プロフィール

大門美奈
写真家 横浜出身、茅ヶ崎在住。
10代の頃より美術全般を学ぶ傍ら、写真を撮り始める。造園学を学んでいた大学時代に、卒業論文制作の為に訪れたスペイン・アンダルシア地方の街グラナダに出会い、以来数年に渡り繰り返し撮影している。多くのシリーズを持つが、ポルトガルを撮影した「Portugal」で、2011年リコーフォトギャラリーRING CUBEの公募展に選出、以後写真家としての道を進む。2014年、イスラム教とキリスト教の文化が入り混じり調和する世界の風景や建物、人々を捉えた写真集「Al-Andalus」(桜花出版)として刊行。その他に無印良品とのコラボレーション企画「本日の箱庭 - The Miniature Garden」に参加、自身が作る二段の弁当箱を箱庭に見立てた作品が無印良品の店舗で展開される。また「本日の箱庭展 -the Miniature Garden-」(72 Gallery 東京京橋)を同時開催した。018年には湘南・茅ヶ崎を舞台に海辺に集う人々をモノクロ写真で捉えた「浜」を赤々舎より刊行。同展は2018年から2019年にかけて、キヤノンギャラリー銀座・名古屋・大阪の他、72Gallery、茅ヶ崎市庁舎のプロムナードで個展が開催された。2022年にはライカカメラジャパンとDNPメディア・アートの協業により、ライカGINZA SIX・ライカ大丸心斎橋店の他、DNP プラザにて新橋芸者をモノクロームで撮り下ろした「新ばし」を開催。現在は作家活動のほか、カメラメーカー主催の講座やイベント等の講師を務め、雑誌・WEB マガジンなどへ寄稿、コラムの連載など活動は多岐にわたる。
ステートメントと展示作品の一部をご紹介

新橋芸者という存在を知る人は少ない。京都の芸舞妓は日本のみならず世界中に知られているが、新橋芸者とは「新橋」という名を冠しているものの、銀座の芸者である。かつては人力車でお座敷からお座敷を移動していたため、その姿を見かけることもあったというが、現在はもっぱらタクシーで移動することが多いため、お稽古場へ向かう素顔の新橋芸者を見ることはあっても、いわゆる白塗り・日本髪の芸者を見かける機会は今やほとんどないだろう。
昭和初期の最盛期の頃の新橋芸者の数は約400人を数え、アイドル並みのスター芸者も生み出した新橋花柳界。現在(2025年3月現在)はその数は40人を数えるほどだが、なごやか、かつ華やかでありつつも、個性豊かな面々が揃う。「芸の新橋」という言葉があるように、その芸(日本舞踊はもちろん、長唄や三味線、お囃子に至るまで)の水準の高さは日本随一だろう。
一見お断りの花柳界。我々が普段目にすることのない、彼女らの芸を年に一度だけ楽しむことができるのが「東をどり」である。今年2025年の5月、東をどりは記念すべき100回目を迎える。普段は新橋芸者のみが舞台に立つ東をどりではあるが、今年は京都はもちろん、金沢や博多といった日本全国の花街、また東京の各花街からも芸者衆が日がわりで出演し、記念公演に華を添える。
新橋のお座敷は明治の時代から新政府の高官や政治家の社交の場としても使用されてきた経緯がある。いわば日本の近代政治は新橋芸者とともにあったといっても言い過ぎではないのではないか。彼女らがお座敷での話をすることは決してないが、白く塗られた肌の奥にはさまざまな秘密が隠されているのだろう、彼女らの隙のない身のこなしを見ながら新橋花柳界が背負ってきた責任のようなものを感じることがある。
日本の伝統芸能といえば歌舞伎や能などがよく知られた存在ではあるが、親密な場で、料理と酒、唄と踊りが楽しめる、この新橋花柳界にこそ日本の伝統文化の粋があるのではないかと思っている。
── 大門美奈

大門美奈 撮影「東をどり百回記念写真展『新橋芸者』」情報
開催日時
2025年5月14日(水)~5月31日(土) 15:00~21:00
休廊日:日~火曜
※最終日5月31日(土)は18:00閉館
入場料
無料
会場

KKAG(Kiyoyuki Kuwabara Accounting Gallery)
- 〒101-0031 東京都千代田区東神田1-2-11アガタ竹澤ビル405 桑原清幸会計事務所内
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行き方・アクセス
<電車>
都営地下鉄新宿線「馬喰横山駅」A1出口から徒歩で2分
JR横須賀線・総武快速線「馬喰町駅」西口2番出口から徒歩で2分
東京メトロ日比谷線「小伝馬町駅」 2・4番出口から徒歩で6分
都営地下鉄浅草線「東日本橋駅」から徒歩で6分