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プロフィール
Nobuko Baba
フォトグラファー 1992年生まれ、大阪府出身。フリーのアシスタントとして経験を積んだ後、2017年に独立。2年間のロンドン留学を経て、2024年3月に本帰国。4月には個展「Point to Point」を開催。さまざまな雑誌やカタログなどで活躍中。SIGNO所属。
愛用カメラ:Mamiya M645 1000S、FUJIFILM GA 645
愛用レンズ:Mamiya SEKOR C 80mm
- Instagram @nbk_613 @bee_wild92 / WEB
写真家それぞれのランドスケープ
孤独を楽しむ
アイスランド。「まるで生まれたての地球のような土地と、そこを軽やかに走りすぎる馬の群れ。ただただ、圧倒されました」。
イギリス・リンカーン。「イギリスの冬は暗くてとても寒いから、たまに晴れる日は見惚れるほど静かで美しい。このトレーラーに10日間ほど滞在し、心穏やかな状態で写真を撮りました。自分の想いに気づき、今後の目標が見えた瞬間の大切な一枚」。
目の前に広がる事柄に愛おしさを感じながらシャッターを切る
スイス。「ツェルマットで、ベースとするキャンプサイトに5日間ほど滞在」。
「写真を撮る旅では、基本的にソロで行動します。忙しい日々から抜け出し、長い時間を一人で過ごして自分自身と向き合うと、目の前に広がるもの(景色はもちろん、人や動物も)を一つ一つ噛み締めて、小さな事柄にも愛おしいと感じることができます。私の写真はたまに距離を感じるものがありますが、それは心の距離ではなく、一歩引いた時に自分が今いる場所や瞬間をものすごく愛おしいと感じた時に生まれるもの。そのためか、少し距離を感じる写真でも、見た人から『あったかい』『ほっとする』と言ってもらえたりします。よくも悪くも、どうしたって自分の心境が写真に出てしまいます。どうすれば納得する写真を撮れるか悩んだ時もありましたが、些細なものでも愛おしいと思える瞬間に出会う環境に自分を置くことの大切さをわかった時、自信を持って、『私が撮った写真を見てほしい』と思えるようになりました」。
写真を撮ることは、何かと真剣に向き合うとても贅沢な瞬間の連続
アイスランド。「レイキャビクから車で3時間ほどの、ランドマンナロイガルへ行く道のり。あまりにも広大な道を前後の車の影もなく走っている時、どこからともなく現れた一台のバイクになぜだかほっとしました」。
スイス。「アルプス山脈では、いつだって牛たちが付けている大きな鈴の音が聞こえてきます。ふと牛と目が合った時、彼らの日常に足を踏み入れさせてもらっている感覚になり、お邪魔してますと言いたくなりました」。
スイス。「マッターホルンを一望できるハイキングスポットの先で、自分よりも高く山積みされた石に遭遇。壮大な自然の山を背に新しい景色を作り出す人間って不思議だなと思いつつ、人工の違和感に惹かれてシャッターを切りました」。
河口湖。「まだ肌寒い4月のキャンプで、仲間の一人が極冷の湖に」。
「チームで作り上げるファッション撮影や、相手に愛情を持ってその人らしさを尊重するポートレートなど、撮影ジャンルによってゴールや心構えは変わってきます。ランドスケープ撮影は、私にとっての精神安定剤。ランドスケープを撮っている時は本当に心が穏やかになり、写真を続けていくにあたって必要不可欠な存在です。2年間イギリスに住み、今年の3月に本帰国しました。渡英前はビューティなど広告撮影をメインに活動していたのですが、今は、ランドスケープや自分の作品を活かした仕事ができるよう一から動き始めている、いわば人生の分岐点にいます。私にとって写真とは、生涯学び続けることができるもの。納得するものが撮れたとしても、またすぐに『まだまだ』と何度でも撮って感動して、次に向かう。良い意味で完結することがないから、続けられます。そしてシャッターを切る時に存在するのは、私と私が見えているものだけの空間。写真を撮ることは、何かと真剣に向き合うとても贅沢な瞬間の連続です」。
GENIC vol.72【写真家それぞれのランドスケープ】
Edit:Satoko Takeda
GENIC vol.72
9月6日発売、GENIC10月号の特集は「Landscapes 私の眺め」。
「風景」を広義に捉えた、ランドスケープ号。自然がつくり出した美しい景色、心をつかまれる地元の情景、都会の景観、いつも視界の中にある暮らしの場面まで。大きな風景も、小さな景色も。すべて「私の眺め」です。