目次
プロフィール

井手裕介
1992年生まれ。編集者としての活動と並行し、カメラを通した記録・知覚の探求に取り組む。
カメラという機械を通してイメージを記録する歓びや驚きを共有したいと思っています。
ぜひご覧いただけると嬉しいです。
展示作品の一部とステートメント

焦点距離が固定されたレンズの絞りとシャッター速度を、ダイヤルを回して設定し、反転した像をピントグラスでじっと見て合焦。引き蓋を引いて、シャッター幕をガシャン、とおろす。すると機械が設定した通りの露光量で、像がネガフィルムに記録される。そこでは“自分にはこう世界が見えている”という主観は一度排除される。どちらかというと、 “世界をこういう設定でドキュメントしようとした”というデータが焼き付くだけだ。その記録のされ方が、儀式めいた撮影行為の時間を含めて、妙な安心感をもたらしてくれた。フィルムを現像し、そこに像が写っていることに素直に感動した(なお、最初に購入したカメラは蛇腹に穴が空いていて、向きによってはふわりと光がイメージを曝露していた。そのことが、写真の原理をシンプルに理解させてくれて、自分の行為に手触りを感じたことも添えておく)。
暗室でネガからプリントを焼き込む時間は、また違った感慨をもたらしてくれる。「ネガは楽譜、プリントは演奏」とは写真教育の最初に教わるようなクリシェだが、プリントは自分で濃度や色味などをコントロールすることができる。そこで初めて、撮影した時のことを思い出しながら、こんなふうだったかな。と記憶を再現してみる。多分、現実とは少しずれているのだろう。でもその“現実”もまた、撮影時の自分という不確かな存在の眼球を通して脳が記憶したものであって、掴もうとしたところで叶わない。
目視で、カメラのピントグラス越しに、そして暗室でルーペを使って。何度もイメージをじっと見る。引き伸ばされたプリントの束が印画紙の箱に詰まっていく。そうやって、自分の記憶が一旦は定着していくことに、安堵する。
世界との距離に思いを巡らし、試行錯誤する時間を楽しめるようになったことは、撮影行為が自分に与えてくれたギフトだと思う。









井手裕介 写真展「distance」情報
開催日時
2025年9月5日(金)〜9月15日(月・祝) 12:00〜18:00
定休日:火・水曜
※9月5日(金)は、17:30まで
作家在廊予定
2025年9月5日(金)〜7日(日)、9月13日(土)〜15日(月・祝)
入場料
無料
会場

HIKE
- 〒153-0043 東京都目黒区東山1-10-11
- Google Map
行き方・アクセス
<電車>
東京メトロ日比谷線、東急東横線「中目黒駅」から徒歩で12分
東急田園都市線「池尻大橋駅」から徒歩で12分
トークイベント情報
写真集に寄稿した写真家 鈴木理策を招いてのトークイベント。普段編集者として活動する井手裕介が、インタビュアーを務める「公開取材」形式で実施されます。

鈴木理策
1963年和歌山県生まれ。2000年に写真集『Piles of Time』で第25回木村伊兵衛写真賞受賞。2010年に、1963年生まれの日本人写真家や批評家数名とともに「写真分離派」を設立。東京藝術大学美術学部先端芸術表現科教授。
開催日時
2025年9月5日(金)〜9月15日(月・祝) 18:30〜19:30(開場18:10)
参加費
無料
※予約不要
※当日の状況により立ち見や人数制限となる場合があります
井手裕介 写真集 「distance」情報
仕様:ハードカバー/私家版
ページ数:112ページ
写真:井手裕介
デザイン:Xiaojun Shi
テキスト:鈴木理策
プリンティングディレクター:Yin He