石田真澄
写真家 1998年生まれ、埼玉県出身。2017年5月自身初の個展「GINGERALE」を開催。2018年に初作品集『light years -光年-』、2019年に2冊目の作品集『everything will flow』をTISSUE PAPERSより刊行。雑誌や広告などで活動。
愛用カメラ:Nikon、CONTAX、コンパクトカメラを使い分け。
自分のためにシャッターを切る贅沢がある
プライベートでも、外出する時はよく写真を撮るという石田さん。
「私が仕事以外で写真を撮っているのは、日常のことでしかなくて。特に何か決まったものを撮る、というようなこともないんです。あえて言うなら、天気がいい日はよく撮りますね。逆に、曇りだったり、天気がよくないと撮らないことが多いかな」。だからなのか、石田さんの写真は光を印象的に捉えた作品が多い。
「友達と都営バスに乗っている時。非常口の半透明の緑のシールを通して光が入って、それが手元に落ちてきれいでした。毎日の生活の中での一枚」。
「外付けのエスカレーターが好きです。大体エスカレーターに沿って透明の板が設置されていることが多く、それが光に当たってきれいなんです。これは渋谷の宮下パークのエスカレーター」。
好きなものは目に止まる。光、水面、木漏れ日
「光の魅力は形が色々なところ。木漏れ日や、何かに反射しているもの、人に当たっている時、太陽そのもの。一言で光と言っても、全て違います。撮っていて面白いですね。今、目の前にある光や表情がこの一瞬しかないなと思うと、焦るような気持ちになることも。写真を後で見返す時よりも、撮っている時が一番自分の気持ちが動いていることが多いです。気持ちよくて、楽しいんです」。
「よく行くビルは、西向きに窓があって、西日が強くて。影の中に光が入り込み、体が半透明のようになっている不思議さが面白くて撮りました」。
「友人と栃木へ。山奥にある旅館へ行く時の、送迎バスの中で撮った友達の後ろ姿。外からの光で体が浮き上がって見え、逆光で髪の毛が茶色く光っていてきれいでした」。
撮りたいのは、 自分が好きなもの。 自分がきれいだと思うもの
日々撮りためた写真を見返すことはあまりないのだろうか。
「仕事で必要な時や、ふとした時にも見返しますが、絶対に見返すというものでもないんですよね。私は自分のために、自分が撮りたくて、自分が残したいと思うものだけを撮っていて。だから、みんなは撮っているけれど、自分は撮らないものももちろんあるし、私だけが撮っているというものもあるんです。撮っている時のことは強烈に覚えているので、誰かと共有して楽しむというよりは、自分一人で思い返すことの方が多いです」。
「これも友達と栃木へ行った時の一枚。川原で遊んでいて、無造作に置かれた友達のバッグがいい雰囲気で。木漏れ日が落とした葉っぱの影がきれいでした」。
「友人と相模湖へショートトリップ。新宿から一時間ほどで行けるので、自然を感じたい時にぴったりの場所です。ずっと使ってみたかったシネスティールというフィルムで撮りました。強い光が赤く出るので、水面の水色とのコントラストがきれいです」。
その時一緒にいた、私と、誰かだけが味わえる思い出
「相模湖へは、新宿で食べ物を買い、本や漫画とビニールシートを持って行って、のんびり過ごしました」。
「木を通して太陽を撮るのもよくやります。シネスティールを使っているので、太陽が赤く色づいています」。
「相模湖の公園の近くに止まっていたトラック。全体の色合いと、木漏れ日がいいなと思ってシャッターを切りました。フロントガラスの中にあったコンビニのアイスコーヒーのカップの存在感も、バランスがよかったです」。
「山の上ホテルの喫茶室。これもシネスティールを使っています。シネスティールはすごく滑らかになるし、特に室内の写真の色合いが青くなるので好きですね。いちごが浮いているように見えて、可愛くて気に入っています」。
「スタジオで撮影する日の朝。ロケバスに当たる木漏れ日がきれいで」。
「朝早かったからか、スタジオ内に入った強い光が水玉みたいに広がっていてきれいでした。日常で写真を撮る時も仕事での撮影の時も、気持ち的にはなるべく差がないようにしたいと思っています。一人で歩いている時にふと撮りたいと思う気持ちを、お仕事でも作れたらいい写真になるように思うんです」。
Information
『light years -光年-』
出版社:TISSUE PAPERS
高校在学時に「現役女子校生写真家」として見出された石田さんの初写真集。クラス替え一度もなしの中高一貫女子校に通っていた頃の、日々のきらめきを焼きつけた一冊。
『everything will flow』
出版社:TISSUE PAPERS
2018年にアイスランドで撮影した写真を中心に、流れゆく光や水が、残しては消え去る刹那の輝きを淡々と捉えた第二作品集。
GENIC VOL.60 【光の気配、瞬く日々。】
GENIC VOL.60
特集は「とある私の日常写真」。
当たり前のようでかけがえがなく、同じ瞬間は二度とないからこそ留めておきたい日常を、表現者たちはどう切り取るのか。フォトグラファーが、クリエイターが、私たちが、それぞれの視点で捉えた日常写真と表現、そしてその想いに迫ります。