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「Q.3 人を撮るときに大切な3つの心得とは?」藤代冥砂|Portrait Q&A 3/45

写真家や俳優、モデルなど41名が答えた、全45問のPortrait Q&A特集。人にカメラを向けるからこそ、迷いはなくしたい。自分の写真をちゃんと好きでいたい。そのためにどうするか?「ポートレートの答え」はここにあります。
今回の回答者は、長きにわたりポートレートと向き合ってきた、フォトグラファーの藤代冥砂さんです。

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目次

プロフィール

藤代冥砂

フォトグラファー 1967年生まれ、千葉県出身。人物、聖地、旅、自然をメインにエンターテインメントとアートを横断した作品を発表。写真集に『ライドライドライド』、妻の田辺あゆみを撮った『もう、家に帰ろう』、北海道から沖縄まで全国を巡って産前産後の家族の姿を撮影した『NOW & THEN』など。「新潮ムック 月刊シリーズ」で第34回講談社出版文化賞写真賞受賞。

Q. 人を撮るときに大切な3つの心得とは?

ポートレートとは、被写体の正面から中心へと向かう眼差し

「僕にとってポートレートを撮るということは、“被写体の正面から中心へと向かう眼差し”のことだと言えます。まず人物と正面から向かい合い、次に、その人の中心に辿り着こうとしているのです。僕たちは、日々の暮らしの中で、それぞれの役割を生きています。生まれ育った環境やそのとき限りの諸条件などの影響を受けて、“適応”しながら生きています。でも実は、僕たちの中心には、適応する以前の“個性”が住んでいます。僕は、その中心へと向かうようにしてシャッターを切っていきます。中心は本質と言い換えるのにはちょっとした抵抗があり、また向かうというのは相手を探ることでもありません。“INTO THE CORE”と英語で書くとしっくりくる感じのものです。では実際にどうやっているのか、その心得の部分が、ここにあげる3つです」。

A. 日常を丁寧に健康的に生きる

「写真を撮っている人が悪い人で、写真だけいい写真にはなれないだろうなって思います。嘘をしてもほころびが絶対出るから、そんな面倒なことをするよりも、いつ見せても恥ずかしくない自分でいられるよう普段から整えておく。そして、無理はせず、素のままの自分を撮影現場に持ち込むようにしています。これは、曇りなき眼を持ち続ける・取り戻すためにも大切なことです。僕は日頃からフィジカルなコンディショニングをすごく大切にしていて、自分の状態を整えるために呼吸を意識したり、坐禅をしたりもしています。コンディションを整えるためには努力が必要で、一人の時間を持つこと、気持ちの落ち着く場所に行くこと、きれいなものを見ることもおすすめです」。

A. 欲を捨て一体となる

「『無我』という言葉がありますよね。これは文字通り、我を無くす、自分を無くすということですが、実はポートレート撮影においてメンタル面での最重要ポイントのひとつが、これだと僕は考えています。自分らしい作品を撮りたいというエゴや欲望から離れると、被写体の実態がクリアに見え、そして感じられます。そして、純粋に、無我夢中で被写体を追従していく先には被写体との一体感があります。そうして出来上がったポートレート写真には、技巧によって建築された個性的な写真とは異なるよさがあり、コピーもされづらく、また、言葉を超えた領域で人に感動を与えることができるものとなります」。

A. 曇りなき眼を持ち続ける

「僕の大好きな映画『もののけ姫』の中で、アシタカが口にする『曇りなき眼(まなこ)』という言葉を、僕は暮らしの中で大切にしています。何にも寄りかからずに、曇りなき透き通った目で物事を見る。僕がこのシンプルな言葉に惹かれるのは、そういう目を持つことが簡単ではないと知りつつ、だけども持っていたい、という憧れがあるからです。僕たちは、経験を通して知恵を身につけていく一方で、思い込みやちょっとした偏見も蓄積していきます。でも、それでは被写体のことが見えなくなってしまう。被写体の中心に進んでいくための曇りなき眼、すなわち曇りなき心を、持ち続ける、もしくは取り戻すことが大切です」。

GENIC vol.73【Portrait Q&A】Q. 人を撮るときに大切な3つの心得とは?
Edit:Chikako Kawamoto

GENIC vol.73

2025年1月号の特集は「Portrait Q&A」。ポートレートの答えはここにある

人にカメラを向けるからこそ、迷いはなくしたい。自分の写真をちゃんと好きでいたい。そのためにどうするか?「答え」はここにあります。写真家や俳優、モデルなど41名が答えた、全45問のQ&A特集です。

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