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Let go and always be present. 手放して、いまを生きる。 Atsushi Sugimoto(ハワイ)|連載「写真家が選んだ、最高の旅先」第15回

どんな思考回路で「最高の旅先」を選ぶのか。人それぞれだからこそおもしろい。15名が選んだBest Destinationには、熱き想いとたくさんのストーリーが詰まっています。誰かの旅をなぞりながら、「いつか自分の目で」とウィッシュリストに書き加える。そんな楽しみ方をしてみてください。全15回の連載、最終回は光と静寂の間にある“感覚”を表現する作品で人々を魅了する写真家、Atsushi Sugimotoさんです。

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目次

プロフィール

Atsushi Sugimoto

写真家 1987年生まれ、大阪府出身、沖縄県と千葉県を拠点に活動。幼少期からスキー選手としてヨーロッパやカナダで過ごし、学生時代はカリフォルニアへ留学。その後、ハワイへの移住をきっかけに写真の世界とハワイの自然・文化に深く魅了される。現在は写真家としての活動を軸に、『Sea Bloom by SALT Creative Agency』というフォトグラファー・映像クリエイター向けのオンラインサロン/コミュニティを主宰。また、『SALT Weekend Gallery & Co.』として不定期にギャラリーを運営し、企業やブランドのアドバイザーとしても活動している。
愛用カメラ:Leica Q2/M11、Sony α7 IV/ZV-E1、BlackMagic Cinema Camera 6k Pro
愛用レンズ:FE 50mm F1.4 GM/FE 85mm F1.4 GM、 Sigma 14-24mm F2.8 DG DN/18-35mm F1.8 DC HSM

Let go and always be present. 手放して、いまを生きる。

「生きることと撮ることが、ひとつになる場所。」ハワイでは、写真が“生”に変わる。

「ハワイ島・ケアラケクアに滞在していたときのB&Bからの景色。ヤシの木越しの夕日。海と空と風の音。何も求めずに、ただ太陽が沈むのを眺めていた。その“無”の時間が、自分を癒してくれる」。

「クアベイで撮影した波のリズムと光の模様。自然は常に動いているけど、心は静かになっていく。“変化”は怖くない。波も、常に変わるから美しいと感じた瞬間」。

「娘とのドキュメンタリー映像の撮影で訪れた際に、インタビューしたヒロのビーチのウォーターマン。風と星で航海するホクレア号の乗組員でもあり、この家には世界中から船乗りたちが訪れる」。

この世界の奥に流れる何かを知りたくて、気づけば写真とハワイの両方にのめり込んだ

「学生時代、ハワイアンカフェを起業したときにスタッフと一緒に初めて訪れたハワイ。そのとき一眼レフで撮った写真の一枚一枚に、言葉にできない“何か”が宿っているのを感じました。あとで知ったのは、それがハワイアンの人々が大切に守り続けてきた“アロハスピリット”や“自然への敬意”という、目に見えない力だったということ。その瞬間から、この世界の奥に流れる何かを知りたくて、気づけば写真とハワイの両方にのめり込んでいきました。ハワイを撮り続けて15年。いつの間にか僕にとってハワイは、“心の鏡”のような存在になっていました。そのとき自分がどんな心の状態で生きているのか。ハワイの風や光は、いつも静かにそれを映し出してくれます。ハワイ島に立つとまず感じるのは、圧倒的な“生命の始まり”。黒い溶岩の大地、息づく火山、星空に響く風。この島には、『生まれ変わる』ということの意味が、日常の中に息づいています。自然はいつも破壊と再生を繰り返し、人間の時間を遥かに超えて存在している。ハワイの地に立つと、自分の中の小さな迷いや焦りが静かにほどけていきます。ハワイ島は、西と東、ふたつの世界が共存する島です。まるでひとつの惑星の中にふたつの宇宙があるよう。乾いた光が降り注ぐ西側のコナと、霧と雨に包まれる東側のヒロ。同じ島でありながら、空気も時間もまったく違う。そのコントラストが、この島の力強さであり、魅力のひとつだと思います。写真というツールを通して、“写す”こと以上に、自分の内側が見えてくる瞬間がある。光を探す旅のようでいて、実は自分の心の奥を照らしているような感覚です。一枚の写真を撮るたびに、世界の見え方だけでなく、自分自身も少しずつ変化していく。だから、写真は記録ではなく『対話』。この島を撮るたびに、僕は少しずつ“どんな光で生きたいのか”の答えを教えられている気がします」。

