青山裕企
写真家 1978年生まれ、愛知県名古屋市出身。筑波大学人間学類心理学専攻卒業後、上京して写真家として独立。2007年キヤノン写真新世紀優秀賞受賞。ギャラリー、出版レーベル、オンラインコミュニティを運営。
愛用カメラ:FUJIFILM GFX100S、 PENTAX 645Z、LEICA Q2
愛用レンズ:GF63mmF2.8 R WR、 smc PENTAX-D FA645 55mmF2.8AL[IF] SDM AW
“フェチなのにピュア”に撮る School Girl
「健康的な肌に滴る水滴で、青春感、フェチなのにピュアな世界を演出。目を入れないことによって、唇などから表情や感情を読み取れるようにしています」。
真夏の屋外プールで撮影「晴天で透き通った水によって女の子たちの肌を美しく描写できた一枚。つま先が生き生きとしている瞬間です」。
自分の過去に思いを馳せていくとヒントのようなものが湧いてくる
「自分らしい写真とは、自分の歴史や嗜好や視点が、写真に漏れ出てしまっているもの。よくフェチな写真ですね、と言われるのですが、もともと女の子の顔よりも、肌や脚や身体のフォルムなどに注目してしまうところが、写真にも現れているのかもしれません。自分では、“フェチなのにピュア”な作風と言っています」と話す青山さん。
どうしてこのような作品を撮るようになったのでしょうか?「学生時代に遠い存在の(付き合ったこともなく、話すことすら出来なかった)異性に対して抱いていた、憧れや畏怖のような感情を思い出し、写真作品として具現化してみようと思ったんです」。
「一瞬で女の子同士の空想的な世界に入れるような写真を目指しました。顔は写っていなくても、脚によって和気藹々とした感情が出せたら。足で虹を受け止めているイメージで」。
「個人的に、肌に残る痕にフェティッシュさを感じるんです。ピントを外しながら、画面の奥に口元を入れることで、女の子の表情を読み取るヒントを作りました。肌の面積を多めにすることで、生々しさやちょっとドキッとさせる感覚を生み出しています」。
誰もが持つ“思春期”ならではの記憶や感情を呼び起こしたい
「“スクールガール”をフィーチャーしたのは、大人なら誰しも通過している“思春期”ならではの記憶や感情を、脳の奥底から呼び起こさせたいと思ったからです。あまり顔を写さないのは、身体のパーツや肌などから薫ってくる“個性の痕跡”を切り取りたくて。例えば、ホクロや注射痕、傷跡など、普段注視されない部分にこそ、その人の素が潜んでいると考えているんです。もしかしたら、あまり見せたくない部分かもしれませんが、きちんとフィーチャーする意味を説明し理解してもらって撮るようにしています。この女の子に対する姿勢や距離感が単なるフェチではない、ピュアさを保つための秘訣です」。
その人の素が潜んでいる“個性の痕跡”をきちんと撮る
「窓や襖など直線的な背景の中に、曲線的な女性の脚を入れること。太ももから脚先まで、左右の脚の間隔の差を一定にすること。そんなこだわりによって、構図の美しさを見出しました。太もものホクロを見せることで、個性の痕跡が立ち上がるように意識しました」。
GENIC vol.62【独自の作風で素肌を表現 This is My World】
Edit:Izumi Hashimoto
GENIC vol.62
テーマは「素肌と素顔を写す」。
人の美しさを大切に写しとった「素肌」と「素顔」の世界をお届けします。「性」ではなく「生」を感じる、神秘的で美しい森に迷い込んでしまったような写真たちと、そこにある撮り手の想いに迫ります。