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プロフィール
公文健太郎
写真家 1981年生まれ。ルポルタージュ、ポートレートを中心に雑誌、書籍、広告で幅広く活動。同時に「人と自然の接点」をテーマに主に一次産業の現場を取材。日本全国の農風景を撮影した『耕す人』、川と人のつながりを考える『暦川』、半島を旅し日本の風土と暮らしを撮った『光の地形』、瀬戸内の島に起こる過疎化をテーマにした『NEMURUSHIMA』、父との関係性を通して一年間をかけて撮影したスナップ写真集『煙と水蒸気』がある。2012年『ゴマの洋品店』で日本写真協会賞新人賞受賞。2024年日本写真協会賞作家賞受賞。
ステートメントと解説、展示作品の一部をご紹介
2011年5月。「日本を歩こう」と決め、飛行機で鹿児島へと飛んだ。
新たな旅が始まる高揚感なのか、東日本大震災の残した不安からなのか、眠ることができず窓から見える風景を僕はただ眺めていた。着陸に向けて飛行機が高度を下げると、眼下には春の森が広がっていた。5月の森は美しく、まるでパッチワークのようだった。常緑樹の濃い緑と、落葉樹の新緑。泡のように浮かぶ白い栗の花。淡い青紫の山藤。
その時ふと、「ああ、山が全ての豊かさのはじまりなんだな」と思ったのを覚えている。
あれからさまざまな場所を歩いてきたが、その時の感覚は旅を重ねるごとに確かなものになっていった。農業の風景も、海の恵みも、川の流れも。みな山と森を背に、広がっている。
山が私たちのはじまりの場所であることを、今僕は確かに感じている。
日本を代表する孤高の山である富士山と、東南アジア最高峰キナバル山。高度3776メートルと4095メートルにもおよぶ二つの山は、その雄大な佇まいに目を奪われるが、僕たちに果実や水といった欠かすことのできない恵みを与え続けてきたことを忘れてはならない。時代と共に山に対する畏敬の念は薄れ、かつて信仰の対象であったことも人々の意識から薄れていったが、山には変わらず僕たちの命の源があふれ、ポタポタとこぼれ落ちている。
数年前、僕が森に「はじまりの場所」を感じたのは、僕たちの空っぽの体の中に山からこぼれ落ちた何かが満たされているからではないだろうか。二つの山がそう僕に教えてくれた。
──公文健太郎
古来より、山は私たち人間にとって信仰の対象であり、また同時に生命の源とされてきました。時代が進むにつれ、その在り方や捉え方に変化が訪れることは自然なことであり、気づかないうちに無くなったり忘れ去られてしまうことも自然なことなのでしょう。それでも山は変わることなく私たちに美しい水や甘い果実といった大いなる恵みを与え続けてくれています。目に見える存在としての山があることによって、現代に生きる私たちにはもう感じられなくなってしまったそれらを、公文健太郎の本作は今一度ここに呼び起こしてくれるのではないかと思います。公文健太郎の新作展にどうぞご期待ください。
── 写真展「Dropped Water, Dropped Fruit」プレスリリースより
公文健太郎 個展「Dropped Water, Dropped Fruit」情報
開催日時
2025年11月22日(土)~12月18日(木)13:00~20:00
※会期中無休
レセプション
2025年11月21日(金)18:00〜20:00
入場料
無料
会場
see you gallery
- 〒150-0012 東京都渋谷区広尾1-15-7 2F
- Google Map
行き方・アクセス
<電車>
JR線・東京メトロ日比谷線「恵比寿」駅から徒歩で4分
アーティストトーク情報
開催日時
2025年11月23日(日)15:00~16:30
登壇者
公文健太郎、宮添浩司 (デザイナー)、藤木洋介 (キュレーター)
司会 黒田明臣 (see you gallery 主宰)
料金
2,000円(税込・1ドリンク付き)
定員
30名
※事前申込制
※アーティストトーク開催中は、ギャラリーへの入場が制限されます。
※料金は、イベント当日にギャラリー受付にて支払い。
「Dropped Water」+「Dropped Fruit」(2冊セット)
著者:公文健太郎
デザイン:宮添浩司
翻訳:ロバート・ツェツシェ
発行:COO BOOKS
価格:55,000円(税込) 200部限定