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プロフィール
北岡稔章
フォトグラファー/シネマトグラファー 1986年生まれ、高知県出身。大阪で建築を学んだ後、ビジュアルアーツ大阪写真専門学校入学。卒業後スタジオエビス入社。退社後、独立。2022年に写真集『私は絵が描けない | Ican't draw a painting』を刊行。
愛用カメラ:FUJIFILM GFX 100ll、Leica R9
愛用レンズ:GF55mmF1.7 R WR、Leica Macro Elmarit R 60mm F2.8
“写真を描く” ことに“希望” を見出す—— 。『私は絵が描けない | I can't draw a painting』
プロジェクトは自分と向き合う大切な時間。
北岡稔章さん自身の幼少期の記憶が起点になっている『私は絵が描けない | I can't draw a painting』は、マクロレンズを用い、写真なのか絵画なのかを曖昧に、意図的に被写体を不鮮明に撮影するプロジェクト。撮影において、①ぼかす、②自由を得るために撮るものを限定し過ぎない、③にじますことをルール、としている。抽象画のような作品は見る側に想像力を委ね、「正解を探すことよりも重要なのは、“見たいものを想像する”こと。言うなればそれは、自分自身へフォーカスしていくことだと思います」と北岡さんは話す。
自分の見たいもの、伝えたいことは、掘り下げていくことで掴むことができる。
写真でしか見られない世界がある。その景色を自分以外の人にも共有したい。
「過去を振り返るということはあまりしてこなかったのですが、『私は絵が描けない | I can't draw a painting』を通して自分に向き合うことで、今までとは違う自分を発見できました。いつもタイトルは日本語で考え、その後に英語に翻訳するかどうかを考えます。『私は絵が描けない | I can't draw a painting』は、一人称を入れることでより自己にフォーカスした作品にしたいと思い、つけたタイトルです」。
満たされていないとき、新しい自分に出会いたいときにプロジェクトを生み出す。
小さなものを鮮明に写し出すマクロレンズを用い、あえてアレ、ブレ、ボケという“不鮮明” なイメージに落とし込む手法を用いた前作『Equally, beautiful』では、花を中心に撮影していた。その制作中、「自由を得るために写真を撮っていたはずが、自分で制限をつくることで自由を失っている」ことに気づいたという北岡さん。その想いから、今作の『私は絵が描けない | I can't draw a painting』は、被写体を花に限定せずに撮影していった。
「『Equally, beautiful』を刊行して数年が経ち、同じアプローチではなく、違う解釈での作品にしたいと考え撮影したのが『私は絵が描けない | I can't draw a painting』。絵を描きたくても上手く描けずに諦めていた、幼少期の自身の経験が起点になっています。抽象画を描くように、被写体をぼかすことで曖昧な輪郭、にじみ、色を撮る。絵が上手く描けなかったという悲しい記憶を、悲観ではなく撮ることで描き、プラスに変換することで、解釈や角度によってものの見方は何通りもの正解があるのだと、自身と向き合いながら前に進むということをしました。それは、このプロジェクトで表現したいことでもあり、伝えたいことでもあります」。
北岡さんは、満たされていないときや新しい自分に出会いたいときにプロジェクトを生み出すことが多く、「プロジェクトや写真は、生きるうえで必要な行為」とも話す。
「写真でしか見られない世界があり、その景色を自分以外の人にも共有したいという気持ちを常々持っています。そのためにも、僕にとってプロジェクトは欠かせないもの。ただ、それは僕にとってのプロジェクトであり、正解は各々が持っているものだと思います。自分が何を楽しみたいか、知りたいか、そして伝えたいかを掘り下げていくことで、自身が見たいものを掴んでいくことができるのだと考えています」。
PhotoBook 『私は絵が描けない | I can't draw a painting』
出版:applause books
GENIC vol.76 【私は絵が描けない | I can't draw a painting】
Edit:Chikako Kawamoto
GENIC vol.76
2025年10月号のテーマは「 撮ることのその先へ This is My Project.」
あなたは「何」を撮っていますか? 自分の表現を説明できますか?
タイトルをつけることができますか?
オリジナルのプロジェクトを持つことは、自分の写真を「言語化」すること。
1つの企画によってまとめられた作品群からは、“作家の声”が聞こえてきます。
あなたも、写真プロジェクトを始めませんか。
一歩進む。撮ることのその先へ。