Nguan
Photographer シンガポール出身、在住。シカゴの映画学校を卒業後、NYに移る。映画の脚本を書くためのメモとして、街で見た人や物の撮影を始めたことがきっかけでフォトグラファーに。2000年代に東京に長く滞在し、2010年に写真集『Shibuya』を出版。著書はほかに『How Loneliness Goes』(2013)、『Singapore』(2017)がある。作品の一部はシンガポール・アート・ミュージアムに常設展示されている。
愛用カメラ:FUJIFILM GW690III
Q.日本で撮影するのが好きな理由は?
A.Because I feel a connection to Japan.
「この写真は2010年、外苑前駅付近で撮影したものです。コンビニの前にいた警備員の男性たちの制服と、その上にある看板の配色が偶然にも一致しているのが印象的でした」。
8歳の時に初めて日本を訪れ、一瞬で心を奪われた
「私の母方の家系は日本の会社と古くからビジネス上の取引があり、物心ついた頃から日本というものを意識していたと思います。8歳の時に初めて日本を訪れ、一瞬で心を奪われました」。
その時に、理由を説明するのは難しいような、場所とのつながりを感じたというNguanさん。
「写真家になろうと決めた時、写真学校に行くという道は選ばず、偉大な写真の歴史を持っていると感じた3都市で過ごすことにしました。それはパリ、ニューヨーク、東京です。その文化にどっぷり浸かりたいと思って。それで、2000年代前半は頻繁に東京に通い、毎回2〜3カ月滞在しました。言葉も通じない、知り合いもいない街で、でもカメラがそばにある限り、孤独を感じることはないことに気づきました。当時は携帯電話も持っていなかったので、本当に迷子になることもありましたが、行き先がわからないまま電車に乗り、面白そうな景色に出会うたびに降りては、写真を撮る毎日で。不運なことに一度も停車しない特急列車に乗ってしまい、気がつけば成田空港に着いてしまった、なんてこともありましたが!」。
そんなNguanさんが日本で一番好きな場所は、「新宿御苑が大好きです。世界でもっとも美しい公園だと思います。静かな時も幻想的ですが、お花見する人たちで賑わっている時はもっと好きです。もちろん、渋谷も大好きですね。スクランブル交差点で繰り広げられる”いつまでも続く顔のパレード”がたまらないです」。
「2008年に撮影した、渋谷の交差点の一角で60年以上続く、天津甘栗店の写真です。渋谷の煌びやかな映像が流れるスクリーンやネオンの中にあると、店構えは控えめで見過ごしてしまいがちだけど、その美しい色彩に魅せられて、日が暮れ始めた頃に撮影しました」。
「2017年、西立川駅にて撮影しました。昔ながらの公衆電話の上に置かれた一房の桜の花。桜は人生のはかなさを、公衆電話は今にも消えていきそうなアナログの世界を表しているような、その象徴的意味が気に入っています」。
「2008年、代々木公園で撮った写真。私は、東京の公園の雰囲気やエネルギーが大好きです。東京の街には緊張感がありますが、公園では独特なお祭り騒ぎのような気分と解放感を感じます」。
GENIC vol.67【撮影と表現のQ&A】Nguan/Q.日本で撮影するのが好きな理由は?
Edit:Yuka Eguchi
GENIC vol.67
7月号の特集は「知ることは次の扉を開くこと ~撮影と表現のQ&A~」。表現において、“感覚”は大切。“自己流”も大切。でも「知る」ことは、前に進むためにすごく重要です。これまで知らずにいたことに目を向けて、“なんとなく”で過ぎてきた日々に終止符を打って。インプットから始まる、次の世界へ!
GENIC初のQ&A特集、写真家と表現者が答える81問、完全保存版です。