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プロフィール
GOTO AKI
写真家 1972年、神奈川県川崎市生まれ。上智大学経済学部経営学科在学中、世界一周の旅(1993〜94年)を機に写真と出会う。卒業後、丸紅株式会社にて天然ガスのパイプライン輸送業務に従事。退職後、東京綜合写真専門学校写真芸術第二学科に入学し、鈴木清、小林のりおに学ぶ。1999年より写真家として活動を開始。写真集に「LAND ESCAPES」(2010年)、「LAND ESCAPES FACE」(2015年)(ともにtraviaggio publishing)、「terra」(赤々舎 2019年)がある。主な個展に「terra」(キヤノンギャラリーS 2019年)、「event horizon ―事象の地平線―」(ふげん社 2021年)、「TERRA 2024 ―身体と空間―」(キヤノンギャラリー 2024年)、「旅痕―(タビ・ゴリ)―」(彗星館 2025年)などがある。2020年、日本写真協会新人賞受賞。武蔵野美術大学造形構想学部映像学科(2017〜2025年)、日本大学芸術学部写真学科(2021〜2023年)にて非常勤講師を務め、2024年より日本大学芸術学部准教授。
こんにちは。写真家のGOTO AKIです。「terra」(赤々舎 2019)から7年ぶりに、続編となる写真集「terra | Landscape Topologies」(赤々舎 2026)を出版しました。今回の写真展はその出版記念となる企画展です。会場では日本の風景をモチーフとした作品を約30点、展示予定です。場所性や時間感覚を剥ぎ取られた、視覚を揺るがす作品群を是非ご覧ください。期間中、3回のトークイベントのほか、金曜日と土曜日は在廊予定です。皆さんとお会いできるのを楽しみにしています!
ステートメント、解説と展示作品の一部をご紹介
自然風景の写真を前に、「どこで撮影したのか」と問われることがある。誰かの名前を知ったからといって、その人を理解したことにはならないように、場所の名を答えたとしても、その写真について何かを語ったことにはならない。
私の関心が向かうのは、地名や記号としての風景ではなく、名前もなく、ただ地球の運動として展開している風景の位相である。
2019年に前作『terra』を発表後、「TERRA 地球相貌」(MYD Gallery・2019)、「東京好奇心」(Bunkamura ザ・ミュージアム・2020)、「event horizon – 事象の地平線 –」(ふげん社・2021)、「写真家はどこから来てどこへ向かうのか」(Gallery Forest・2021)、「TERRA 2023」(同時代ギャラリー・2023)、「TERRA 2024 ― 身体と空間 ―」(キヤノンギャラリー銀座・大阪・2024)などの展覧会を通して、作品を更新してきた。この過程で、撮影領域は火山由来の地形である海中の山や水中洞窟、湖の中に沈む森へと次第に広がっていった。
耳の奥に届く波音を感じ、不意に吹きつける風に向かいながら、私は風景を視覚的に「聴く」ように感じ取る。台風通過後の伊豆半島の海中で、強いうねりに翻弄されながらシャッターを切ると、上下や遠近といった人間が知覚の前提としてきた空間認識は揺らぎ、風景は言葉や意味が与えられる以前の状態へと近づいていく。そこでは光が歪み、空間の輪郭はほどかれ、水の像は定まらない形のまま立ち現れてくる。
制作の過程では、プリントを壁にランダムに配置しながら、線として読み取られる像と、面として広がっていく像の関係に生じる緊張や呼応を観察し、含みのある秩序を作り出していった。そこに見出された光や色彩は、ハンス・ホフマン(※)が示した「プッシュ・アンド・プル」のように、画面のなかで相互に作用しあい、視覚に奥行きの感覚をもたらしていく。その多視的な感覚は、山々を歩き、水に潜りながら身体で感じてきた空間感覚と交差している。
意識せずに写していた事象や、偶発的に記録された像──言葉になる前に感覚として届いてくる直感──を手がかりに、写真を配置し、組み替えてきた。そうして身体に残った感覚と、自然に内在する「不規則な連続性」との応答を、写真の連なりとして示そうとしている。
