石田真澄
写真家 1998年生まれ、埼玉県出身。2017年、自身初の個展「GINGER ALE」を開催。2018年に初作品集『light years -光年-』、2019年に2冊目の作品集『everything will flow』をTISSUE PAPERSより刊行。現在は雑誌や広告などで活動。
愛用カメラ:Nikon、CONTAX、コンパクトカメラを使い分け。
A STORY TO GIVE HER
石田真澄が撮る、八木莉可子の3年半の記録
「黄色の柵がなんだか可愛かったので、顔を出してもらいました。高校最後の思い出に制服で撮影した写真」。
「ある雑誌で好きな女優さんを撮らせてもらう企画があり、そこで名前を出させてもらったのが八木ちゃんとの出会いです。なぜだかわからないけど、漠然と撮りたいと思える稀な女優さんでした。実際会ってみてもすごく素敵な人で、誠実で、楽しくて、好奇心旺盛で。だから最初は写真集のことは考えずにほとんどプライベートの延長みたいな感じで写真を撮っていたんです。写真集にしようとなってから、ただ自然体な姿を撮るだけではなく、彼女自身が気づいてない魅力や、『ここが素敵だよ』っていう魅力を伝えるような写真が撮りたいなと思い始めたんです。八木ちゃんに贈る一冊にしたいなって。決して彼女が自信のない性格とかではなく、だれでも『あなたのここが魅力的だよ』って肯定されることって救われることだと思うから。10代後半から20歳になるときってとても複雑で不安定な時期で。でもよくよく考えると、そういう気持ちは年齢関係なくついて回るものでもあるんですよね。だから写真集を通して、八木ちゃんが感じてくれるであろう肯定される喜びや幸せな気持ちに、見てくれる人にも共感してもらえたらと思っています」。
「写真集が大詰めになってきたとき、どうしても会って話がしたくて、彼女が撮影していた北海道まで会いに行って撮影しました。お茶をしてお散歩をしながら何気なく撮った1枚」。
「隅田川沿いで撮影した1枚。『そこで回ってみて』って言ってシャッターを切りました。写真集では色みを変えて印象的な使い方をしているんです。オリジナルの写真も見てほしいなと思っていたので、見比べてもらえたら嬉しいです」。
路上は、好きなものがたくさん転がっているからこそ、シャッターを切りたくなる場所
「とくに写真集のためとかではなく、高校最後の思い出にと、制服を着て撮った1枚です。滋賀の田舎道がのどかで素敵でした」。
女優の八木莉可子さんを約3年半かけて撮りおろした写真集「Pitter-Patter」からいくつか写真を見せてくれた石田さん。
「写真集では八木ちゃんの地元でもある滋賀や、都内、北海道など、本人の行きたい場所、やりたいことをメインに撮影したので、特にシーンや場所を計画的に考えてはいませんでした。二人で散歩しながら撮ったりと、どこか旅行みたいな感覚もありました。あえて路上で撮影しようという意識や意図はないのですが、自然光や植物が好きなので、自然と路上で撮影することが多くなります。いろんな種類の興味が散乱しているからこそ、思わず写真を撮りたくなる場所が路上なのかもしれません」。
彼女が知らない彼女の魅力を伝える写真が撮りたかった
「滋賀に行って二人でお散歩したときの写真です。ファミレスでご飯を食べて、ふらふら歩きながら何気なくシャッターを切った1枚」。
「お散歩の途中で撮影。すごく面白いことが好きな子なので、撮影中もいろんな動きや表情を見せてくれるんです。八木ちゃんの魅力のひとつですね」。
「神保町に二人で出かけたときに、街灯のライトがとてもきれいだったので、そこに立ってもらって撮った日常シーン」。
彼女の写真を撮ることで自分を深く知ることができた
「都内で北海道の物産展をやっていて、そこで目新しいおせんべいを見つけてほおばってる写真なんですけど、なんだこれはって感じの柔らかい食感ですごく美味しかった。初めて食べたときのその顔を写した写真です。食事をしているときの写真がすごく魅力的な人」。
八木さんは石田さんにとって被写体として特別な存在だそう。
「私が年上ということもあって、話を聞くことが多かったんです。だからなのか手助けをしたいというより、見届けるというか、その変化を見ていたいなと思う初めての存在。相手の変化を知っていく上で自分も変わったんだなとか、自分も1年前こうだったなとか。自分をより深く知るきっかけをくれた大切な人です」。
Information
『Pitter-Patter』
二十歳になった女優・八木莉可子、初の写真集
10代から20代になる約3年半に寄り添い、揺れ動く彼女の複雑な感情とその変化を見つめ続けた初の写真集。3000部限定の初回限定特装版。青幻舎刊行。
価格:4400円(税込)
モデル:八木莉可子
写真:石田真澄
GENIC vol.63 【彼女に贈る物語】
Edit:Megumi Toyosawa
GENIC vol.63
GENIC7月号のテーマは「Street Photography」。
ただの一瞬だって同じシーンはやってこない。切り取るのは瞬間の物語。人々の息吹を感じる雑踏、昨日の余韻が薫る路地、光と影が落としたアート、行き交う人が生み出すドラマ…。想像力を掻き立てるストリートフォトグラフィーと、撮り手の想いをお届けします。