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2024年度ライカ・オスカー・バルナックアワードが開催中。厳正なる審査を経てファイナリストが決定 (2/2)

ライカカメラ社による、国際写真コンテスト「ライカ・オスカー・バルナックアワード(LOBA)」が開催中。LOBAは世界的な権威を誇る写真コンテストで、1980年から始まり、今回は44回目となります。厳正なる一次審査を経て、一般部門の「ライカ・オスカー・バルナックアワード」と、新人部門の「ライカ・オスカー・バルナック・ニューカマーアワード」の両部門において、ファイナリスト計12名が選出されました。特に傑出した写真家として選ばれたファイナリスト達の作品を紹介します。

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目次

ファイナリスト

アドリアナ・ロウレイロ・フェルナンデス(ベネズエラ)

Adriana Loureiro Fernandez (Venezuela)/© Carolina Cabral, Carlos Becerra

フォトジャーナリスト 1988年生まれ。コロンビア大学でジャーナリズムの修士号を取得。Women Photographの会員。ハインリッヒ・ベル財団の研究員を務める。同財団の支援を受けて、北アフリカにおける移民危機を取材するプロジェクトを実施。現在、2019年のロイター報道写真ジャーナリズム助成金の一環として、ベネズエラでプロジェクトに取り組む。2019年にレミ・オクリク賞を受賞し、ペルピニャン市のVisa Pour L'Imageで個展を開催。

Paradise Lost

南米ベネズエラの荒廃した姿を個人的な日記のように描き出した、本作品シリーズ。10年ほど前から記録されている、作者の祖国崩壊の実情です。貧困、インフレ、暴力事件――多くの住民が祖国を見限る一方、若い世代の心の中ではまだ希望は失われていません。「ここは美しさと恐怖の狭間にあるパラダイス・ロスト(失われた楽園)」と作者は表現します。

03. Grillis Febres (19, middle) and her friends play and cuddle with their children, Caracas, Venezuela 2018 from the series Paradise Lost/© Adriana Loureiro Fernández/LOBA 2024

13. A busy street market, Caracas, Venezuela 2023 from the series Paradise Lost/© Adriana Loureiro Fernández/LOBA 2024

17. Yon Medina dives from an abandoned oil structure in Lake Maracaibo, Cabimas, Venezuela 2022 from the series Paradise Lost/© Adriana Loureiro Fernández/LOBA 2024

サラ・メネセス・クアピオ(メキシコ)

Sara Meneses Cuapio (Mexiko)/© Sara Meneses Cuapio

写真家 1995年生まれ。グアダラハラ大学で工芸デザインの学士号を取得。2022年に、セントロ・デ・ラ・イマジェンの写真制作セミナーを卒業し、写真部門で国立文化芸術基金(FONCA)の若手クリエイター奨学金賞を受賞。

Raízhambre (Root Hunger)

メキシコ・トラスカラ州にある休火山のマリンツイン山。その斜面に広がる森林では今、違法伐採とキクイムシの発生によって大規模な破壊が進行しています。この森林破壊は環境だけでなく、森林を儀式の場としているメキシコ先住民のナワ族の文化の世界観にも影響を及ぼしています。その壊れゆく環境と消えつつある文化遺産の関係がこの作品には描かれています。

06. Us, Matlalcuéyetl, Tlaxcala, Mexico 2023 from the series Raízhambre/© Sara Meneses Cuapio/LOBA 2024

08. Drowned, Matlalcuéyetl, Tlaxcala, Mexico 2022 from the series Raízhambre/© Sara Meneses Cuapio/LOBA 2024

20. Botton. You. Matlalcuéyetl, Tlaxcala, Mexico 2022from the series Raízhambre/© Sara Meneses Cuapio/LOBA 2024

ダビデ・モンテレオネ(イタリア)

Davide Monteleone (Italy)/© Lorenzo Poli

ビジュアルアーティスト 1974年、スイス生まれ。ロンドンのゴールドスミス大学で芸術と政治学の修士号を取得。ナショナル ジオグラフィック、タイム、ニューヨーカーなどの雑誌に定期的に寄稿しており、ロンドンのサーチギャラリー、オスロのノーベル平和センター、パリの欧州議会、ローマのパラッツォ デッレ エスポジツィオーニ、アルルの写真展、パリ フォトやフォト ロンドンなどのアートフェアなど、ギャラリーや美術館で展示会やインスタレーションの形で発表されている。主な受賞歴に、ナショナル ジオグラフィック フェローシップ (2019年)、アジア ソサエティ フェローシップ (2016年)、カルミニャック フォトジャーナリズム賞 (2013年)、EPEA 賞 (2012年)、ヨーロッパ出版社賞 (2011年)など。

Critical Minerals – Geography of Energy

この先の未来において、過去の過ちを繰り返すことなく持続可能性を実現していくにはどうすればよいのでしょうか。再生可能なエネルギー源への移行は世界のエネルギー産業が目指す目標ですが、本作品シリーズはそれにまつわる問題点を指摘しています。チリ、コンゴ民主共和国、インドネシアの3カ国でこの作品の撮影を敢行。銅、リチウム、コバルトの採掘を取り巻く問題として、地政学的、社会的、生態的に複雑な影響を浮き彫りにしました。

