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なぜモノクロなのか/古屋呂敏のFocal Length Vol.36

古屋呂敏<連載コラム>第3月曜日更新

その瞬間を永遠にしたいと願いながら、シャッターを切る。
心の揺れるままに、心の色のままに。
自分だけに見えていたその一瞬の世界は、
写真に残すことでさらに愛しく想えるものになる。
だから僕は、きっと永遠に写真を撮り続ける。

───俳優、カメラマンとして活躍する古屋呂敏の「Focal Length」。
連載を通して、写真だけではなく、
人との距離感、 生きるスタンスなど
さまざまな「焦点距離」をお届けします。
【撮影&テキスト:古屋呂敏 撮影機材:Nikon Z8】

Data

  • 作成日:

Focal Length
今回のテーマは「なぜモノクロなのか」。

僕が去年発表した作品「MY FOCAL LENGTH」のイメージもあるのかもしれない。

“MY FOCAL LENGTH”

「どうしてモノクロで撮るんですか?」

古屋呂敏(ロビン)がNikon Z8で撮影した写真 作例

Z8 +NIKKOR Z 24-120mm f/4 S
モノクローム

古屋呂敏(ロビン)がNikon Z8で撮影した写真 作例

Z8 +NIKKOR Z 24-120mm f/4 S
モノクローム

カメラが好きなことを知ってくださっている方から、時々そんな質問をいただく。

正直に言うと、僕自身も「これが理由です」と一言で説明することができない。
もう少し細かく言うと、質問された時期で返答が変わることがある。

だから今の気分はそうなんだと思っていただけたら嬉しい。

今は、どうしてもモノクロで撮りたくなる瞬間がある。

古屋呂敏(ロビン)がNikon Z8で撮影した写真 作例

Z8 +NIKKOR Z 24-120mm f/4 S
モノクローム

古屋呂敏(ロビン)がNikon Z8で撮影した写真 作例

Z8 +NIKKOR Z 24-120mm f/4 S
モノクローム

写真が生まれた頃、カメラは今のように色を写すことができなかった。

たくさんの技術者たちの時間や努力によって、僕たちは驚くほど鮮やかな色を写真として残すことができるようになった。
カメラメーカーによって色の表現も違う。
鮮やかさ、階調、肌の色、青の深さ、緑の美しさ。

それぞれのメーカーが、それぞれの思想を持って「色」を追求している。

そう考えると、せっかく進化したカラーという表現を捨てて、モノクロで撮ることは、彼らの努力に対する冒涜なのかもしれない。

それでも僕は、モノクロが好きだ。
むしろ、カラーを知っているからこそ、モノクロに惹かれるのかもしれない。

先日、作品の合間に少し時間ができた。

飛ぶように、という言葉があるけれど、本当に飛んでハワイに帰った。
久しぶりに一日、仕事のことを考えずにカメラを持って島をふらふらした。

まだ外が暗いうちに車を出す。
東へ向かって車を走らせる。
少しずつ空が明るくなっていく。

古屋呂敏(ロビン)がNikon Z8で撮影した写真 作例

Z8 +NIKKOR Z 24-120mm f/4 S
モノクローム

古屋呂敏(ロビン)がNikon Z8で撮影した写真 作例

Z8 +NIKKOR Z 24-120mm f/4 S
モノクローム

ハワイといえば、青い海、青い空、緑のヤシの木。
色そのものが、この場所の魅力のひとつ。
そんな場所なのに、運転をしながらふと思った。

今日の写真は全部モノクロにしよう

せっかくハワイにいるのに。
青い海も、青い空も、緑の木々も全部、色をなくしてしまう。

一見、ハワイとは正反対の選択。
でも、だからこそやってみたかった。

モノクロにすると、当たり前だけれど「色」という情報がなくなる。
すると不思議なことに、今まで色に隠れていたものが見えてくる。







質感

例えば、同じヤシの木を撮っても、カラーだとどうしてもハワイのヤシの木として見えてしまう。
が、モノクロにすると、その木のシルエットや風に揺れる葉の形そのものが強く見えてくる。

