伊藤博晃
研究者/写真家 1982年生まれ、北海道出身、神奈川県横浜市在住。北海道大学大学院文学研究科博士後期課程単位修得退学。博士(文学)。同大学院専門研究員、動画編集者、ブライダルフォトグラファーなどを経て、現在は神奈川大学人間科学部非常勤助手。専門は顔表情認知の認知心理学。
愛用カメラ:LeicaQ2、Canon EOS R
愛用レンズ:EF35mm F1.4L II USM/RF24-105mm F4 L IS USM
わたしにとっての「神奈川・横浜」
「どこをふらりと散歩しても、面白みや発見があります。ちょうど良い広さなので、軽めに散歩すると1万歩くらいになります。急な坂道もあるので運動強度の調整も可能です。とても健康的です。風が強い日は、海が見えなくても潮の匂いが感じられます」。
パッチワークのような街で
横浜中華街関帝廟通りの西口「地久門という色鮮やかな牌楼と青空が対比するように撮影しました」。
「横浜赤レンガ倉庫は横長の大きな建物ですが、真横から見るとコンパクトで、サザエさんのエンディングに出てくる家のような可愛らしさがあります」。
自分が行った場所や見た景色を思い出せるように
野毛都橋商店街「ハマのハーモニカ横丁と呼ばれる、昭和レトロな雰囲気が漂う飲み屋街。独特な湾曲したビルが、あたかも永遠に続いているかのように見えるよう撮影しました」。
みなとみらい歩道橋「横浜アンパンマンこどもミュージアムの前に佇む巨大なアンパンマンとタワーマンション群」。
元町近くの路地「緑豊かで閑静な住宅街が、賑やかな中華街の近くにあるというのも横浜っぽいです」。
横浜に住み始めて3年。「地元から離れて初めて住んだ未知なる土地です。詳しくなろうとせっせと勉強したり散策したりしています。横浜は、坂の多い歴史のある港町で、独立して存在していそうな要素がパッチワークのように繋ぎ合わさっている、という印象です。巨大でモダンな建築と歴史ある建築、近代的なショッピングモールとレトロな商店街と中華街、大きな広場と狭い路地など、相反しそうな要素が共存しているところが、横浜らしさだと思っています。通勤前にふらりと通過する場所や建物を撮影することが多いのですが、同じような道を通るので、その度にちょっと違うルートを通ってみたりして、新しい画角を開拓しています」。
見る人の注意や感情を揺さぶらない、ちょっと心地よい写真を撮りたい
山下公園の最奥にある世界の広場「2名のスーツ姿っぽい人が同じ歩調で歩いている光景。ニューヨークのセントラル・パークのような雰囲気の場所が、横浜には点在しているような気がします」。
象の鼻パークの入口「雪を纏って、朝の光に照らされた青い象“ペリコ”の像たち」。
伊藤さんは横浜を撮る写真に、どのように「自分らしさ」を投影しているのでしょうか?「のんびりとした平和な世界を表現しつつ、認知的負荷の少ない、見る人の注意や感情を揺さぶらない、ちょっとだけ心地よい写真を目指しています。そのために、知覚的に心地のよい構図で、コントラストを抑え気味にし、あっさりとした淡く透明感のある色合いにしています。また、遠くにいる道行く人々や鳥など、不規則なものに規則性が現れた写真が撮れたときに喜びを感じます。意図せず、ユーモアのあるものや微笑ましいもの、意外なものなどが写り込んでいたときも、とても嬉しいですね」。
独立して存在していそうな要素が繋ぎ合わさっているのが横浜らしさ
桜木町からランドマークタワーに向かうデッキ「さくら通りの奥に、みなとみらいの象徴的なヨコハマグランドインターコンチネンタルホテルと大観覧車のコスモクロック21が聳え立っています。通勤時に多くの人が目にする光景かと思います」。
白楽駅近くの路地「昭和レトロなお店と今風のおしゃれなお店が共存する、独特の雰囲気を醸し出す場所です」。
ハンマーヘッドパーク「海と夏の雲、2隻の船がループしているかのようにトリミング。奥に横浜ベイブリッジが佇んでいます」。
GENIC vol.63 【わが街の道の上で】
GENIC vol.63
GENIC7月号のテーマは「Street Photography」。
ただの一瞬だって同じシーンはやってこない。切り取るのは瞬間の物語。人々の息吹を感じる雑踏、昨日の余韻が薫る路地、光と影が落としたアート、行き交う人が生み出すドラマ…。想像力を掻き立てるストリートフォトグラフィーと、撮り手の想いをお届けします。