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【顔のないポートレート #5】鹿野真里菜

普段、顔やその表情が物語ることはとても多い。けれど、時には顔が見えないからこそ、その場の空気や思いをより強く感じるということが、確かにある。それは一体どうしてなのだろう?
今回は、あえて顔を写さずに写真を撮る、5名の表現者をフィーチャー。それぞれの思う、顔と表現の関係についてお話を伺いました。
#4は、柔らかな光を捉えた心地よい世界観を切り取る写真家、鹿野真里菜さんです。

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鹿野真里菜(Marina Kano)

写真家 1993年生まれ、兵庫県出身。神戸大学にて音楽を専攻、芸術を中心に学び、卒業後映画会社に就職。2018年にフィルムカメラでの撮影を始め、写真展やワークショップを開催。現在は独立し、アーティスト撮影やブランドのビジュアル撮影、ウェディングの前撮りなどを中心に、フリーランスとして活動中。
愛用カメラ:Nikon F3
愛用レンズ:Nikkor 55mm F1.2

そして、風景のような顔と出会う

Model:Jackeline Hair&Make:Nagisa

「私の写真の原点が”人が写っている風景”なので、スタジオで人を撮るときもザ・ポートレートのような写真はあまり撮りません。 体のパーツを写し込んだり、チュールのような布素材を入れたりして、心地の良い画を探っていきます」。

顔の持つ固有性をなくすことで、ずっと見続けていられる写真に

「私にとってのポートレートとは景色の一部」と語る鹿野さん。写真にのめり込んだきっかけは、旅先で妹さんの姿を撮影するようになったこと。
「旅をしている中で、景色を撮る際にその一部として妹を写すようになりました。それがフィルムカメラだったということもあり、風景だけでなくその時の空気感、感じたことまでが、フィルムに焼き付いていることに感動しました。妹はモデルのお仕事をしているわけではないので、自然と顔を写すことにはこだわらなくなった気がします。下の写真の妹とのヨーロッパへの撮影旅では、目にした景色を自分の脳内を通してネガに焼き付けていく感覚があり、写真は単なる記録ではないということを実感しました」。

「妹とヨーロッパへ撮影旅行へ。これはチェコで撮りました。見返すたびに、この楽しい旅を思い出すことができる一枚です」。

鹿野さんが、今も顔を写さない写真を撮る理由は?
「あえて顔を写さないように撮っているわけではありません。でも、私自身が風景や絵画のような、言ってみれば飾れるような写真が好きで。それが結果的に、自然と顔を写さないことにつながっているような気がします。顔の持つ固有名詞的な要素がなく、ずっと見続けていられる、まさに風景のような写真の方が私の好みなんです」。

Model:MiYaBi Hair&Make:miyu

「ミラージュというフィルターをレンズにつけることで、顔の左半分だけの構図でもバランスをとりました。顔のパーツとお花の配置が気に入っています」。

風景や絵画のような、視覚的な心地よさを目指して

Model:MiYaBi Hair&Make:miyu

「コーラとドレスの赤がリンク。床がすごく素敵で、自然光が綺麗に入るスタジオだったので、モデルさんにくるくる回ってもらって動きを出しました。足が光でぶれてかすんでいるのが美しい」。

「花と身体の親和性を考えながら撮影していきます。体の一部を入れると、温度感だけでなく、会話や感情を感じるような写真になる気がします」。

「閉園してしまった、としまえんの”ウェーブスインガー”という空中ブランコ。夕暮れ時の空の色と、くるくる回る空中ブランコに、解放感を感じながらシャッターボタンを押しました」。

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鹿野真里菜 Twitter
鹿野真里菜 HP

GENIC VOL.59 【顔のないポートレート】

GENIC VOL.59

特集は「だから、人を撮る」。
最も身近にして最も難しい、変化する被写体「人」。撮り手と被写体の化学反応が、思ってもないシーンを生み出し、二度と撮れないそのときだけの一枚になる。かけがえのない一瞬を切り取るからこそ、“人"を撮った写真には、たくさんの想いが詰まっています。泣けて、笑えて、共感できる、たくさんの物語に出会ってください。普段、人を撮らない人も必ず人を撮りたくなる、人を撮る魅力に気づく、そんな特集を32ページ増でお届けします。

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