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フォトグラファー 東京都出身。Instagramをきっかけにフリーランスに転身。空間、風景、食品、物撮り、ポートレートなど広告撮影を幅広く手掛ける。国内外を旅するトラベルフォトグラファーとして雑誌やウェブで執筆活動をする傍ら、全国でフォトワークショップも開催。
愛用カメラ:Leica Q2、Sony α7R III、 PLAUBEL makina 67
愛用レンズ:Leica SUMMILU X f1.7/28mm ASPH、FE 24-70mm F2.8 GM、 PLAUBEL makina 67 Nikkor 80mmF2.8
人生の記録と記憶
「NYのコニーアイランドで散歩中に出会った、野生のカモメたち。カメラを持ち歩くことで意識が変化したのか、偶然の瞬間が増えました」。
「写真を通して伝えたいのは、シンプルに“今日も世界は美しいよ”ということ。美しいという感覚にはいろんな感情が紐付いていて、単純だけど奥深い感覚を引き出す表現だと思っています。喜怒哀楽どの感情の時も写真を撮りたい気持ちに駆られることが多く、心が揺れた時にシャッターを切ります。撮影時は良い意味で孤独で、心がしんと静まり返る感覚になります。雑踏の中でもファインダーを覗くと、写真のように静寂な世界が聴こえてくるような。孤独を研ぎ澄ますと自分だけの感情がよく見えるので、心の赴くままにさまざまなものにフォーカスします。楽しい時も悲しい時も空の色は変わらなくて、感情が写らないことに良くも悪くも救われる部分があるかも、なんて考えたりして。“自由であること”が自分自身の一つのテーマなので、写真を撮る際も、感じたいことを感じたまま写真に閉じ込めます。自分の撮りたいものがわからなくなり、迷子のようになった時期があるのですが、自分の表現を楽しんでいこうと少しずつ切り替えて、今があります」。
日常の中にある何気なくて他愛もない場面を、愛でるように撮り続ける。
「見上げたカーブミラーに映る、青空と太陽。ただ青空を写すのではなく、雲の様子も気にかけています」。
「私にとって写真とは、光。日常の中にある何気なくて他愛ない場面を、愛でるように撮り続けたいです。写真は撮った瞬間から過去になりますが、きっと未来では今よりももっと眩い時間になっているはず。見返した時に、静かに光る宝物のような時間を写真で残したいですね」。
Rule 01:青を追いかける
「青、水、光の組み合わせに特に強く惹かれます。サメの動きによって白波が立つ水面から揺れる水音も聴こえるような場面」。
「物心ついた時から、青色が好きという自覚があります。青に関連するものを見つけると自然とシャッターを切る癖があり、好きな色を写真で集めている感覚です。空の青、海の青、水の青、光の青...。時間帯や場所によってさまざまな表情を楽しめて、見ているだけで穏やかで静かな気持ちになれる青色。写真を見てくださる方にも静寂や優しい気持ちを届けられたら、と思っています」。
Rule 02:カメラをいつも持ち歩く
「東京は、街の景色が変わりやすい。一年後にはいつもの眺めが違う景色になることも多く、街並みを撮るだけで時代を写しているような気になります。イエローのタクシーが、アスファルトに映えていました。銀座にて」。
「日常で出逢う奇跡の瞬間、というと大袈裟かもしれませんが、カメラを持ち歩くことで、それまで視界に入っていたけど意識していなかった美しさに気付かされることがたくさんあります。目まぐるしく過ぎていく暮らしの中には、意外とたくさんの煌めきが散りばめられている。それを見つけられた時の感動は、写真を撮ることでより特別なものとして記憶される気がします」。
Rule 03:想像を掻き立てるような余白を作る
「星よりも街灯が煌めく東京の夜。人々のシルエットに、それぞれのエピソードがうかがえます」。
「写真の余白が好きです。余白を作ることで、作品の捉え方を見る人の感覚に委ねる効果があると考えています。背景の余白に限らず、例えば、人物の表情を隠すことでどんな表情か想像してもらうという余白を作ることもあります。写真の中の世界に対し、できるだけ多くの人がそれぞれの体験や想像に置き換えて思い描けるような写真を届けたい。初めて見たけどなんだか懐かしい、知らないのに知っている気がする、みたいな気持ちを引き出せたら私にとって正解です」。
「出航した船の窓から見える島根の海。窓でフレーミングすることで、景色とは別の余白を作りました」。
「窓から差す光に手を伸ばした、静かな一枚。ピントが甘いことで、まどろみのようなイメージに。Hasselblad 500c/mで撮影」。
私にとって写真とは、光。静かに光る宝物のような時間を写真で残したい。
Rule 04:四季や天候を楽しむ
「雨の日もいい天気。雨上がりにはカメラ片手に虹を探しに家から飛び出たり、水溜まりに映る街の景色を撮るなどして、天気の変化を楽しみます」。
「基本的に自然光で撮影しているので、季節や天候によって写真の雰囲気が大きく変わります。春や秋は温かな光、晴れた夏はコントラストの強い影、曇りの冬はぼんやりとした光と影...それぞれの良さがあり、被写体の表情も同じではありません。天候や季節は自分では選べないので、旅先で晴れている写真が撮れない、ということがあっても気持ちを切り替えて撮影に挑みます。雨も曇りも、晴れの日と同じようにいい天気なのです」。
Rule 05:こだわりに縛られすぎない、というこだわり
「自宅そばの歩道で、いつも使っている信号機の押しボタンと西陽と子どもたちの手」。
「こだわることで写真が楽しくなる、という反面、縛られすぎると息苦しくなってしまう時もあります。自分のルールで苦しむのは本末転倒なので、肩の力を抜いて、たまにはルールを破ってしまうことも必要。実は、これが一番こだわっていることかもしれません。自分ルールに苦しむ時は、きっと次のステージに行くタイミングです」。
「我が家のベランダで、久しぶりの晴れ間がうれしくて撮った一枚。特別な場所に行かなくても、息抜きのスナップを撮影」。
GENIC vol.64【写真家人生にルールあり!5Rules】
edit:Satoko Takeda
GENIC vol.64
GENIC10月号のテーマは「写真と人生」。
誰かの人生を知ると、自分の人生のヒントになる。憧れの写真家たちのヒストリーや表現に触れることは、写真との新たな向き合い方を見つけることにもつながります。たくさんの勇気とドラマが詰まった「写真と歩む、それぞれの人生」。すべての人が自分らしく生きられますように。Live your Life.