倉谷卓
1984年山形県生まれ、東京在住。
2005年、日本写真芸術専門学校卒業。2011年、塩竈フォトフェスティバル写真賞大賞。2013年と2014年に、TOKYO FRONTLINE PHOTO AWARD審査員賞受賞。近年の個展に「I was you, you will be me」(Art-Space TARN、2022)、「アリス、眠っているのか?」(Hasu no hana、2019)、「Ghost's Drive」(ニコンサロン銀座・大阪、2018)など。
写真集に『カーテンを開けて/A Glimmer of Light』(塩竈フォトフェスティバル、2013)。
写真に写らなかったものや、経過した時間を想像すること
選ばれたフレームの外側、一瞬のシャッターの前後にあったものを想像したい。
写真は無数に増えていくけれど、写されたものより、写されなかったものの方が多いのだから。
倉谷 卓
いわゆるストレート写真で作家デビューを果たした倉谷卓は、数々のシリーズを継続して制作、写真を用いて様々な人間の所作や営みをアイロニカルな眼差しで露わにしてきました。
本写真展で初発表される新作「through glass」は、ネットオークションで入手した1940年代頃の写真乾板※を撮影したシリーズです。なかでも傷や汚れがあるものを選び、傷や汚れが見えるように撮影し、ネガポジ反転した後に、AIを用いてカラー化されています。
「写真に写らなかったものや、(写真が経過した)時間を想像することが重要」であると語る作者にとって、写真についた「傷や汚れ」は、写真に写されたものと同等あるいはそれ以上の意味を持ちます。それらの傷や汚れは、写真に写らなかったものや写真が超えてきた時間を想像するためのきっかけとなり得るからです。ネガポジ反転、カラー化の過程は、写らなかったものや超えてきた時間を「現像」したいという意思の表れでもあります。
※写真術の感光材料の一種で、写真乳剤(臭化カリウムの溶液と硝酸銀の溶液をゼラチンに加えてできる、光に感光する物質)を無色透明のガラス板に塗布したもの。像は白黒で、明暗が反転している。ガラス乾板とも呼ばれる
同シリーズは「F」と「A」の二種類に分かれており、元の写真画像を活かしたFの作品群と、ほぼ傷や汚れのみのAの作品群があります。
「F」は、傷や汚れによって元の写真画像が不明瞭になり、カラー化がうまくいかずに被写体にもやがかかったようなイメージとなっており、約80年前という撮影された当時との時間の距離感が観る人との間に現出するかのようでもあります。
「A」にはナンバリングに加えて、元の写真画像をAIに解析させて付けたタイトルがつけられています。抽象的なイメージと、なんとなく状況を推察出来るようなタイトルは、画像と自動生成されたタイトルがマッチするとも全く的外れであるとも言えそうで、観る人の想像力を刺激します。
倉谷卓 個展「through glass」情報
開催日時
2024年2月3日(土)~ 3月2日(土) 13:00~18:00
休廊日:日、月、火、祝日
入場料
無料
会場
KANA KAWANISHI GALLERY
〒135-0021 東京都江東区白河4-7-6
行き方・アクセス
<電車>
東京メトロ半蔵門線「清澄白河駅」B2出口から徒歩で10分
都営地下鉄大江戸線「清澄白河駅」B1出口から徒歩で12分
都営地下鉄新宿線「菊川駅」A4出口から徒歩で9分
トークイベント開催
日付:2024年3月2日(土)17:00〜18:00
登壇者:倉谷卓、菊田樹子(キュレーター)
参加費:無料
事前予約:不要※満席の場合は、立見や入場制限となる場合があります。
- 【お問い合わせ先】
- KANA KAWANISHI GALLERY
- www.kanakawanishi.com