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CP+主催フォトコンテスト「ZOOMS JAPAN 2025」グランプリが決定。グランプリは、村上賀子の「Known Unknown」

「ZOOMS JAPAN」は、フランスのフォトコンテスト「Les Zooms(レ・ズーム)」にCP+が賛同し、新進写真家の世界進出を応援するため2015年から開催、今回で8回目を迎えるフォトコンテスト。本年のグランプリは、村上賀子の「Known Unknown」。準グランプリは、竹腰隼人の「寂として」が選出されました。本記事では、グランプリとなった村上賀子の「Known Unknown」をご紹介します。
グランプリ受賞作品は、2025年2月27日(木)〜3月2日(日)まで、パシフィコ横浜で開催する「CP+2025」の会場のほか、2025年10月にパリで開催される写真映像機器ショー「Salon de la Photo(サロン・ドゥ・ラ・フォト)」の会場でも展示。また、「CP+2025」の初日2月27日(木)には、セッション(ステージC)にて、村上賀子が登壇する「Zooms Japan 2025・Les Zooms 2024 受賞作品レビュー」も開催されます。

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目次
CP+主催フォトコンテスト「ZOOMS JAPAN 2025」グランプリが決定。準グランプリは竹腰隼人の「寂として」

グランプリ

村上賀子 「Known Unknown」

村上賀子

写真家 1986年、宮城県仙台市生まれ。2012年、武蔵野美術大学大学院造形研究科修士課程デザイン専攻写真コース修了。2022年、「Known Unknown」で第23回三木淳賞を受賞。
コンセプチュアル・フォトのパイオニアとして知られる写真家・山崎博氏に師事。記憶やアイデンティティーを社会的出来事や生活環境と相関的に捉えながら、可視と不可視のイメージを交錯させる写真プロジェクトに取り組む。東京を拠点に活動。
主な個展に「Anonymous Danes」ニコンサロン(2024)、「Known Unknown」ニコンサロン(2022/2021)・Gallery TURNAROUND(2022)、「HOME works 2015」トーキョーワンダーサイト渋谷(2015)、グループ展に「『言葉とイメージ』 Vol.3 写真は語る 倉谷卓 村上賀子」Kanzan Gallery(2017)など。

グランプリに選出いただき、まことにありがとうございます。審査員のみなさま、モデルとして協力してくれた友人たち、そしてこの作品に関わってくださったすべての方々に深く感謝申し上げます。この受賞を励みに、今後も制作に邁進してまいります。CP+2025およびSalon de la Photoで、みなさまに作品をご鑑賞いただけることを心より楽しみにしております。

ステートメントと作品のご紹介

Known Unknownとは、“知らないということを知っている”という認知の状態を意味する。この写真プロジェクトにおける撮影の条件は、⼥性が⾃宅などで――カメラがないかのように――いつも通りに過ごす様⼦を撮るというものだ。彼⼥たちは顔がはっきりと写されていない。かたや⾝ぶりや⼿ぶり、⾝につけている⾐服、室内に置かれた家具や⼩物といった細部は鮮明に写し出されている。⼥性のいる室内というありふれた題材であっても、顔が⾒えないというだけで、私たちが写真を⾒る作法はがらりと変わる。⼀般的に、顔という情報は、ポートレート写真の意味を決定的に⽀える。だがこの作品では、意識的に⾃分⾃⾝を“⾒せる”という表現が放棄される⼀⽅で、個としての強さと危うさの両⾯が⾒出されるような姿――“⾒る/⾒られる”という主体と客体の関係に収束しない、ただそこにあるということだけを頼りにしたイメージを提⽰する。彼⼥たちが誰のためでもない⾃分⾃⾝を率直に解釈して表現しようとするとき、それはどのように写真に現れ、写真はその⼀連の現象をどのように主導し、私たちの⽣に影響を与えるのだろうか。⽉⽇の中で、あのときあそこにいた彼⼥とそれを⾒ていた私は、毎⽇少しずつ古い過去になっていく。髪型が変わり、住まいが変わり、そして妻に、⺟になった⼈もいる。彼⼥たち⾃⾝でも、かつて写された⾃分の姿を、別⼈と⾒間違えることがあった。⾃分の完全な⾝体は、鏡像や写像でしか⾒ることしかできない。もっとも⾝近な他者は、⾃分⾃⾝なのだ。その⾝体は、⾃分があつかう対象でありながら、⾃分そのものでもある。写真の中の彼⼥たちは――両義的な不可視の⾝体で――⾃分⾃⾝へ、カメラの向こうの私へ、そして鑑賞者という⾒えない他者へ向かって、⾃⼰を表現している。そのイメージを媒介する写真に、私たちは彼⼥の肖像を、いかに⾒出すだろうか。

審査員のコメント

このシリーズでアーティストは、女性たちの日常の空間に入り込み、その姿を捉えている。

フォーマルなポートレートでありながら、被写体の顔は写されず、誰なのかは分からない。作品は匿名性と自己の概念を浮かび上がらせることを目的としている。本来、感情は顔の表情で表現されることが多いが、本作では体の動きや仕草がその役割を果たしている。

