奥中尚美
薬剤師 育てている花を撮りたくて一眼カメラとマクロレンズを購入し、カメラの魅力に目覚める。SNSに投稿する自然、花、カフェ、愛犬、お茶の時間などの写真が話題に。
愛用カメラ:Canon EOS R5 / 5D Mark Ⅲ、Nikon F3、Hasselblad 500C/M
愛用レンズ:Carl Zeiss Distagon T*1.4/35mm ZE、TAMRON SP 90mm F/2.8 Di MACRO 1:1 VC USD など
自分らしく、ていねいに過ごす
奥中さんがSNSで発信しているのは、自然との関わりを尊重した奥ゆかしい暮らし。
「日常で大切にしているのは、自分らしく過ごすこと。緑豊かな環境で、自然を身近に感じて育ちました。草花や四季を楽しむことは、子供の頃から今に至ります。日々の生活の中で幸せを感じるのは、光がきれいな場所で過ごす時間、庭の四季を感じる時間、愛犬と過ごす時間。好きなものや四季の草花に囲まれた空間は、撮影活動で撮りたくなる場所でもあります。日常を切り取って写真に残すことは、季節のうつろいを感じ、自分らしい暮らしや時間を大切にすることにつながっています」。
Rule01:休日は庭仕事
「休日は庭の草花を眺め、庭仕事をすることから始まります。雑草を抜き、剪定をしたり、花を摘んだり。そのすべてがリフレッシュにつながる心地よい時間。庭から摘んだ植物をお皿に添えたり、部屋に飾ることで、家の中でも季節の移ろいを楽しめます。庭の草花を撮ることも喜びです。日々変わるので、毎日撮っても飽きません」。
「庭の八重桜でシロップを作るのが、毎年の楽しみ。花びらの質感や色を出したくて、柔らかな光が全体を包み込む東の部屋の窓枠に置いて撮影。背景はリネンカーテン。透明感のある優しい表情が気に入っています」。
Rule02:“好き”に囲まれる
「買い物は妥協せず、本当に欲しいと思うものが見つかるまで買わないようにしています。理想は、すっきりとしたシンプルな空間。お気に入りのものだけに囲まれた部屋は、居心地がいいものです」。
「ガラス作家、ピーター・アイビーの“Okome jar”は、以前から欲しかったもの。引っ越しを機に思い切って購入し、主に焼き菓子を入れて使用しています。大切なものだからとしまい込まず、使う楽しみも味わっています」。
Rule03:ひとりの時間にお茶を淹れる
「ひとりの時間に淹れるお茶は、お茶と向き合う贅沢な時間。味や香り、色を感じながら、そして所作を確認しながら、自分のペースでお茶を淹れることは、自分に足りないものを知る時間でもあります」。
「佇まいの美しい大好きな茶道具を、三脚を使ってリモート撮影。茶道具を選んでお茶席を作ることは、テーブルフォトのセッティングにも通じるものがあります」。
Rule04:愛犬との時間を大切にする
「沖縄から来た保護犬のリアン。彼との絆が深まることを願って“絆”という意味のリアンと名付けましたが、そのリアンが今は、他の人や犬との絆を結んでくれています。彼と一緒に遊び、お散歩をして笑顔で過ごす時間は、かけがえのない癒しの時間です」。
「瞳に光が入る位置で、いきいきとした印象に。花やテーブルフォトはマニュアルフォーカスですが、リアンを撮るときは瞳AFに頼り、その分、構図や光、リアンの表情に気を配ります」。
Rule05:柔らかな光が入る、逆光の席に座る
「美しい逆光が入る場所が、私にとっての特等席。時間の経過で少しずつ変わる光を眺めながら、お茶や撮影を楽しむ時間に幸せを感じます。柔らかい逆光で撮影することが好きなのですが、写真に撮ったら素敵そうだな、ということも何かを選ぶときの大切な理由になっています」。
「家を建てるとき、“柔らかな光が入る家”とお願いしました。結果、リビングのこの場所は外に面していません。夏は特に薄暗くさえあるこの光が気に入っています」。
「この部屋ではいつも薄いカーテン越しの柔らかい光で撮るのですが、この日はカーテンを開けて、グラスの底に控えめに光を入れました」。
GENIC VOL.60 【写真家が撮る日常】
Edit:Satoko Takeda
GENIC VOL.60
特集は「とある私の日常写真」。
当たり前のようでかけがえがなく、同じ瞬間は二度とないからこそ留めておきたい日常を、表現者たちはどう切り取るのか。フォトグラファーが、クリエイターが、私たちが、それぞれの視点で捉えた日常写真と表現、そしてその想いに迫ります。