本作で用いる「風景のトポロジー」という言葉は、距離や形態、位置関係が変化しても失われない、身体と風景との関係のあり方を指している。ここに写し取られているイメージは、目に映った風景そのものではなく、歩き、立ち止まり、潜るなかで身体を通過した感覚が、痕跡として現れている。
現代において、風景を題材としたイメージは、ネット空間では意味や情報として瞬時に消費され、身体を介在させる前に、頭で理解されるものとして処理されている。私はそうした風景との関わりから距離を取りたいと考えている。光や揺らぎに、偶然的に身体を通して触れること。その経験の積み重ねのなかで、自然との関係は、別の位相へと静かに移行していく。
自然には、もともと名前も意味もない。太古から連なる時間のなかで、光は線となり、風は軌跡を描き、大地は面となって拡がり続けてきた。その運動は今もなお、私たちの理解とは無関係に続いている。
※ハンス・ホフマン:1880-1966 画家・教育者
── GOTO AKI
写真家GOTO AKIは、自然風景を「記録」としてではなく、身体を通して経験される空間の感覚として捉え直す試みを続けてきた。本展は、最新写真集『terra | Landscape Topologies(風景のトポロジー)』(赤々舎)の出版を記念して開催される。2019年の写真集『terra』以降、GOTOは火山地形、海中の山、水中洞窟、湖底に沈む森など、陸上と水中を横断しながら撮影領域を拡張してきた。歩き、立ち止まり、潜るという身体的行為を通じて風景と関わるなかで、上下・遠近といった空間認識は揺らぎ、光・水・地形の運動そのものが像として立ち現れる。
本展では、線として知覚されるイメージと面として広がるイメージの関係を軸に作品が構成される。写真は単独の記録としてではなく、連なりのなかで相互に作用しあいながら空間的な感覚を生み出す。その構造は、画家ハンス・ホフマンの「プッシュ・アンド・プル」理論に通じる視覚的な緊張と呼応を内包している。
GOTOが提示する「風景のトポロジー」とは、距離や位置関係が変化しても失われない、身体と風景との関係性のあり方を指す。写し出されるのは目に見える風景ではなく、自然との接触のなかで身体を通過した感覚の痕跡だ。イメージが情報として瞬時に消費される現代において、本展は、光や揺らぎに静かに触れる経験を通じて、写真を見る行為を身体的な営みへと開いていく。
── GOTO AKI 写真集出版記念展「terra | Landscape Topologies(風景のトポロジー)」プレスリリースより
GOTO AKI 写真集出版記念展「terra | Landscape Topologies(風景のトポロジー)」情報
開催日時
2026年5月15日(金)〜6月27日(土) 10:00~18:00
休廊日:日曜、月曜
入場料
無料
会場
KOSHA KOSHA AKIHABARA
- 〒101-0031 東京都千代田区東神田3-2-3 写真弘社 5F
- Google Map
行き方・アクセス
<電車>
JR総武線「浅草橋駅」西口から徒歩で6分
JR山手線・総武線「秋葉原駅」昭和通り改札(東口)から徒歩で8分
東京メトロ日比谷線「秋葉原駅」から徒歩で8分
都営地下鉄新宿線「岩本町駅」から徒歩で8分
JR総武線快速「馬喰町駅」から徒歩で9分
トークイベント情報
異なる立場のゲストとの対話を通じて、写真集の編集や制作背景に迫るトークイベントも開催されます。
5月15日(金) ゲスト:赤々舎代表 姫野希美
5月30日(土) ゲスト:写真家、武蔵野美術大学名誉教授 小林のりお
6月13日(土) ゲスト:インディペンデントキュレーター 小髙美穂
※時間、内容などは変更となる場合があります
GOTO AKI 写真集『terra | Landscape Topologies』情報
価格:4,950円(税込。本体4,500円)
サイズ:270 mm × 210 mm
ページ数:112ページ
ISBN:978-4865412239
発行:赤々舎