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【街の被写体、それぞれの視点:15】巢山サトル <猫が、自分が「ソコニイルコト」>

光、人、風、感情。その日、その瞬間にだけ作り出される、偶然性を多分に秘めた路上の光景を、自分なりのテーマで切り取るフォトグラファーたちがいます。どこか遠くに出かけなくても、撮りたくなるシーンはすぐそこにある。
そんな気づきをくれる、多彩なストリートフォトグラフィーをご覧ください。街が紡ぐ物語の一部です。
15人目は、ライフワークとして町と猫の写真を撮る、巢山サトルさんです。

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巢山サトル

フリーカメラマン 1976年生まれ、東京都出身。2010年、グループ展示『4色の猫』、2012年より東京の野良猫を追うメンバーによるグループブログ『東京猫色』に参加。現在、昭文社『ツーリングマップル』にて、東北・関東甲信越の写真を担当。『食べる旬報』など「食」分野を中心に料理、旅、取材など各種媒体で撮影中。
愛用カメラ:Nikon Z 6、Nikon Z fc、Nikon FE 2
愛用レンズ:NIKKOR Z 50mm f/1.8 S、NIKKOR Z 28mm f/2.8、Carl Zeiss Makro-Planar T* 2/50 ZF.2

猫が、自分が「ソコニイルコト」

路上猫を撮るときには自分の想いを乗せすぎないように

「この一帯は、もう何年も工事が続いてきた場所。遠景も近景もすっかり変わり、住む人も移り変わり、猫たちも何世代かにわたる。変わり続けていくことで変わらない”いとなみ”を紡いでいる。その中の“とある一瞬”にぼくは今、立ち会っている」。

東京の今を生きる野良猫たちを撮影するグループ『東京猫色』としても活動している、フリーランスフォトグラファーの巢山さん。路上にいる猫を撮るときにはどんなテーマで撮っているのでしょうか?
「写真に写っているのはいつだって過去だけど、撮ることは“今”しか記録できない。町で出会う光景、光、人、猫、その瞬間は一期一会だと思っています。猫が、自分が“ソコニイルコト”を記録しています。ファインダーを通して世界を見ることを覚えてすぐ、ひときわ目を引いたのが猫の存在でした。シンプルに生き物としての肢体の美しさ、運動能力の高さ。そして町の中での彼らの居場所、人との距離感に魅了されました。猫が居心地良さそうにいる町は、人にも心地よい気がします。普段から自分のアンテナを頼りに居心地の良さそうな場所、気持ちのいい場所を求めて町を徘徊することが好きですが、結果そこに猫がいて、そして彼らとの逢瀬を楽しむことが町へ出る喜びになっています」。

「ゆるやかに続く川沿いの道をいくと、段差の影でくつろぐ地域猫。歩くたびにカサカサと鳴る枯れ葉の音にこちらを振り返る。その目には警戒心と好奇心。少し離れたところからパチリと一枚撮らせてもらい、来た道を引き返した」。

予測できない展開や光が、想像を超える瞬間を作りだす

「細い路地を歩くと壁の上に一匹の猫。眼下を歩くぼくのことなど気にもせず、 見つめる視線の先には別の猫がいる。おそらく恋猫同士。日が沈む前の時間、 太陽の光は横から差し込みサイドライトとなって髭の一本一本を浮かび上がらせている」。

「仕事を終えた帰路、朝会った猫にまた会った。この辺りで暮らす野良猫のようだ。ぼくを怖がる風でもなく『また会ったな』と見つめ返す様子に、視線を低く合わせて挨拶を返すようにシャッターを切った」。

猫が居心地良さそうにいる町は、人にも心地よい気がする

「住宅街の中の畑は、猫たちにとっての格好の居場所。けれどここは広い道路となってしまい今はもうない。この畑に暮らしていた猫たちも、もういない。道路になる前この場所は畑で、確かにここに生きた猫がいた。写真だけがそれを記憶している」。

「学生時代、近くの空き地に暮らしていた白猫と黒猫の兄妹。白と黒、シンクロするシンメトリーとアシンメトリー。カメラを手にしたら見慣れた世界の見え方が変わった。その体験は、ぼくと世界との関わり方も変えた」。

「路上猫を撮るときには、猫が主役なので自分の想いを乗せすぎないようにしています。そういう意味でも、意識的に切り取りすぎず、路上で猫との適度な距離感で撮影できる50mm前後の標準レンズで撮ることが昔から好きです。その場所、そのときでイメージする構図や動きはありますが、その通りに写せた写真は想像通りでしかない。予測できない展開や光線によって、ぼくのイメージを超える瞬間があるのが写真の楽しさでもあるので、あるかどうかわからない“それ”を待ちながら、心地の良い場所付近に滞留して過ごすことが好きです。そして、彼らに怖がられることなく、邪魔になることなく“ソコニイルコト”を認めてもらい、いつも通りの“ソコニイル”彼らの姿を、写真に収めさせてくれたときに喜びを感じるんです」。

巢山サトル Instagram
巢山サトル Twitter
東京猫色 HP

GENIC vol.63 【街の被写体、それぞれの視点】
Edit:Izumi Hashimoto

GENIC vol.63

GENIC7月号のテーマは「Street Photography」。
ただの一瞬だって同じシーンはやってこない。切り取るのは瞬間の物語。人々の息吹を感じる雑踏、昨日の余韻が薫る路地、光と影が落としたアート、行き交う人が生み出すドラマ…。想像力を掻き立てるストリートフォトグラフィーと、撮り手の想いをお届けします。

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