写真は洗練され、構図も美しく整えられているが、どこか神秘的で、抑えられた感情が漂い、観る者の興味を引きつける。

フォトグラファーは、この緊張感を巧みに演出し、匿名の女性たちの生活を探ることで、「ポートレート写真とは何か」という問いを投げかける、力強い作品を生み出している。

── Simon Edwards(サイモン・エドワーズ)
審査統括責任者/Salon de la Photoアートディレクター

私たちが知らないと分かっていることと、見ていながら見えていないものの間で—

村上賀子は、肖像芸術という古くからの表現を見事に再構築してみせる。

「それぞれの部屋」で撮影された36人の顔のない女性たち。

彼女たちは、日常という現実に絡め取られた女性の身体を通して、ありふれた日常の言葉を語っている。

何よりも、過剰な表象にあふれるこの時代に、作家は「自己像」という概念そのものに問いを投げかける。

彼女たちは一体誰を表しているのか?それは、撮影者自身であり、彼女たちを見つめるすべての人なのかもしれない。

── Cyrielle Gendron(シリエル・ジェンドロン) 『PHOTO』編集長

村上賀子の「Known Unknown」シリーズに触れると、まずその親密で繊細な空気感に引き込まれる。

隠された顔が生み出すのは、強く心を惹きつける謎。人物の表情ではなく、仕草や衣服、さらには家具までもが手がかりとなり、観る者の想像を掻き立てる。控えめでありながら意味深い演出は、日本文化の持つ抑制と奥深さを映し出している。このシリーズは、私たちが「他者を知っている」と思い込んでいること、そして決して手の届かないものについて問いかけてくる。どの写真も、満たされつつも新たな好奇心を呼び起こし、「本当の美しさとは、目に見えず、言葉にもならないものなのかもしれない」—そんな余韻を残してくれる。

── Damien Roué(ダミアン・ルエ) 『PHOTOTREND』編集長

長所と短所を併せ持つ人物の性格を、顔を見せずに表現することは可能だろうか?また、被写体の存在なしに、この状態をどのように捉えることができるのか?村上賀子はこの2つの問いに、才能と正確さと繊細さで答えている。私は特に、女性の身体の動きが周囲の環境と調和しているワイドショットを高く評価した。ここでは光が決定的な役割を果たし、あらゆるディテール、あらゆるものがシーンに貢献している。村上賀子の写真には自然さと穏やかな音楽性がある。

── Gérald Vidamment(ジェラルド・ヴィダムマン)
ジャーナリスト/作家/写真家/企業家 『Compétence Photo』編集長

正直なところ、このアプローチには少し戸惑いを感じた。すでに公の場から十分に排除されている女性たちの顔を、なぜ彼女たち自身のプライベートな空間の中でも隠してしまうのか?私の考えでは、それはかえって匿名性を強めてしまうように思える。本来、家庭とは彼女たちが最も「自分らしく」いられる場所のはず。だからこそ、私はその側面をもっと見たかった。

また、表現や技法の面でも、やや単純に感じられた。もう少し踏み込んだ探求があれば、より深みのある作品になったのではないだろうか。

── Gwénaëlle Fliti(グェナエル・フリティ)
『Fisheye』編集長/ジャーナリスト/フォトエディター

村上賀子は、家庭で日常を送る女性たちを顔を見せずに描くことで、彼女たちのありふれた生活の中に自らを溶け込ませている。まるで家具の一部のように—そこに存在しながらも目立たず、観察者でありながら覗き見ではない。それは、鏡や装飾品がそうであるように、ただ静かに、しかし確かにその場にいる存在なのだ。

── Stéphane Brasca(ステファン・ブラスカ) 『de l'air』創刊者兼ディレクター

村上賀子は、シンプルでありながら力強いスタイルで、日本の女性たちの家庭という親密な空間に入り込む。

彼女たちの日常的な動作は、それぞれの立場を物語るかのように、生活のリズムの中で繊細な舞を繰り広げる。

匿名性を巧みに操ることで、顔が見えないからこそ身体はより雄弁になり、彼女たちの心の内がより鮮明に浮かび上がる。

村上が描くのは、現代的でありながら時代を超えたポートレートの数々。

そしてその背後には、社会的な状況—それも普遍的なもの—すなわち、女性の立ち位置が静かに映し出されている。

── Léonor Matet(レオノール・マテ) 「Polka」図像学者

ZOOMS JAPAN 2025 WEB

Zooms Japan 2025・Les Zooms 2024 受賞作品レビュー 情報

CP+のセッション(ステージC)にて、「LES ZOOMS 2024」で“プレス賞”と“パブリック賞”を受賞した2名の作品と、「ZOOMS JAPAN 2025」の受賞作品を交えたインタビューを実施。登壇者への質問を受付中です。

開催日時

2025年2月27日(木)15:00〜15:40

受賞者

ZOOMS JAPAN 2025 グランプリ:村上賀子
LES ZOOMS 2024 パブリック賞:Omar Al Jiwari
LES ZOOMS 2024 プレス賞:Claire Guarry

モデレーター

河島えみ(ライター/「写真批評」編集者)

ZOOMS 2025の受賞者への質問受付

CP+2025 情報

CP+ 2025

開催日時

2025年2月27日(木)〜3月2日(日)10:00〜18:00
※最終日のみ17:00まで
※2月27日(木)10:00〜12:00はVIP・プレス・インフルエンサー入場時間

入場料

無料(事前登録制)

会場

  • パシフィコ横浜
  • WEB
  • 〒220-0012 神奈川県横浜市西区みなとみらい1-1-1
  • Google Map

行き方・アクセス

<電車>
みなとみらい線「みなとみらい駅」クイーンズスクエア連絡口、クイーンズスクエア2F通路直結
みなとみらい線「みなとみらい駅」2番出口から徒歩で5分
京浜東北・根岸線「桜木町駅」東口から徒歩で12分

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