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【表現者が人を撮る理由 #3】酒井貴弘

変化する被写体「人」を独自の視点と作風で表現する写真家たち。
ふとした表情、予想もつかない動き…人に魅了され、夢中でシャッターを切ってしまう表現者たちの熱量、被写体との間に生まれるケミストリーを胸いっぱいに感じてください。
#3は、ナチュラルな表情を引き出す人気フォトグラファーの酒井貴弘さんです。

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酒井貴弘

フォトグラファー 1986年生まれ、長野県出身。関東を拠点とし、ポートレートとスナップを中心に、広告案件やタレント撮影、ファッションの分野で活動。雑誌掲載やWEBメディアでの執筆など、写真文化向上のための活動も精力的に行っている。
愛用カメラ:NIKON Z 6Ⅱ、RICOH GR Ⅲ
愛用レンズ:NIKKOR Z 50mm f/1.8 S

自分×誰か 無限の可能性

TAKAHIRO SAKAI × Anna Yamada

「山田杏奈さんは表現力がすごく、見る人を引き込む力があり、目で演技できる女優さんだと思います」と酒井さん。

「レトロな場所を選び、時代を錯覚するような不思議な世界で、山田さんの可愛らしさを表現。印象的な文字や目立つ色を入れることでパッと目をひく写真にしています」。

そこに写っている“人”を好きになってもらえたら…

「家族写真を撮るフォトスタジオに勤務していた頃、モデルも撮ってみたいと思うようになり、SNSでモデルさんを探して撮影するようになりました」という酒井さん。
自然な表情を切り取るおしゃれなポートレートが人気で、Instagramのフォロワー数は13万に迫る勢い。

「山田さんの力強く、意志のこもった目を魅力的に表現するため、表情に寄った構図にしました」。

「ポートレート撮影では、写真を見た時にその人がどういう存在に見えるか、という距離感を重視しながら、見た人がそこに写っている人を好きになってくれたらいいなという思いで撮っています。被写体がなるべく自由になれるように心がけていますね。物理的な自由というよりは、写真の中での自己表現において自由になってもらうことが、その人らしさを写すことに繋がるのかなと思っています。そして自分なりにその人の魅力を見つけ、どう肯定して捉えるかが大事。被写体自身も自分を肯定できるような写真になり、その写真を見た人もそこに写る人と”出会えた”という感覚になってもらえたらいいですね」。

<Photography Tips>マクロフィルターを付けて思いきり寄って撮影

「とにかく力強い1枚にしたかったので、直球勝負のど真ん中な表情に寄った構図で瞳を強調。逆光で撮ることで全体的に優しい雰囲気も意識しています。マクロフィルターを付けて、山田さんの瞳の魅力を凝縮して表現しました」。

撮る側と写る側の力が混ざり合い、想像を超える化学反応を起こす

TAKAHIRO SAKAI × Akari Hayami

酒井さんが撮って感じた早見あかりさんの印象は「写真に写った時の存在感がすごい方ですね。特に目が特徴的で、吸い込まれるようにきれい。光を使って、早見さんの美しさを写したいと思いました」。

逆光気味にすることで優しい雰囲気に。

光と影の境目を顔に入れて、片方は暗く、もう片方は光の中にすることで、絵に力強さを出したそう。

<Photography Tips>光の使い方で表現の幅を広げ、動きのある写真に

「使う光が単調にならないように、逆光や順光、光と影を駆使して表現に幅を出しています。ポーズは固定せず、被写体にもなるべく自由に動いてもらい、ちょっとした仕草や動作の途中を撮ることで、より動きのある写真に」。

“写真を見た”ではなく、その人に“出会えた”という感覚になってほしい

TAKAHIRO SAKAI × Sho Nishigaki

ドラマ『ドラゴン桜』で話題の俳優・西垣匠さん。
「一緒にいるような近い距離感で、優しさの中にある魅惑的な部分を写したいと思った1枚。西垣さんが持つ素直さ、純粋さ、誠実さみたいなものが現れていると思います。口元に手を置くことで瞳に視線がいくようにしました」。

<Photography Tips>ポートレート撮影でよく使うお気に入りレンズ

「カメラはNikonのZ 6Ⅱを使っているので、Zシリーズのレンズを主に愛用していますが、中でもよく使うのはNIKKOR Z 50mmf/1.8 S。とても軽くて、写りがいいので重宝しています」。

「人は十人十色。同じ人は一人もいないので、自分×誰かという掛け算で生まれる写真が無限にある。人は他の被写体よりも不確定要素が多いため、お互いの掛け合わせでどんな写真が生まれるかわからない。だからこそ、撮る側と写る側の力が混ざり合って起こる化学変化で、想像を超える写真が生まれた時、喜びを感じます」。

TAKAHIRO SAKAI × Hinata Homma

5月に発売された本間日陽さんの写真集は酒井さんが撮影。
「カメラを向けた時の表現力や惹きつける力がすごく、写真の中で輝ける人だと思います。笑顔に破壊力があり、見る人を幸せな気持ちにしてくれる人ですね。この写真は”図書館で一緒に過ごした思い出”をコンセプトに、本をたくさん重ねて、ちょっとした面白さを演出。顔周りには直射日光が当たらないようにして柔らかい表現に」。

酒井貴弘 Instagram
酒井貴弘 Twitter

Information

  • ■写真がもっと上手くなりたい人のためのオンラインサロン「アマカラ写真部」をフォトグラファー神戸健太郎氏と主催・運営中。
  • https://community.camp-fire.jp/projects/view/302115

  • ■酒井さんが撮影したNGT48・本間日陽さん1st写真集『ずっと、会いたかった』が光文社より発売中。

GENIC VOL.58 【表現者が人を撮る理由】
Edit: Yuka Higuchi

GENIC VOL.59

特集は「だから、人を撮る」。
最も身近にして最も難しい、変化する被写体「人」。撮り手と被写体の化学反応が、思ってもないシーンを生み出し、二度と撮れないそのときだけの一枚になる。かけがえのない一瞬を切り取るからこそ、“人"を撮った写真には、たくさんの想いが詰まっています。泣けて、笑えて、共感できる、たくさんの物語に出会ってください。普段、人を撮らない人も必ず人を撮りたくなる、人を撮る魅力に気づく、そんな特集を32ページ増でお届けします。

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