02. Portrait of a miner,Kolwezi, Democratic republic of the Congo (DRC) 2023 from the series Critical Minerals - Geography of Energy/© Davide Monteleone/LOBA 2024

09. Worker collecting samples from a lithium pond,Albemarle Facility, Chile 2023 from the series Critical Minerals - Geography of Energy/© Davide Monteleone/LOBA 2024

10. Aerial view of lithium evaporation ponds,Albemarle Facility, Chile 2023 from the series Critical Minerals - Geography of Energy/© Davide Monteleone/LOBA 2024

イングマール・ビョルン・ノルティング(ドイツ)

Ingmar Björn Nolting (Germany)/© Cihan Çakmak

写真家 1995年生まれ。ドルトムント専門大学で写真学士号を取得。laifエージェンシーのメンバーで、ニューヨークタイムズの定期寄稿者。人文主義写真家のための「 DOCKS Collective」の創設メンバー。作品は、ニューヨークタイムズ、ワシントンポスト、ルモンド、Mマガジン、サンデータイムズ、GEO、ガーディアン、STERN、ブランドアイン、ZEITなどに掲載されている。

An Anthology of Changing Climate

気候変動との闘いにおいて、ドイツは意欲的な目標を設定しています。しかし現在の状況は複雑で、矛盾も露呈しています。2045年までに気候中立な産業国になることを目指すことで、社会的・環境保護的なダイナミクスが創出され、社会の分断が深刻化する事態が生じています。作者は本作品シリーズを通して、どのようにして社会的合意によって気候変動への解決策を見出すことができるかを模索しています。

01. A steel plant in Duisburg, Germany 2023 from the series An Anthology of a Changing Climate/© Ingmar Björn Nolting/LOBA 2024

03. A scene at the Wunderland Kalkar amusement park, Germany 2023 from the series An Anthology of a Changing Climate/© Ingmar Björn Nolting/LOBA 2024

13. Two men in front of a forest fire in Jüterbog,Germany 2023 from the series An Anthology of a Changing Climate/© Ingmar Björn Nolting/LOBA 2024

牛童(中国)

Tong Niu (China)/© Tong Niu

写真家 1998年、中国の江蘇省南京市生まれ。 2023年に西安美術学院を写真芸術の学位を取得して卒業。現在、若い教師として、主に都市化と人口移動のテーマに焦点を当てた画像の作成と教育に携わる。キュレーション業務も手がける。

Express Delivery

黄金の10年が過ぎ、中国の物流・配送業界には変化が訪れ、成長がペースダウンしています。本作品シリーズは、主に中国・江蘇省で撮影されたもの。eコマース(電子商取引)配送やエクスプレス配送に従事する大都市の労働者の日常が大判写真に収められています。これらの労働者はより良い未来を夢見て、故郷を後にして大都市にやって来ましたが、作者は労働者が故郷に帰省する旅にも同行して撮影を行いました。

05. After the rain, the courier cycles home from work, China 2022 from the series Express Delivery/© Tong Niu/LOBA 2024

08. A portion of a shipment that a courier employee needs to process in a morning before the Chinese New Year, China 2021 from the series Express Delivery/© Tong Niu/LOBA 2024

12. Young father, young courier, China 2022 from the series Express Delivery/© Tong Niu/LOBA 2024

エティノサ・イヴォンヌ(ナイジェリア)

Etinosa Yvonne (Nigeria)/© Steven Lee

ドキュメンタリー写真家兼ビジュアルアーティスト 1989年、ナイジェリア生まれ。作品の主な焦点は、文化、宗教、伝統、環境、人間の状態、社会的不正義に関連するテーマの探求。2023年に、CAREインターナショナルとロックフェラー財団の共同プロジェクトであるAdvocacy and the ARTS Fellowshipに選ばれた8人のアーティストのうちの一人。

It’s All in My Head

本作品シリーズは、リサーチをベースにしたマルチメディアプロジェクト。テーマは「暴力やテロリズムの被害体験を乗り越えて生き続けていくこと」です。ナイジェリアは人口がアフリカ最大の国で、民族も宗教も多様であることから、大小さまざまな紛争や残虐行為が絶えません。作者は2018年からナイジェリア各地でトラウマを抱えた60人以上の大人や子どもと会い、この作品の制作を続けています。

01. Hajara Abubakar, Nigeria 2018 from the series It’s All in My Head/© Etinosa Yvonne/LOBA 2024

04. Jimoh Boton, Nigeria 2018 from the series It’s All in My Head/© Etinosa Yvonne/LOBA 2024

11. Jamila, Nigeria 2019 from the series It’s All in My Head/© Etinosa Yvonne/LOBA 2024

2024年度ライカ・オスカー・バルナックアワード 情報

・ウェブサイトでは、コンテストの概要が閲覧可能。
・過去の審査員と推薦者のインタビューも掲載されています。

Leica Oskar Barnack Award 2024 WEB

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