酒井貴弘
フォトグラファー 1986年生まれ、長野県出身。「私が撮りたかった女優展」への参加や、NGT48本間日陽1stソロ写真集の撮影など、俳優やアイドルの撮影に強みを持った活動を行いながら、これまでの形にとらわれない新たなフォトグラファーキャリアを模索している。
愛用カメラ:Nikon Z 6Ⅱ、RICOH GR Ⅲ
愛用レンズ:NIKKOR Z 50mm f/1.8 S
自分がどういう表現をしたいかに合わせて光を選択できるように
ポートレートやスナップを中心に、広告案件やタレント・モデル撮影、ファッションの分野で活躍中の酒井貴弘さん。「7~8年前に一眼レフを買ったのが写真を始めたきっかけです。その後、家族写真を撮るフォトスタジオに勤務し、そこからモデルも撮ってみたいと思いSNSでモデルさんを探して撮るようになりました。自分にとって写真とは、人生を共にする相棒ですね。写真を撮ることで、自分の人生が想像を超えたものになりました。最近は写真系のオンラインコミュニティの主催と運営を始めました。写真を通して人と人のつながりが生まれる面白さもありますし、写真が上手くなり成長する姿を見られるのは楽しいと思い、続けています」。
Q. 躍動感を出しつつ、ブレていない写真を撮るにはどうしたらよいですか?
A. シャッタースピードを上げてモデルも自分も動きながら撮る
ブレていない躍動感のある写真を撮りたいときは、なるべくシャッタースピードを上げて、モデルも自分も動きながら撮影したりしています。カメラの設定の順番の考え方としては、まず「ISO」はなるべく上げて。個人的感覚としては、ISO1600くらいは許容範囲と考えています。そのあと写真の印象に大きく関わる「絞り」を決めて、その中で「露出」を見ながら「シャッタースピード」を限界まで上げる、という感じです。実際に思いっきり動いていなくても、髪の毛の動きや仕草、ポーズでも躍動感のある雰囲気は出せるので、体は止まった状態で髪だけをなびかせてみたり、動きを感じるポージングを考えたり。いろいろ試してみるのがいいと思います。
Q. より肌を美しく撮るコツや、自然な肌の撮り方を教えてください
A. 肌がキレイに見える半逆光の光を味方にしましょう
撮影段階で、なるべく肌のシワや毛穴の凹凸などが出ない光を選んで撮るといいと思います。一番使いやすいのは半逆光。いわゆる「透明感」といわれるような雰囲気の写真に仕上げやすい光なんです。RAW現像の段階では、トーンカーブの肌の色に影響する部分を持ち上げるような設定を意識しましょう。また、透明感を出すために、とにかく肌を白くしたり明るくしすぎたりしている状態の写真を見かけることがありますが、不自然なくらいにやりすぎてしまうと、写真としてよくはならないので注意が必要です。
Q. 逆光でも上手く撮るコツはありますか?
A. 光によってどんな写真になるかを理解するのが上達の第一歩
逆光とひとことで言ってもいろいろな光があります。強い光もあれば弱い光もあったり、光の入る角度や被写体の位置などで当たる場所が変わったり。そういったさまざまな光によって、それぞれどういう光だと、どんな写真になるのかを理解することが第一歩だと思います。自分がしたい表現に合わせて、光を選択できるようになりましょう。例えば、光が強すぎる逆光の場合は、光源を被写体に被せながら光の量を調節して撮ってみるのがコツ。また、逆光の光だけでなく、被写体にほかにどういう光が当たっているのか、逆光以外の反射や環境光を見ながら判断するように心がけて。
Q. 最近のベストショットを教えてください
A. 道端の草なのに何か強い力を感じたお気に入りの写真
だいぶ悩みましたが、あえて選ぶとしたらこの写真。自分のホームページのトップ画像にしていたり、名刺に使っていたり。WEGOとのコラボTシャツでも使用しました。いつもポートレートを撮っているのに人物の写真じゃないのかよ!と思われるかもですが…(笑)。これは友人と紅葉の写真を撮りに日光に出かけたときに撮った、道端に生えていた何かの蕾の写真です。紅葉を撮りに行ったのに紅葉も人も写っていない、どこにでもある草むらみたいなところでなぜか撮りたくなって撮ったフィルム写真です。現像が上がってきたときに、草むらからは想像できない感じの写りになっていて驚きました。
自分的には何か強い力を感じる空気感で気に入ってます。なんでもないそのあたりにある植物から、何かが伝わる表現を導き出せたのがとても面白い、お気に入りの写真です。
GENIC VOL.60 【スランプから抜け出す写真の処方箋】
Edit:Izumi Hashimoto
GENIC VOL.60
特集は「とある私の日常写真」。
当たり前のようでかけがえがなく、同じ瞬間は二度とないからこそ留めておきたい日常を、表現者たちはどう切り取るのか。フォトグラファーが、クリエイターが、私たちが、それぞれの視点で捉えた日常写真と表現、そしてその想いに迫ります。