシルバーの質感や色などが特徴的だな、と思ったのですが、デザインを進めていく上で、苦労されたところやこだわったポイントなど、どんな試行錯誤をされたんでしょうか?
添島
Zfのデザインは、FM2を筆頭にニコンフィルムカメラのDNAを受け継ぐ「ヘリテージデザイン」がコンセプトです。Zfシルバーは単なる黒の色違いではなく、“Nikon F”に代表されるフィルム時代のクロームメッキが持つ金属的な重厚感や、光の加減で見せる表情に徹底的にこだわっています。

市川
Zfをぱっと見て、ちゃんと金属の雰囲気が表現されているな、と感じました。重厚感もあるし、これを開発するのはすごく大変でしたよね。兄弟のような存在のZfcのシルバーとの違いはありますか?
添島
Zfcのシルバーは、華やかさを重視しており、キラキラとしたフレーク感のあるメタリックを採用しています。
市川
確かに光に当てるとキラッキラッと光が反射しますよね。よりシルバーらしいシルバーというか。それに対してZfは?
添島
開発当初はまずZfcと同じシルバーで試作を行いましたが、方向性が少し違う印象でした。そこで、Zfシルバーは、フルサイズ機としての「本格感」「高級感」「落ち着き」を狙い、塗料開発を進めました。最終的に、ぎらつきを抑えた滑らかなメタリック感と青みを帯びた色合いが特徴の、深みのあるシルバーに調整し、より金属らしい質感と重厚感を表現したんです。
市川
ふたつを比較して触らせていただくと、Zfのシルバーのほうがしっとりした手触りですね。色味や見た目だけではなく触り心地にもこだわったことで、カメラの上質感も演出されているんだろうなと感じました。
添島
そうなんです。単に写真を撮るための道具ではなく、「使うたびに気分が高まる」情緒的な価値を提供したいという想いで開発してきました。
市川
Zfのシルバーはすごくアイコニックなカメラですね。これで撮っていると、ほかのカメラではできない体験ができそうだと感じます。開発者として、Zfシルバーを使うことでどんな体験、日常が得られると考えてらっしゃいますか?
添島
Zfシルバーは、「使う喜び」「持つ喜び」をさらに高める存在だと考えています。
市川
まさに!
添島
カメラを構えてダイヤルを回すたびに、美しいシルバーの輝きが視界に入ってくる。それによって撮影行為そのものがより豊かな体験になることを目指しました。フィルムカメラを知っている方々には懐かしさを、若い世代にはレトロでありながら洗練されたおしゃれさを感じていただけるデザイン、色に仕上げました。
市川
私は、Zfは外に持ち歩く用のカメラとして愛用しています。ファッションの一部としても成り立つカメラだなと思うんです。今回のシルバーは特に、そういう意味でも選択したくなる1台ですよね。毎日持ち歩いて、日常にカメラがある状態を作る。そうすると毎日写真を撮るようになるので、撮影技術も上がって、より愛着も湧くと思います。

市川渚’s comment
カメラはできる限り毎日持ち歩きたいので、「肌身離さず持ち歩きたくなる、愛せる見た目」であることが私にとっては大前提です。Zfは、往年のフィルムカメラのようなクラシカルなルックスで、ファッションの一部としても楽しめる一方、写真・動画ともに十分なスペックと性能を兼ね備えた、“見た目が可愛いだけじゃない”カメラ。それが愛用する一番の理由です。天面ダイヤルを「コトコト」とまわす感触を楽しみながら、1枚ごとにじっくり向き合ってあえてマニュアルで撮りたくなる。質感も高く、使うほどに愛着が増していきます。さらに、シルバー×ブラックのツートンになったことで、ヘリテージデザインのクラシックな魅力をより感じました。ブラックと同じ重厚感はそのままに、光の当たり方で立体感や造形の美しさが際立つ印象です。
新搭載した「フィルムグレイン」機能が、シャッターを切るだけで、フィルムライクな写真に仕上げてくれる

