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【写真家たちの履歴書:6】古性のち

さまざまな分野で活躍する写真家7名に、写真家になるまでの経緯とその後の道のり、そして現在地とこれからをインタビュー。
写真と向き合う人生のヒントがつまった、それぞれのヒストリーを、作品とともにじっくりと味わってください。
6人目は、言葉と写真で飾らない日々をドラマティックに表現するフォトグラファー、古性のちさんです。

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古性のち

1989年生まれ、神奈川県横浜市出身。フォトグラファー/BRIGHTLOGG,INC 取締役 日本と世界中を旅しながら、「写真と言葉」を組み合わせた作品を作る写真創作家としても活動。現在、東京と岡山の二拠点生活中。2022年初の単著「雨夜の星をさがして 美しい日本の四季とことばの辞典」を上梓。

【BIOGRAPHY】
2002年 ホームページを開設。エッセイや詩などを書くのが日課に
2006年 現実よりもネットゲームの世界が楽しくなり、不登校に
2007年 高橋歩さんの本に感化され、世界を旅しながら生きることを決意
2009年 ハサミ1 本で世界中を旅するために、美容師になる
2010年 一眼レフカメラ一式を購入
2011年 美容師の激務に心が折れ、離脱。大好きなパソコンで仕事を始める
2013年 初めて展示会「CP +」の一般枠で出展。印刷楽しい!になる
2014年 Web デザイナーに転職。社内ブログの記事がネットで大々的に広まる
2015年 社内でweb ライターに転職。仕事で写真も撮るように
2016年 念願の世界一周へ
2017年 写真と文章のセットの仕事を本格的にスタート
2018年 FUJIFILM のカメラと出会う
2019年 FUJIFILM の生誕日に勝手にフォトウォークを企画
2020年 Nikon のフルサイズカメラと出会う。写真の表現の幅が一気に広がる。FUJIFILM、Nikonの2機で「美しい日本語と写真」の作品作りをスタート
2021年 共著『Instagram あたらしい商品写真レシピ】発売、駅ポスター撮影やコピーを担当
2022年 初の単著「雨夜の星をさがして 美しい日本の四季とことばの辞典」が発売

旅する人生に寄り添うもの

写真家になって、人生の目標"旅しながら生きていく"に大きく近づけた

私は学校がすごく苦手でした。10代後半、これから大人になって会社員になって、我慢して組織で生きていかなくてはいけないのかと悩んでいた頃、本屋さんでふと手にした高橋歩さんの本に衝撃を受けたんです。
この人みたいなすごい表現者になれば、会社員にならずとも生きていけるのではと。世界一周を考えたのは、その本が世界中を旅して撮った写真と言葉でまとめられていたから。これをなぞれば歩さんになれる!と思い、両親に話したところ、手に職がある状態にしていくように言われて。それで友達に相談して、すすめられたのが美容師。ハサミ1本あれば、世界中どこでもやっていけるというので、キャリア美容師になりました。ただあまりにも不器用で、心から楽しめず、何か違うと思いながら働いていて、もともとパソコンが大好きだったのでWEBデザイナーに転職。わりと向いていたとは思うのですが、細かい作業に苦手意識があり、約3年続けたところで、WEBメディアブームが起こったんです。
その時、もしかして写真と文章で食べていけるチャンスがあるのでは?と思い、WEBライターに転身。ちょうど自分の好きなことと旅をしながら仕事したいという思いが運よくハマり、その方向にシフトして現在に至ります。
そもそも写真を始めたのは、一目惚れした人と共通言語を持ちたかったから。彼が写真でNY留学すると言うので、私も頑張らなくてはと、写真のグループ展に出たり、フォトウォークに参加したり、接点を持つために必死でした。恋愛は全然うまくいきませんでしたが、写真と出会えたのでよかった。彼は写真をやめてしまいましたが、今でも彼の撮っていた写真には影響を受けています。

