てのひらの中に思い出を。旅に連れていきたいアプリ紹介。/ひとりで世界を歩いたら Vol.9
旅に出るときは、服装だけじゃなくて、スマホの中身もすこし着替える。通勤に不可欠なYahoo!乗換やSuicaのアプリをひっこめ、その代わりに、いつもは「旅」というフォルダにひとまとめにしているアプリをひとつずつホーム画面にもってくる。
英語が通じない国でも大活躍のGoogle翻訳や、Currencyという通貨換算アプリ。Googleマップは、Wi-Fiが入らないときでも使えるよう、旅先のオフラインマップをダウンロードしていく。街ごとにリストをつくり、気になる場所を保存していく。
スマホという日常の道具を、非日常仕様にしていくこの時間が、けっこう好きだ。
今回は、旅専用のアプリではないけれど旅に連れていくと楽しい、私のお気に入りアプリを紹介したい。
カード日記
1日1枚写真を載せていくだけで日記がつくれる、気軽さが魅力の日記アプリ。もちろん文字だけでもOKだし、たくさん書きたいときには長文も可能。
旅のあいだ、毎日1枚写真を載せていくだけでも、あとから見返せばきっと宝物になる。
最初は気合いを入れて一眼で撮った写真を載せていたけれど、どうしてもその日のうちにレタッチが間に合わないことも多くて、最近はスマホでぽちぽち撮った写真だけを載せている。肩の力が抜けていて、案外楽しい。
何気なく撮った看板とか、慌ててすませた適当なお昼ごはんとか、そんな写真でさえ、いつかきらきらした思い出になる。
それに、なんでもSNSに載せられる現代だからこそ、誰にも見せない写真や文章が必要だと私は思っている。見られることを意識してばかりいると、大事なことを見失ってしまう気がするから。
@picn2k
有料アプリなのだけれど、購入してよかったと思っている写真アプリ。韓国出身のフォトグラファー、Jongbeom Leeさんが監修している。
まず、とにかくフィルターがかわいい。「INDONESIA」や「OKINAWA」など街の名前を冠したフィルターたちは、どれも旅先の風景を撮るのにぴったりだ。どこか遠い記憶のような淡い色合いだったり、くすんだ色味のレトロな雰囲気だったり。
先述のカード日記に載せている写真は、ほとんどこのアプリで撮っている。foodieみたいに音が消せるのもうれしい。
各フィルターにはお手本の写真が載っているのだけれど、それらがすべてLeeさんが実際に世界各地へ行って撮った写真なので、見ているだけでもわくわくする。なんと、どこで撮影したのかもマップで見られるため、まったく同じ場所へ行ってみることも可能だ。
「この街はかわいいイメージだから、彩度を上げてカラフルにしてるのかな」とか、「この街は赤が似合う街だから、赤が目立つように色づくりをしているんだろうな」とか、レタッチの参考にもなる。
唯一欠点をあげるとすれば、翻訳が追いついてなくて、アプリ内の日本語が不思議なことになっているところ。アプリを使う分には問題ないけれど、せっかくなら、かわいい写真に添えられた写真家の言葉までちゃんと読みたい。今後に期待。
今回紹介した2つのアプリは、どんな一日にも、ちゃんと光る瞬間があることを思い出させてくれる。ちょっとでも心が動いたその瞬間を、忘れずにいさせてくれる。
大事な旅の時間は二度と戻ってこないから、私はてのひらの中に思い出を閉じ込めるんだ。
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最後に、お知らせがあります。
いつもこの連載を読んでくださっているみなさま、ほんとうにありがとうございます。
この連載は「旅」についてのコラムとしてお送りしてきました。しかし、誰もが経験したことのない出来事が世界をおおっている今、残念ながら、自由に旅が楽しめる状況ではなくなっています。そのため、来週からの更新はすこしお休みします。
今の状況でも楽しんでいただける内容をお届けできるよう、新しい内容を考えているところろです。再開時にはまたお知らせいたします。そのときにはまた読んでいただけると嬉しいです。
【ひとりで世界を歩いたら】バックナンバー
ぽんず(片渕ゆり)
1991年生まれ。大学卒業後、コピーライターとして働いたのち、どうしても長い旅がしたいという思いから退職。2019年9月から旅暮らしをはじめ、TwitterやnoteなどのSNSで旅にまつわる文章や写真を発信している。