市川渚
今回新しく登場した「フィルムグレイン」機能。とってもいい感じだったんで感激したんですけれども、ぜひ詳しくフィルムグレイン機能について、お伺いしたいです。
周建明(第一開発部)
こちらはZfの今後のファームウェアアップデートで追加される機能です。フィルムグレイン機能を使うことで、フィルムライクな粒子感が表現できるようになりました。粒子のサイズと強弱を自由に調整することができるので、好みのイメージに合わせて使うことが可能です。
市川
早速、いろいろパラメーターを調整して使ってみたんですが、本当にフィルムライクな写真が撮れて、まさに私が欲しい!と思っていた機能だったので、とても嬉しく楽しく使用しています。
周
そう言っていただけるとすごく嬉しいです!ありがとうございます!
市川
Zfは発売から2年くらい経っていると思うのですが、今回新しくZfシルバーが登場したタイミングでフィルムグレイン機能が追加されたのには、何か理由があるのでしょうか?
周
はい。端的に言えば、Zfの魅力であるフィルムライクな表現をより楽しんでいただきたいからですね。そもそもZfは、FM2のヘリテージデザインを受け継いだ、フィルムカメラに近い撮影体験を提供するカメラとして開発されました。そして、ファームウェアver 2.0でイメージングレシピに対応したことで、デザインや操作感だけでなく写真の色味や階調といったアウトプットまでフィルムライクな表現ができるようになりました。さらにフィルムライクな画作りを進化させたくて、フィルムグレイン機能を開発しました。
フィルムグレイン機能では、解像感をあえて落とし、フィルム写真の魅力である粒状感を表現しています。デジタルですが、フィルム特有のアナログの温かみや深みを感じていただきたいです。
市川
カラーをフィルムライクに写すだけでなく、今回のフィルムグレイン機能で質感までフィルムにより近づけることができたんですね。
周
はい。こういったフィルムグレインのような効果は、パソコンではできましたが、カメラから写真を取り込む手間などがありました。Zfのフィルムグレイン機能は解像感と粒子感をカメラで完結することができるので、Zfのシャッターを切るだけで、フィルムライクな撮って出しができます。

市川
フィルムグレインの開発時に、特にこだわった点や苦労された点などはありますか。
周
こだわった点が、一番苦労したところでもあります。粒状感のかかり具合やリアルさの部分です。単一的なノイズではなく、本物のフィルムのような自然な温かい感じにするにはどういう風に作ればいいんだろう、というところに苦労しましたし、こだわったポイントです。
市川
デジタルのノイズではなくて、あくまでもフィルムの粒状感。
周
フィルムの粒状感といえば「温かいな」「自然だな」というところがあると思います。そのポイントを意識しながら、フィルムの感度や粒子の感じに近づけるように研究しました。開発の時、本物のグレインを把握するために、写真展に何度も足を運んでフィルム時代の写真を見たり、プライベートでフィルムカメラを使って写真を撮ったりしてきました。その結果、世の中に色々なフィルムグレインが存在することを知ったので、機能の制御範囲を広げて、制御段階を細かく設け、好みに合わせて自由に幅広く表現できるようにしました。
市川
ここ数年フィルムカメラも触っていて、日常的に撮っているんですが、このフィルムグレイン機能のパラメーターを調整するだけで、お気に入りのフィルムの粒状感に近づけることが簡単にできてしまうので、感激しました。