「マウナケア山麓で見ることができた、月の光で現れた虹 ─Moonbow(月虹)。ただの風景ではなく“目の前にある奇跡”を見ている感覚」。

「この島では、自然が“生きている”ことを全身で感じる。火山が息づき、溶岩が海へと流れ、夜空の星々が無音の音楽のように瞬く。その前に立つと、自分という存在が試される。何を大切に生きているのか、何のために撮るのか。ハワイ島はいつも、僕に問いかけてくる」。

この島の景色は、撮るものではなく、“共に在る”ことで心に刻まれていく。波の音や、遠くの鳥の声、雲の流れの速さまでもが、自分の中に残る“ひとつの写真”になる

「カララウ・バレーという聖なる場所で、夕日の光が斜面を照らす瞬間。雲がやってきて光がストップし、また射し込む。その呼吸。カララウの谷は、時間の概念が溶けていく場所だ。深い渓谷の奥に吹く風は、人間の営みよりもはるかに古いリズムで生きている。そこに立つと、撮るというよりも、“この瞬間に立ち会わせてもらっている”と感じる。“Let go and always be present.”このテーマを体現している一枚」。

「カウアイ島のプリンスビル。雨上がりのフィールドで草を食べる馬を見ていると、人の時間ではなく、自然の時間で生きる美しさを感じる。急がず、ただそこにある命のリズム。ハワイに来て“スローであることの強さ”を知った」。

「カウアイ島・ワイメアのオールドタウンの一角にある昔ながらのジェネラルストア。観光では見えない“日常のハワイ”のワンシーン。この景色の中に、自分の生活の延長があると感じた。時が止まっているようで、目を閉じると人々の営みが見えてくる感覚。“旅=非日常”ではなく、“旅=暮らしの再発見”だと思う」。

ハワイでシャッターを切るたびに、“生きること”と“撮ること”の境界が消えていく

「カウアイ島は“記憶の奥にある優しさ”のような島。雨が多く、緑が深く、空気に湿度がある。この島では時間がゆっくりと滲んでいき、自然と人、そして心が溶け合う瞬間が日常の中にあります。そんな空気の中で感じるのが、アロハスピリットと呼ばれる、ハワイの人たちが守り続けてきた心の在り方。それは派手な言葉でも、形式的な挨拶でもなく、“思いやり”や“分かち合う心”が、日々の中に自然に息づいているということ。変わりゆく世界の中で、それだけは決して揺るがない。島の人たちの穏やかな眼差しの中に、その静かな強さを感じます。 誰かが微笑むと、隣の人も自然に微笑む。風の匂いのように、優しさがこの島全体を包み込んでいる。ハワイ島が“生命の原点”だとすれば、カウアイ島は“心の帰り道”のような場所。そのふたつを行き来するたびに、自分の中の軸が、少しずつニュートラルな場所に戻っていくのを感じます。このふたつの島には『また行きたい』と思うというよりも、自然とここに戻ってくるという感覚。理由を探す必要もなく、潮の満ち引きのように、気づけばこの島に立っている。特別な目的があるわけではなく、ただ“今”を感じに行くために。この場所に来るたび、手放し、また新しい自分に出会う。“Let go and always be present.”その言葉の意味を、この島はいつも思い出させてくれます。写真を撮るという行為は、光と心の対話。だからこそ、ハワイでシャッターを切るたびに、“生きること”と“撮ること”の境界が消えていく。アロハの心に包まれながら、僕は今日もただ、この瞬間の光と共に、そこにいる」。

GENIC vol.77【Best Destination 写真家が選んだ、最高の旅先】
Edit:Izumi Hashimoto

GENIC vol.77

2026年1月号のテーマは「写真家が選んだ、最高の旅先」
どんな旅をしたらいい?
その答えは、As you like. お好きなように、自分らしく。ルートを持たない余白たっぷりの旅でも。行先を詰め込んだ時間割びっしりな旅でも。
だって、旅は表現だから。
さて、旅人でもある写真家たちが選んだ「最高の旅先」はどこでしょうか?何かがあなたの心を撫でたなら、そこは次の目的地かもしれません。
永久保存版、GENICらしい、新しい旅のガイドブックの登場です。
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