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【表現者が人を撮る理由 #9】高橋伸哉

変化する被写体「人」を独自の視点と作風で表現する写真家たち。
ふとした表情、予想もつかない動き…人に魅了され、夢中でシャッターを切ってしまう表現者たちの熱量、被写体との間に生まれるケミストリーを胸いっぱいに感じてください。
#9は、写真からドラマを生み出す情景写真作家の高橋伸哉さんです。

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高橋伸哉

写真作家 1972年生まれ、兵庫県出身。人物、風景、日常スナップなど、フィルムからデジタルまでマルチに撮影し、作家活動のほか企業案件もこなす。海外や国内の旅記事や写真のスナップ記事の連載を執筆。SNSのフォロワー総数45万以上。#shinya写真教室を毎月開催、「shinya写真塾」開講中。著書「写真からドラマを生み出すにはどう撮るのか」(インプレス)発売中。
愛用カメラ:Sony α 7R Ⅲ、FUJIFILM X-Pro3、ライカM10-R、Nikon FM2、Hasselblad 500C/M
愛用レンズ:ZEISS Batis 40mm、FUJIFILM XF23mm、Sony 24mmGM

心を動かすシネマチックな写真

砂丘で人が少なくなるまで待って、モデルのきむらかなさんに傘を差して歩いてもらった1枚。
「表情を見せることなく背中と手の動きだけで魅せる。砂丘と夕暮れの暖色の対比がドラマチック。そこに人を配置することで物語が生まれる」。

人を写すことで 風景を情景に変える

人物とシーンのコラボレーションがドラマを生み出す”情景ポートレート”で有名な高橋さん。
「写真で表現したいのは内面の美しさ。その人物が何を見ているのか、何を感じて撮影しているのかを深掘りすること。同じ人間は一人もいない中で、その人の個性をしっかり写せるように努力することが必要だと思っています。撮影地自体にはこだわりはありませんが、ノスタルジーを感じる場所では、人を配置したくなりますね。見る人の感情に訴え、想起させるようなシチュエーションが好きです。構図はここだと思った瞬間に細かく丁寧に決めます。たとえば、暗い部屋の中、微かに光が差し込む場所に人を配置すると雰囲気のある写真に。そこでタバコをふかす女性。もの思いに耽ける女性…映画のワンシーンのような光景を意識していますね」。

映画のワンシーンのような光景を意識

夕暮れ時の曇り空がダークな雰囲気を演出。
「髪がなびく中、顔の角度をあげることで感情さえもが風に吹かれるように。露出もアンダーで撮ることと、夜明けとも見られるようにホワイトバランスを青に寄せるのがポイント」。

シネマチックな写真を撮るための秘訣とは?
「人生経験をたくさん積むことによって、どんな映画を見ても理解できるような思考になる。それが写真の引き出しを増やす手段になります。ストーリーを作るというよりは、たくさん写真を撮ること。人物、空、光、影、スナップ。その中からセレクト力を磨くことが一番大事だと思います」。

タバコが退屈な時間を過ごす女性を表現する名脇役に。
「カメラから視線を外して佇む姿はシネマのワンシーンのようで、大正ロマンを感じさせる」。

「トンネルの左の壁が白レフ、右が黒レフと考えて、瞬時に露出を合わせる。露出オーバーになるので、オートではこの写真は撮れない。日頃の経験と場数を踏んでこそ撮れる1 枚」。

Twitter投稿の参考にしたいストーリーが生まれる組写真

● 旅の流れを感じさせ、想像力を掻き立てる
● 現実的な世界と内面的な世界を組み合わせる
● ロケと室内撮影のバランスをうまく保つ
「自然体な人物と距離感のある風景写真を組むことで、見る人の懐かしい記憶を想起させるようなストーリーを生み出します。その日感じたもの、目に留まったもの全部を撮っておくこと。組む時はセレクトする力が問われますが、ロケをメインに選んで、室内写真は内面の魅力を刷り込めるようなものを選ぶのがコツです」。

高橋伸哉 Instagram
高橋伸哉(@_st_1972) Twitter
高橋伸哉(@shinya_1972_) Twitter

GENIC VOL.58 【表現者が人を撮る理由】
Edit: Yuka Higuchi

GENIC VOL.59

特集は「だから、人を撮る」。
最も身近にして最も難しい、変化する被写体「人」。撮り手と被写体の化学反応が、思ってもないシーンを生み出し、二度と撮れないそのときだけの一枚になる。かけがえのない一瞬を切り取るからこそ、“人"を撮った写真には、たくさんの想いが詰まっています。泣けて、笑えて、共感できる、たくさんの物語に出会ってください。普段、人を撮らない人も必ず人を撮りたくなる、人を撮る魅力に気づく、そんな特集を32ページ増でお届けします。

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