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【わが街の道の上で:2】平井裕士<大阪>

玄関のドアをあければ、そこは被写体の宝庫。毎日通る道、慣れ親しんだ場所。そこには、自分の視点だからこそ写し出せる「何か」がきっとある。地元フォトグラファーの写真から、ファインダーを通して自分の街を愛する方法を学びます。
2人目は、大阪府出身、在住で大阪の観光地撮影も行っているフォトグラファー、平井裕士さんです。

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平井裕士

フォトグラファー 1986年生まれ、大阪府出身、在住。写真歴11年。2016年に写真をもっと楽しくするメディア「RECO」にフォトグラファーとして参加したことをきっかけに、訪日観光客を意識した大阪の観光地撮影を開始。日常の何気ない風景も撮影している。
愛用カメラ:FUJIFILM X100V、 FUJIFILM X-T3
愛用レンズ:フジノンレンズ XF35mmF1.4 R/フジノンレンズ XF56mmF1.2 R APD

わたしにとっての「大阪」

「ボクにとって大阪は、日常であり非日常でもある、ずっと飽きない不思議な場所です。毎日歩く道も日によって様子は変わりますが、大阪は人がたくさんいてそういう変化に出会う確率が高い街なので、歩いているだけで楽しくなります」。

歩いているだけで楽しくなれる街

「赤い車とピンク色の壁や、車が背中合わせで停まっている様子がなんかいいなと思って。お互いの車の所有者が知り合いじゃなかったら大変だろうなと勝手に想像して心配しました」。

「冬の日の夕方、クリーニング屋の灯りに導かれるように前を通り中をチラッと覗いてみると、お店のおばちゃんがとても気持ち良さそうに眠っていて。じっくり眺めるとクリーニング屋だとわかる要素が散りばめられているおもしろい写真です」。

「街の風景の撮影は、事実をベースに自分だけの物語を紡ぐことができるところに面白さがあると考えています。例えば上のクリーニング屋の写真だと、“年末が近くて昼間は多くのお客さんが来て1日の疲れもあって、あたたかい店内で思わず眠ってしまったんだろうな”というように。撮った後も余韻に浸れるような写真はなかなか撮れないけれど、だからこそ愛着が湧くんだと思います」。

決定的な瞬間に出会いたいというより見過ごされそうだけど魅力的な場面に惹かれる

「年度末になると難波や心斎橋で工事に遭遇することが多いです。作業をする人の姿を撮るのも好きだけど、これはその風景を見守る人を撮影した1枚。写真を見る人が工事風景を想像して楽しんでもらえたら嬉しいです」。

「遠くへ行かなくても、身の回りに素敵な風景が存在することを再認識した写真です」。

街を撮るときのテーマは?「目の前にある風景をそのまま撮ること、です。使用するレンズも人間の視界に近い焦点距離を選んでいます。いくつかの視点からファインダーを覗きながら、一番魅力的だと感じる角度や距離感を探している時間が好きです。ボクにだけ見せてくれるような表情を見つけられたときが嬉しいですね。誰かの生活を感じるようなものを被写体にすることも多いのですが、基準は“なんかいいな”と思ったもの。人それぞれ違うと思うけれど、例えばボクは道端に置いてある植木鉢をよく撮ります。綺麗に手入れされているものもあれば、朽ちて倒れているものもある。そこに暮らす人を表しているようで、なんかいいな、と感じるんです。決定的な瞬間に出会いたいというより、見過ごされそうだけど魅力を感じるシーンに惹かれます」。

目の前のシーンをそのまま撮りたいから、レンズも人間の視界に近い焦点距離で

「かつては人混みが当たり前だった“えべっさん”の神社の入口で。この空間で偶然出会うことがどれほど特別なことかわかっていても、お互いに話をすることなくそれぞれの世界を生きていて良いのかを考えてしまった1枚」。

「早朝の光が好きなので朝に写真を撮ることが多く、この日はショーウィンドウのマネキンに誘われて。影の長さと方向を常に意識しながら歩いているので、自分の影を写すことも多いです」。

平井裕士(@yuji87) Instagram
平井裕士(@__yujihirai) Instagram

GENIC vol.63 【わが街の道の上で】

GENIC vol.63

GENIC7月号のテーマは「Street Photography」。
ただの一瞬だって同じシーンはやってこない。切り取るのは瞬間の物語。人々の息吹を感じる雑踏、昨日の余韻が薫る路地、光と影が落としたアート、行き交う人が生み出すドラマ…。想像力を掻き立てるストリートフォトグラフィーと、撮り手の想いをお届けします。

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