市川
フィルムグレイン機能をより楽しむ、おすすめの使い方はありますか?
周
フィルムグレイン機能を使ってフィルムっぽさをより楽しむには、「イメージングレシピ」や「ピクチャーコントロール」との組み合わせもおすすめです。モノクロームやグラファイトのピクチャーコントロールと同時に使っていただくと、よりエモい写真が撮れると思います。
市川
もともとZfにはいろいろなピクチャーコントロールがあって、様々な色味が楽しめますもんね。私も今回自分なりの色のイメージングレシピを作ってみて、それに対してグレインをかけて理想の仕上がりを追求する、みたいなことをやってみたら、Zfで撮った写真そのままで、アウトプットに使いたいと思えるような仕上がりになりました。本当に早く皆さんに使ってもらいたいと思いました!
周
シャッターを切るだけで、何もしなくても理想の仕上がりの写真になる。そこは私たちが目指していたところです。そこまで魅力を感じていただき、ありがとうございます。
市川
フィルムグレイン機能はどんな方に使っていただきたいと思いますか?
周
「フィルムライクな写真が好きな方」「フィルムカメラが好きな方」、そして、「空気感を写真に残したい方」にぜひ使っていただきたいです。デジタルであってもフィルムの質感を再現したい方におすすめです。フィルムっぽさをより楽しむには、イメージングレシピやピクチャーコントロールも併せて使うこと。モノクロで撮っても面白いですし、カラーのイメージングレシピと組み合わせていろいろなフィルムルックを再現することもできるので、最高の体験になるのではと思います。
市川
この機能が追加されただけで、ブレやボケ、ピントが合ってない写真も許容してみようかなと思えるようになりました。”場の空気が伝えられる”と、捉えられるようになったんです。この機能が表現の幅を拡張してくれたので、ますますZfを使っていきたいと思っています。撮って出しでグレインがかけられているので、一瞬を切り取るだけで、デジタルだけど唯一無二の一枚を撮ることができますね。

市川渚’s comment
普段からフィルム撮影もしていたり、デジタルでもフィルムライクな表現を取り入れたりしてきたので、「待っていました!」と思える嬉しい機能追加でした。6段階の強度と3段階のサイズを組み合わせて粒状感を調整でき、自分好みの雰囲気を追求できるのも楽しいところ。表現もとてもリアルで、一瞬を切り取る写真の本質と響き合っていて、良いなと思いました。今回、ファームウェア2.0で追加されたイメージングレシピを使ってオリジナルレシピを作り、このフィルムグレインと組み合わせてみたのですが、カメラ内だけでフィルムライクなルックを仕上げられるのは魅力的です。さらに、Nikon Imaging Cloudと連携すれば、撮った直後にスマホ経由でGoogleフォトなどからすぐ確認&シェアでき、撮って出しの活用がより進みそうだと感じました。
好みのカラーが選べる「プレミアムエクステリア」は、「愛着」をさらに深められる重要な選択肢

市川
「プレミアムエクステリア」とは、人工皮革ですね。こんなにカラーバリエーションがあるんですね。
三輪治季(デザインセンター)
そうなんです。今回は前回までの3色に、「ティールブルー」「モーブピンク」、ニコンダイレクト限定の「コニャックブラウン」の新色3色を新たに加えました。
市川
カメラって自分の好きな色を選べるという感覚がないものだと思うので、自分の好みで色が選択できると、よりカメラ自体に愛着が湧きますね。
三輪
そう言っていただけて嬉しいです。Zf自体がお客様自身の個性を引き出し、長く愛着を持って使い続けていただくことを目指しています。プレミアムエクステリアは、まさにその「愛着」をさらに深めていただくための重要な選択肢になればいいな、と思っています。単なるカラーバリエーションではなく、Zfが持つヘリテージな雰囲気を引き立てる、質感と色味にこだわってラインナップしました。使っていただく方のスタイルや個性に合わせ、自分だけのZfにカスタマイズして、より一層カメラに愛着を持ち、撮影を楽しんでほしいという思いが込められています。

市川
新色のこだわりを教えてください。
三輪
新色3色は、個性的な華やかさとシルバーボディーとの調和にこだわりました。ティールブルーとモーブピンクはZfcで人気だった2色を、個性的な印象はそのままに、Zfの世界感に合うよう落ち着いた知的な印象に調整しました。コニャックブラウンは、Zfの世界観に合わせた上品で温かみのあるブラウンです 。各色が持つ個性と、Zfとの調和をテーマに選んでいます。
市川
なるほど、どのエクステリアもZfのシルバーにすごくマッチしていますね。Zfcのシルバーとは違うので、計算されたカラーなんですね。好きな色を選んでコーディネートのアクセントにカメラを使うのもいいですね。