写真は日々の記録。子供の頃の日記から形を変えて続けている日課

小学三年生くらいから毎日日記を書いていて、書くことが楽しいし、読み返すのがすごく好き。たぶん私は他人より自分に興味があって、自分を観察することが楽しいんだと思います。
中学生の時、携帯のホームページ作りみたいなブログが流行った時期があり、写真を入れると読まれる傾向にあったので、写真
を撮るようになりました。その後デコログになり、それがミクシィになり、Twitterになり、Noteになっただけなので、やどかりのように場所を変えているだけ。毎日よく続くねと言われますが、8歳からやっていることは変わらないので、歯磨きみたいなものだなと思いながら続けています。
ベースが日記という意識がすごく強いので、写真も日常記録の一部。言葉にして伝わらないところは写真で撮り、写真で足りないところを言葉で書くみたいな補い合い方をしているのかなと。そんな私の”自分観察日記”に価値を感じてくださった方とお仕事させていただいている感覚で、写真を仕事に!みたいに決めた感じはないです。というのも、写真家と名乗り始めたのは実は最近のこと。
そろそろ仕事も大きくなってきたし、肩書きがあったほうがわかりやすいと思ったから。
「写真で生きていく」ことについては、結果そうなっているだけで、ずっと一番上にあるかどうかはわかりません。でも、写真は面白さや楽しさを感じる限り手放さないと思います。
写真と執筆のスタイルに落ち着いたのも、それが一番私のやりたい「旅をしながら生きていく人生」に寄り添うものだからです。

写真があれば、日常に魔法がかかる

私の写真はあくまでも自然体。飾りすぎず、自然にも人にも極力無理はさせません。
なぜ撮るのかと言えば、写真があったほうが楽しいから。なんでもない田舎道が途端にテーマパーク並みに楽しくなることがよく起こると思っていて。写真があるだけで日々が愛おしくなって、人生が楽しくなる。雨だって写真を撮る人にとってはご褒美で、どんな季節でも、どんなお天気でも機嫌が良くいられるというのはすごく幸せなことだなと。みんなでフォトウォークするとまた違う楽しみがあるし、写真を撮る人の日常って、幸福度が高いなあといつも思います。とはいえ、単純に”楽しくないな”と写真を撮らなくなった時期はありました。
その頃は仕事に追われ、全部何かにつなげようとして、ただ撮るみたいな機会が減っていたから。リハビリに家の周りで100枚撮る!みたいな遊びをしていたら、新しい写真の楽しみ方と出会えて、またシャッターを切るように。写真を純粋に楽しむ心を忘れないことは大切だなと思います。そして「この写真どう思う?」と人に見せる機会をいっぱい作ること。それは周りの友達や家族でもよくて、自分は何が得意なのか、世間から何を求められているのかを理解したほうが、自分で自分らしさを見つけるよりも早いから。らしさを言語化してくれて、そこを好きだと言ってくれる人がいて、そういう人の存在が自分を写真家にしてくれるんじゃないかなと思います。

2011年 わたしの写真のはじまり

当時片思いしていた彼が写真をやっていて、気を引きたくてSony α77を2010年に購入。翌年、写真屋「monogram」が出版している一般募集の写真集「誰がなんと言おうと大好きな写真2011」に掲載してもらったのが「世に写真が出た」の第一歩です。英語がうまくなりたいなら英語を話す彼氏を、とよく聞きますが、写真も同じだと思います(笑)。

2013年 撮るきっかけになったzine

プライベートzineを制作し、展示会「CP+」の一般枠で出展。友人とお揃いのボブのウィッグと制服を用意して、香川県の離島・直島に。初めてのロケだと盛り上がって撮影したのですが、今思えばエモい写真の走りだったのかも。この時の表情が見えない作品が気に入って、人物のシルエットや顔のないポートレートをよく撮るように。原点はここかなと思います。

2016年 念願の世界旅行。仕事しながら旅する今のスタイルの原型に

Sony α6300で写真を撮りながら、7か月間で17カ国を旅しました。この旅行は私にとっては思い出作りではなく、今後ずっと旅しながら生きていくための最初の一歩だと思っていたので、ある種実験のようなつもりでSNSのフォロワーを増やすことにフォーカス。各地で撮った写真に文章を添えたコンテンツを発信していたら、”仕事をしながら世界を巡る”というスタイルが当時は珍しく、SNSで注目されることに。その後、本格的に「写真と言葉」を仕事としてスタートしました。

