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冒険と平穏の間にある小景 吉田周平 | 連載 Every day,Greatest day 子どもたちの日常

大人にとっては当たり前の日々も、小さな世界で泣いて、笑って、一生懸命生きている子どもたちにとっては、毎日が最高の日。我が子の意外な表情、愛らしい仕草、ふと気づく成長......日常にある尊い瞬間を抱きしめるように写真に残す7名の作品をご紹介。全7回の連載、第4回は写真家の吉田周平さんです。

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目次

プロフィール

吉田周平

写真家 1981年生まれ、神奈川県出身。カメラ歴13年。東京造形大学卒。フリーのグラフィックデザイナーとして働くある日、ジャンクのフィルムカメラを買ったことから写真にのめり込む。デザイン会社からの撮影依頼をきっかけに写真を仕事とし、自身の作品と受託撮影を並行して現在に至る。
愛用カメラ:PENTAX 67II、Mamiya RZ67 Pro IID、PhaseOne XF IQ180
愛用レンズ:SMC PENTAX 67 105mm F2.4、Mamiya SEKOR 110mm F2.8、Schneider 80mm F2.8

うちの子紹介

現在17歳と12歳の姉妹。ふたりとも撮られることをほとんど意識していません。だからなのか、『写真の中のふたりの雰囲気が、幼い頃からずっと変わらない』と言われることがあります。

冒険と平穏の間にある小景

父と娘など、立場や関係性で見ず、「不思議」として見ている

「このときの自分なりの家族観のようなものが表れた一枚」。

子どもの素直な反応は高純度な不協和音を生み出す。そこが面白い。場と人の響きを撮っているのだと思います。

「美しい風景の中でやや不機嫌な娘、その不協和音が面白いなと思って撮りました」。

「カヤックの組み立て中、おもむろに娘たちがとった行動に、この場から引き出された気持ちが表れているようでいいなと」。

「季節を問わず、週末には海や川で過ごす、我が家の日常らしい一枚。寒い中、秘密の話をしているようなシルエットが気に入っています」。

解らなさをそのまま見たくて、写真を撮り始めた

写真を始めたのは30歳のとき。デザイン素材を撮影しようとジャンクのフィルムカメラを買ってみたのを機に、のめり込みました。当時の写真共有サイトで、アメリカやヨーロッパのインディーシーンで撮られていた多くの写真を見て、自由で面白い世界だなと感じたのを覚えています。娘たちの写真を撮るようになったのは、誕生を見たことがきっかけです。子どもは絶え間ない変化と不変を一身に見せる、最も身近で不可思議な存在。その解らなさをそのまま見たくて撮り始めました。シャッターを切りたくなるのは、何もない純粋なとき。とにかく今、目の前のことはリアルタイムには解らないし、忘れる。何かを感じているけれど、それが何なのかはつかみきれない。でも多分、自分にとっては大切なので、撮る。そんな感覚です。子どもたちを撮るときは静かに待ち、そのまま撮る。父と娘など、立場や関係性で見ず、不思議として見ています。今回の掲載写真も直感で撮って、何か不思議な感覚になるものを選びました。写真をときどき見返すと、やっぱりこの解らなさが好きだなとなります。子どもたちの写真を撮っているのは、自分のため。でも結果的にいつか娘たちにとって、写真が”戻る場所”になるのかもしれないとも思っています。

GENIC vol.74 Every day, Greatest day 子どもたちの日常

GENIC vol.74

2025年4月号の特集は「It’s my life. 暮らしの写真」。

いつもの場所の、いつもの時間の中にある幸せ。日常にこぼれる光。“好き”で整えた部屋。近くで感じる息遣い。私たちは、これが永遠じゃないと知っているから。尊い日々をブックマークするように、カメラを向けてシャッターを切る。私の暮らしを、私の場所を。愛を込めて。

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