Focal Length
今回のテーマは「レンズの楽しさ」。
GENICで連載をスタートして、驚くことにvol.9。
今までは人にフォーカスを当てながら撮影をしていたが、今回は人ではなく「自然」。 何故あえてこのタイミングで人からレンズを少しずらしたかというと、フォトグラファー/役者 共にたくさんの人と会うことがメインの仕事だが、時にその波から少し身を遠ざけて、ふと息を吐く時に見ている景色はどんなものなのか。
自分自身が興味を持ったからだ。
五月の半ば、AM 4:31
富士山の近くで日の出の時間に、Z f に28mmのレンズをつけて歩く。
散歩をするなら日の出に限る。
斜めから入る光で景色にメリハリがつく。
何より空気が透き通っている。
そしてカメラを持つことで普段なら必ず通り過ぎてしまうところに目を向けることができる。
昨夜の雨を少し感じ、
夏の緑がもう来ていることに気づく。
ドラマや、作品に入ると時間がタイムスリップするように過ぎていく中、こうした時間は、止まっていた時間を「今」に戻してくれる。
28mmのレンズが、普段使い慣れた50mmのレンズより想像以上に撮りたいものの近くに寄れることに、どこか夢中になる。
フォーカスと、F値をゆっくりと変えて、Nikon Z fの ISOとシャッタースピートダイヤルを自分の好みに回していく。
この光の入り方ならディープトーンモノクロームで撮ろう。
ここは、カラーに戻そう。
自分のタイミングでカメラと向き合う時間は久しぶりだった。
どうしたらその花を可愛く撮れるだろう。
この角度なら少しセクシーに見えるかな?
頭の中のカメラ小僧は人でも自然でも変わらず、うるさかった。
古屋呂敏 プロフィール
古屋呂敏
俳優・フォトグラファー 1990年、京都生まれ滋賀/ハワイ育ち。カメラ歴は7年。Nikon Z fを愛用。父はハワイ島出身の日系アメリカ人、母は日本人。俳優のみならず、カメラマン、映像クリエイターROBIN FURUYAとしても活動。CHANEL、FENDI、ISETAN、SK-IIなどの映像制作も手掛ける。2022年には初の写真展「reflection(リフレクション)」、2023年9月には第2回写真展「Love Wind」を開催。