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台湾の街角にて 水島貴大

スナップ撮影という手法で、街で出会った見知らぬ人々を撮り続ける3人の写真家たち。目の前にある真実を自分なりに切り取りながら、そこに写る人の人生を浮き彫りにする。撮り手である彼らが伝えたいことは、何なのか?それぞれの想いに迫ります。
「街で出会った人を撮る」2人目は、台湾と東京の2拠点をベースに活動する写真家、水島貴大さんです。

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台湾の街角にて

台湾の街は、人々が今日を生きるエネルギーに溢れている

台湾のさまざまな街を巡って撮影。「花蓮の海岸で寝そべって談笑していた女子学生たち。石の上に寝転んでいるのに、たくさんのゴミ袋の上に寝ているように見える不思議な一枚」。

「夜の公園を散歩していた親子。すれ違った時に撮りたいと強く感じながらも声に出せず、彼らの背中を見つめていた。女の子がなぜか振り返って私の方をじっと見て、すべてを見透かされたように鳥肌が立ったのを覚えている」。

「台湾に移住したのは、2020年の冬。それ以前にも何度か台湾へ行く機会があり、『街とそこに生きる人』という僕自身の撮影テーマに強く共振するものを感じていました。台湾の街中は、生活の活気と人々が今日を生きるエネルギーに溢れています。でも、自分自身もそこで暮らしてこそ『街とそこに生きる人』の作品になり得るという思いがあったため、日本と台湾を行き来しながら撮影する気にはなれませんでした。その後たまたま台湾のワーキングホリデービザのことを年齢制限の2ヶ月前に知り、これは何か運命だと思って移住に至り、台湾の人々を撮影しています」。

‟その人が「そこに生きている」と感じた時にカメラを向けたくなる。”

「おじいさんに声を掛けたらおばあさんも出てきて、おじいさんを撮りつつおばあさんもフレーミング」。

「彼らを見た瞬間、ズッコケ三人組を思い出した。すごくキュートな彼らにいてもたってもいられず、声を掛けて撮影」。

「新北の街の店で、刺青の男性と水槽のアロワナに惹かれて撮影交渉。なんで撮りたいんだと聞かれ、とにかくかっこいいからです、と返答。奥さんらしき女性が奥から『撮らせてやんなさいよ』と背中を押してくれて、交渉成立」。

「僕が撮るほとんどのスナップは、街中で道行く人に声を掛けて撮影しています。その人の繰り返しの1日が見えた時、平凡な日常の隙間のようなものが見えた時、その人が『そこに生きている』と感じて撮りたくなります。ちょっとコンビニまで出かけるような佇まい。一言で言えば無防備な状態かもしれませんが、そこに人が生きている核のようなものがあって、僕には非常に神秘的に見えるのです。そこに声を掛け、その人の今日という繰り返しの循環の中にふっと入る時、何かに気付かされるような、振り向かされるような感覚になります。
僕はずっと『人を撮りたい』という気持ちで写真を続けてきたので、写真への向き合い方=他者との向き合い方になります。そして、街中で多くの人を撮影させてもらう過程で、嘘をつかないという姿勢を学びました。シャッターを切りたくなるのは、不思議だったり、クスッと笑えたり、真剣に目が合ってしまったり、癒されたり、怖そうな人だと思ったり、愛を感じたり、少し切ない気分になったり...心が動く瞬間です。その人の今という瞬間に見せる表情を集めることにより全体の大きな循環が見えてきて、それが鑑賞者にとって生きる力になるのではないかと考えています。人がただ今を生きているということの素晴らしさを伝えて、見る人の自己肯定になれば嬉しいです」。

‟今という瞬間に見せる表情を集めることが、見る人の生きる力になると信じている。”

「ここで撮りたいと思い、しばらく待っていたら現れた男性。タバコを吸っていたので、煙を吐いてもらいながら数枚撮影。脇に抱えている鍋は、これから夕食を買う際に容器として使うらしい。撮影時に鍋を手放そうとしたので、鍋も一緒がいいと伝えたら『変わってるね〜』と言われた」。

「道路で遊んでいた少女を撮影しようとしたら大粒の雨が降ってきて、家族が片付けを開始。慌てて少女にレンズを見るようお願いして撮った一枚。撮影後、少し片付けを手伝った」。

「漁港で船の出航を眺めている人々。個人的に、すごく台湾ぽいと思う光景」。

「夜市で夕食を食べる野球部の学生たち。実は撮影を断られたのだけど、顔を写さない条件で再交渉し、上から撮影。結果、このアングルで正解」。

水島貴大

写真家 1988年生まれ、東京都出身。「街とそこに生きる人」をテーマに写真作品を制作。2017年台北で開催されたポートフォリオレビューイベント「Photo eye」(現在はPhoto one として運営)でグランプリを受賞。2020年に台湾へ移住し、現在は東京と台北の2拠点をベースに活動。
愛用カメラ:Canon EOS- 1V、PENTAX 645 NII
愛用レンズ:smc PENTAX-FA645 45mm-F2.8

水島貴大 Instagram

GENIC vol.69【街で出会った人を撮る】
Edit:Satoko Takeda

GENIC vol.69

1月号の特集は「SNAP SNAP SNAP」。
スナップ写真の定義、それは「あるがままに」。
心が動いた瞬間を、心惹かれる人を。もっと自由に、もっと衝動的に、もっと自分らしく。あるがままに自分の感情を乗せて、自分の判断を信じてシャッターを切ろう。GENIC初の「スナップ写真特集」です。

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