2018年 お気に入り"色"を発見

仕事で「レンタルしたカメラで台湾を歩く」という企画があり、初めてFUJIFILMのX-T2を使ったのですが、ファインダーからのぞく世界の色が好みすぎて、1週間で約2000枚の写真を撮影。カメラが違うだけで、こんなに写真って楽しいのかと衝撃を受けました。レンタル返却後すぐに購入し、毎日持ち歩くように。急激に写真が楽しくなって愛があふれ、翌年のFUJIILM生誕日に勝手にフォトウォークを企画。全国で盛り上がり、Twitterのトレンドにも上がって、FUJIFILMの担当者にも届いたことで、仕事の幅が広がりました。

2019年 旅の写真がTwitterでいいね10万超え

ウズベキスタンの鮮やかな"サマルカンドブルー"の写真(2019年)がTwitterで10.5万いいねを記録。

世界旅行をきっかけに、写真が私を好きな場所に連れてってくれる存在になり、“撮ると書く”のライフワークを仕事にスライド。
WEBメディアブームに便乗して、それまで趣味で使っていたSNSもビジネス寄りに考えて、世界中を旅しながら発信していくようになりました。
ずっと「好きなこと」「得意なこと」「世の中に求められること」の交差点を探して迷子だったから、みんなが「いいね」と言ってくれて救われた。「私のこれ、いいんだ!」って、うれしくなりました。SNSがある時代に生まれてラッキーだったなと感じています。

2020年 Nikonのフルサイズと出会う

仕事でNikonのフルサイズミラーレスカメラと出会って、その解像度の高さに感動。フルサイズってこんなに綺麗なんだと驚きました。そこからNikon Z 6IIを連れていけば安心という感じで、いつも持って行くように。私にとって頼れるビジネスパートナーになりました。

2021年にはニコンCP+ のニコンオンラインステージにも出演させていただきました。

2020年 「美しい日本語と写真」作品作りをスタート

FUJIFILM X-T3、Nikon Z 6II両方の表現を駆使しながら、美しい季語と写真を組み合わせた作品作りを始めて、2014年からコツコツと積み上げてきたTwitterフォロワー数が一気に増え、10万を超えました。自分が良いと思うものを、言葉だけでなくビジュアルでも伝えられるというのは、写真家になってよかったと思うことのひとつです。
そんな今の私のスタイルに確実に影響しているのは、高橋歩さんの本。
情景と言葉を一緒に噛み締める、そのためにベストな組み合わせを考えるといった彼のスタイルをとても尊敬しています。この人みたいになりたい!と思ったら、とことんトレースすることは大事!

2022年 初の単著「雨夜の星をさがして 美しい日本の四季とことばの辞典」を上梓

現在は岡山と東京を拠点に、フォトグラファーとして写真を撮りながら、エッセイを書いたり、プロダクトを作ったり、ライターやデザイナーの仕事と写真を組み合わせ、活かしながら活動しています。
単著「雨夜の星をさがして 美しい日本の四季とことばの辞典」は2022年11月30日に発売です。

Amazon:雨夜の星をさがして 美しい日本の四季とことばの辞典

Noci's 人物相関図

懇意の写真家仲間

コハラタケル

いつもストイックな姿勢に背筋が伸びる。写真に一途な人!

伊佐知美

ずっと一緒のフィールドで戦っている人って感じがする。太陽。

横尾涼

今の表現の一歩目を一緒に歩いてくれた人。

親しい後輩写真家

片渕ゆり

旅仲間であり、たまに保護者のようでもある頼れる人。

藤井 音凛

発想力とセンスにいつも刺激をもらっている。おちゃめな可愛い後輩。

古性のち Instagram
古性のち Twitter

GENIC vol.64【写真家たちの履歴書】

GENIC vol.64

GENIC10月号のテーマは「写真と人生」。
誰かの人生を知ると、自分の人生のヒントになる。憧れの写真家たちのヒストリーや表現に触れることは、写真との新たな向き合い方を見つけることにもつながります。たくさんの勇気とドラマが詰まった「写真と歩む、それぞれの人生」。すべての人が自分らしく生きられますように。Live your Life.

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