古屋呂敏(ロビン)がNikon Z8で撮影した写真 作例

Z8 +NIKKOR Z 24-120mm f/4 S
モノクローム

Z8 +NIKKOR Z 24-120mm f/4 S
モノクローム

海もそう。
青い海という情報がなくなると、波が光を反射する瞬間や、水平線の向こう側にある空気まで写したくなる。

色をなくすことで、見えるものが増える。
それが、僕にとってのモノクロの不思議なところだ。

古屋呂敏(ロビン)がNikon Z8で撮影した写真 作例

Z8 +NIKKOR Z 24-120mm f/4 S
モノクローム

古屋呂敏(ロビン)がNikon Z8で撮影した写真 作例

Z8 +NIKKOR Z 24-120mm f/4 S
モノクローム

Z8 +NIKKOR Z 24-120mm f/4 S

そしてもうひとつ、モノクロには「余白」があると思っている。

カラー写真には、色によってある程度の答えが存在する

赤なら赤
青なら青
緑なら緑

その色が持つ印象や意味が、見る人の中に自然と入ってくる。

モノクロになると、その情報がひとつ減る。
写真がすべてを説明しなくなる。

その「説明しすぎない感じ」が好きなのかもしれない。

古屋呂敏(ロビン)がNikon Z8で撮影した写真 作例

Z8 +NIKKOR Z 24-120mm f/4 S
モノクローム

古屋呂敏(ロビン)がNikon Z8で撮影した写真 作例

Z8 +NIKKOR Z 24-120mm f/4 S
モノクローム

もちろん、カラーにも感情はある。

モノクロにすると、現実そのものから少しだけ離れることができる。
目の前にある景色を、そのまま記録するのではなく、自分の記憶の中にある景色に近づけられるような感覚。

「あの日の海は青かった」と思い出すより、
「あの日の海を見ていた自分は、こんな気持ちだった」
という感覚のほうが強く残っていることがある。

モノクロは、そういう曖昧な記憶に近い気がする。

カメラの設定をひとつ変えるだけなのに、世界との距離が変わる。

同じ景色なのに、違う世界に見える。
ハワイで一日中カメラを持って歩いていて、改めて思った。

青い海を青いまま撮ることもできる。

Z8 +NIKKOR Z 24-120mm f/4 S
モノクローム

Z8 +NIKKOR Z 24-120mm f/4 S
モノクローム

でも、その海をモノクロで見ることで、自分にしか見えていなかった何かが見つかるかもしれない。
それは、写真を撮るというより、自分自身の見方を確かめる作業に近い。

だから僕は、モノクロで撮る。

世界から色を奪いたいわけではない。

色の向こう側にあるものを見てみたいから。

もしかすると、モノクロが好きな理由を、僕はまだちゃんと言葉にできていない。

Z8 +NIKKOR Z 24-120mm f/4 S
モノクローム

Z8 +NIKKOR Z 24-120mm f/4 S
モノクローム

言葉にできないからこそ、写真にしているのかもしれない。

写真の中に残るのは「ハワイ」という場所だけではなく、その場所にいた、その時の自分自身だったりする。

今自分は何を思って、どう感じているんだろう。
自分の撮った写真を見ながら青い空を眺めている。

Z8 +NIKKOR Z 24-120mm f/4 S
モノクローム

Z8 +NIKKOR Z 24-120mm f/4 S
モノクローム

プロフィール

古屋呂敏

俳優・フォトグラファー 1990年、京都生まれ滋賀/ハワイ育ち。2016年より独学でカメラを始める。Nikon Zf、Z8を愛用。父はハワイ島出身の日系アメリカ人、母は日本人。MBS/TBS「恋をするなら二度目が上等」(2024年)などに出演。俳優のみならず、フォトグラファー、映像クリエイターROBIN FURUYAとしても活動。2022年には初の写真展「reflection(リフレクション)」、2023年9月には第2回写真展「LoveWind」、2025年6月、ニコンプラザ東京 THE GALLERY、2025年7月、ニコンプラザ大阪 THE GALLERYにて、写真展「MY FOCAL LENGTH」を開催。写真集に『MY FOCAL LENGTH』(ミツバチワークス)がある。

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