市川
カラーをデザインをする上で、こだわった点・苦労された点があれば教えてください。
三輪
新色は特に、素材の「シボ」感や光沢感のバランス調整には非常に苦労しました。例えばコニャックブラウンでは、本物感にこだわり緻密で繊細なシボを選定しました。モーブピンクと、ティールブルーは彩度や明度にこだわり、くすみすぎず派手すぎず絶妙な色合いに調整することに苦労した覚えがあります。どの色も、上質感を保ちつつ、ユーザーの個性を引き立てる仕上がりを目指しました。
市川
同梱されているポストカードもすごく可愛いですね。
小田島俊子(デザインセンター)
そうなんです。ありがとうございます!Zfを購入して箱を開けた瞬間から、Zfの世界観を感じていただきたいという思いで、ポストカードを同梱しています。ZfcやZfブラックモデルの時にも好評だったので、今回Zfシルバーを購入したお客様にもお届けしたくご用意しました。これからZfを使っていく姿を想像しながら、どこかに飾っていただけたら嬉しいです。
市川
ポストカードをデザインをする上で、こだわった点・苦労された点があれば教えてください。
小田島
Zfブラックモデルの時は表の写真に、シックなモノクロ写真を採用していました。今回は、これからZfを使っていく状況が想起できるような、ストーリー性のあるカラー写真に仕上げています。採用までにはたくさんのパターンを撮影して、テイストやライティング、小物の配置にもこだわり、最終的には粒子感を感じるこだわりの一枚に仕上がりました。裏にはプレミアムエクステリアの案内があるので、ここからサイトにアクセスしていただいて、自分が欲しいカラーを選んでいただけたらと思います。

市川渚’s comment
お気に入りのプレミアムエクステリアは、新色の「コニャックブラウン」と、深みのあるシルバーと調和した「ストーングレー」。コニャックブラウンは、全体がパッと明るくなる色味で、カメラ自体が目を惹きます。デニムやスニーカーなどカジュアルなスタイルに合わせたいです。ストーングレーは、アクセントにホワイトのストラップをつけ、白やグレー系でまとめてシャープなコーディネートにするのもいいかもしれません。
インタビューを終えて改めてNikon Zfシルバーに感じたこと

市川渚’s comment
塗装の仕上げや面取りの角度など、ぱっと見ではわからない細部のこだわりや、その形・色に辿り着くまでの試行錯誤を聞いて、Zfの高い質感はこうして生まれたのだと納得しました。その分、自分のZfへの愛着もさらに増しました。また、機能追加は“ただの足し算”ではなく、使い手の「物語」を増やす発想なのだと感じました。フィルムグレインのような新機能が、このカメラをきっかけに、新しい物語を紡ぎ始める人を増やしてくれそうです。
カメラは道具でありながら、それ以上の存在になりうるもの。見ているだけで、身につけるだけで、シャッターを切るだけで気持ちが高まる、そんな体験を日常に求める人にZfシルバーはおすすめです。カメラと共に過ごす時間そのものを楽しみたい方にぴったりの1台です。
Zf TALK&PHOTO session | ニコン
表現の幅をさらに拡げてくれる「Zf」

フィルム時代を代表する「FM2」からインスパイアされたクラシカルなデザインで、表現への探求心を掻き立てるフルサイズミラーレス「Zf」。2025年4月に公開されたファームウェアのアップデートで、「フレキシブルカラーピクチャーコントロール」機能に対応。公開されているイメージングレシピや、自分好みに作った色レシピをカメラに登録して、撮影を楽しめるようになりました。2025年9月にはシルバーモデルが登場。フィルムライクな表現を追求できる「フィルムグレイン」機能も加わったことで、ますます表現の幅を拡げることが可能に。Zfは、見た目と機能の両方を兼ね備えた唯一無二の1台です。
Zfシルバー スペシャルコンテンツ

クリエイターがZfシルバーを通して表現するフィルムライクな世界を、作品やインタビューで楽しめる、Zf シルバー スペシャルコンテンツ。
Zfシルバー発売記念プレミアムエクステリア張替キャンペーン

ボディーの人工皮革部分を好みの色に張り替えられる「プレミアムエクステリア」6色は、シルバーモデルに合わせたカラーリングが魅力。画像モニター裏にも擬革貼り付け部分を拡大しているZfですが、もちろんプレミアムエクステリアはその部分にも対応しています。また、「プレミアムエクステリア張替キャンペーン」を利用したことのないZfブラックも本キャンペーンの対象となります。