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プロフィール

嵐田大志
フォトグラファー 1977年生まれ、大阪府出身。東京を拠点に、家族写真やスナップなどを中心に撮影。
国内のみならず、海外のメディアにも写真を提供。著書『デジタルでフィルムを再現したい』、『カメラじゃなく、写真の話をしよう』(ともに玄光社)が発売中。
愛用カメラ:EOS R シリーズ、Nikon Zシリーズ、iPhone など多数
愛用レンズ:Pentax Super-Takumar 55mm F1.8 など多数
都市が見せた瞬間-CITYSCAPE MOMENTS
変わりゆく街並み 嵐田大志

「展望台から撮った2011年の東京。地方出身者の自分にとって東京タワーとその周辺の景色は、大都会東京そのもの。近年、都市の再開発が進んでいるため、同じ場所から写真を撮っても大分様相が変わっているかと思います」。
自然と都市光景の調和を撮るのが僕のスタイル。絶えず変わりゆく世界を忘れないための記録

「代々木公園周辺の並木道を見下ろした1枚。都心部にもかかわらず、緑が豊かで、気持ちが安らぐ眺めでした。自然と都市が調和した都市光景という今の自分のスタイルが確立しつつあるときに撮った写真」。
嵐田さんにとって、ずばり写真とは?「絶えず変わりゆく世界を忘れないための記録です」。

「自然の要素は少ないですが、心地の良い青空がギスギスした都会の空気感を和らげているように思いました。繁華街・新宿は苦手ですが、日中の青空の下のそれは意外なほどにやさしく、どこか懐かしい印象がありました」。
「僕は予め場所を決めて撮りに行くことはしません。撮影機材もミニマルで、手ぶら+iPhoneで撮影することも多いです。何も決めずに街中を歩きまわって、自分のアンテナが反応するがままに撮っています。強いて言えば、高層ビルの展望台にのぼることは多いかな、というくらい。人々の動きにクローズアップした、都会の営みがそのまま生々しく見える写真よりも、少し距離をとって都市を模型っぽく捉えるのが好きだからです」。
自宅の壁に飾ったとき、意識が向かない『窓の風景のような写真』が理想

「恵比寿ガーデンプレイスから空を見上げると、モニュメントにとまっている鳩と飛行機が。両者ともに空を飛べる存在でありながら、対照的な様子が気になる眺めでした。情報量を間引いてミニマルに撮った気に入っている1枚」。
「自宅の壁に飾ったとき、あまり意識が向かない『窓の風景のような写真』が理想なので、人の営みを感じない距離感とフレーミングを重要視しています。ソリッドでかっこいい都会の写真というよりは、少し自然も感じられるやさしい写真を目指していて、緑や青空が都市光景と調和しているようなシーンでシャッターを切りたくなります。僕はいわゆる決定的瞬間のような写真はほとんど撮りませんが、街中の景色はどんどんと変化していて、たとえ1秒を争うような瞬間でなくても、その時にしか撮れないものだと思っています。ファインダーをのぞきながら、今まさに過去になっている瞬間を撮っている感覚。そういったアプローチもあってか、最近の写真であるにもかかわらず、ご覧いただいた方から懐かしさのようなものを感じていただくことがあります」。

「2016年当時、自宅から新宿方面を、普段は滅多にしない多重露光で撮影。今は別の場所に引越しましたが、ずっと大切な景色であり続けると思います」。
GENIC vol.72【都市が見せた瞬間-CITYSCAPE MOMENTS】
Edit:Megumi Toyosawa
GENIC vol.72

9月6日発売、GENIC10月号の特集は「Landscapes 私の眺め」。
「風景」を広義に捉えた、ランドスケープ号。自然がつくり出した美しい景色、心をつかまれる地元の情景、都会の景観、いつも視界の中にある暮らしの場面まで。大きな風景も、小さな景色も。すべて「私の眺め」です。