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豊かな時間のお裾分け。 Mai Murakawa | 連載 好きよ、ごはん

生活に欠かせない3つの要素、衣食住。そのなかでも「食べること」は、生の根源を支えながら、暮らしをより豊かにしてくれるものでもあります。食の風景にカメラを向けるフォトグラファーたちに、その理由を伺いました。
全5回の連載、第1回は詩人「月森文」としても活動する写真家のMai Murakawaさんです。

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目次

プロフィール

Mai Murakawa

写真家/詩人 長崎県出身。紙ものを中心に扱うアンティークショップでの経験をきっかけに、菓子店の運営会社のクリエイティブディレクターとして活動。2019年に独立し、現在はスタイリング、撮影、PR、ウェブやパッケージのディレクションなどを行っている。また、詩人「月森文」としての活動のほか、お酒とタロットをコンセプトにした「スナックマイ」を不定期に開催。
愛用カメラ:Sony α7 III、RICOH GR IIIx
愛用レンズ:Sony FE 90mm F2.8 Macro G OSS/Sonnar T* FE 35mm F2.8 ZA/FE 24-105mm F4 G OSS

豊かな時間のお裾分け。

手から生まれる料理や、その途中の仕草に愛を感じています

「稲刈りのお手伝いのお昼休憩で友人夫婦が握ってくれたおにぎり。鎌で稲刈りをした後だったので、ひとつのおにぎりのありがたさを感じ、たくさん並んでいる様子に幸福を感じました。友人夫婦が握るおにぎりは世界一美味しいです」。

「センスのいい友人がキッチンに立っている姿はいつも絵になります。料理することが楽しくなるような彼女のキッチンをみなさんにも見てもらいたいし、久しぶりに会いに行きたいです」。

「友人の子供とスナップエンドウの豆取り。子供の小さな手とスナップエンドウの組み合わせが可愛くてパチリ。子供の時からこんな風に食に触れさせていることが素晴らしい」。

「親しい友人たちとのご飯会で。鉄の黒とラディッシュのピンクの色合いと、料理途中の美しさにハッとしてシャッターを切りました。旬の野菜をただ焼いて塩で食べる、ただそれだけのことが心を豊かにしてくれます」。

「いつか森に住むことを夢みている友人宅にて。ずらりと並べられた料理が美味しそうで!この写真から、みんなで食事をすることの楽しさ、豊かさを伝えたいです」。

私の写真を見た誰かの食卓が、より豊かなものになったら嬉しい

「私は13歳から詩を書いていて、その延長線に写真がありました。母が使っていたフィルムカメラを譲り受けたことで、写真を撮るのがより楽しくなったんです。今はお菓子や飲食店、ミュージアムショップのプロダクトの撮影がメインの仕事で、私にとって写真は自己表現のひとつでもあります。私はカメラを持っていない時でも、ファインダーを覗いているような感覚で目に映るものを捉えているところがあって、いつでも『あっ、いま!』みたいな瞬間でシャッターを切ることができたらなぁと思っています。そのためにカメラはいつも側に置いていて、手元にない時は走って取りに行くことも。食事のシーンや料理の写真を撮るのは、手から生まれる料理やその途中の仕草に愛を感じるから。それに料理上手な友人が多いので、その時私にできることを探すと“撮影係”かな、と勝手に思って撮っていたりもします。私の写真から、ひと手間の先にある幸福感みたいなものが伝わって、『今夜のおかずを一品増やそう』、『お皿をちゃんと選ぼう』、『お家ご飯に誰かを招こう』と思ってくれたら嬉しいです。私の写真を見たことが、ご飯を食べるという毎日のことのスパイスのようなものになり、誰かの食卓がより豊かになったらいいなと思っています」。

GENIC vol.74 【好きよ、ごはん】
Edit:Izumi Hashimoto

GENIC vol.74

2025年4月号の特集は「It’s my life. 暮らしの写真」。

いつもの場所の、いつもの時間の中にある幸せ。日常にこぼれる光。“好き”で整えた部屋。近くで感じる息遣い。私たちは、これが永遠じゃないと知っているから。尊い日々をブックマークするように、カメラを向けてシャッターを切る。私の暮らしを、私の場所を。愛を込めて。

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