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SNSを活用し戦略的に“撮る”ことを仕事に コハラタケル

今の時代の象徴とも言えるSNSでも人気のプロフォトグラファーたちは、どのようにしてその位置に立ったのか?今、何に向き合い、これからどこに向かって歩んでいくのか?現代を生き抜くための重要なツールをものにした、彼らが歩く道に迫ります。
これまでのヒストリー、ここからのアプローチをお伺いする企画「SNSでも人気のプロたちが歩む道」3人目は、感情のゆらめきを繊細に写し撮るフォトグラファー、コハラタケルさんです。

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目次

SNSでも人気のプロたちが歩む道

<History>
32歳 フリーランスライターをやりつつ、自分で撮った写真を含めた記事も執筆するようになる。すべて独学。
34歳 出張撮影のプラットフォーム「fotowa」に登録。家族写真を仕事にする。同年、「CURBON」にて、撮影風景の動画をオンラインで販売開始。この年の10月にライターの仕事をすべて断り、写真業のみでやっていくことに。

「山本文緒さんの著書『自転しながら公転する』のカバーに写真を提供しました。7年ぶりの新作を発表するので、表紙に僕の写真を使いたいと連絡がありました。話を聞いたときは驚きと同時に嬉しさしかありませんでした。常日頃から、自分の写真が小説の表紙に選ばれるようなものだったら良いなと考えていたので、自分の写真を使ってもらえると聞いて格別の想いでした」。

ライカギャラリー東京・京都での展示及び、ライカQ3プロモーション用の作品。「自分が担当することはないと思っていた仕事であり、妻ともう一度向き合わなければならなかった作品でした。展示初日を迎えたあとは、気力が無くなり、部屋の床で寝ることが増えました。逆に言うと、そこまで力を使い果たすことができたからこそ、良いものが撮れたとも思っています」。

写真を始めたのは“仕事にしたい”ではなく、生きるためだった

「僕が写真を始めたのは32歳。当時はうつ病で約1年間休職したあと、仕事をどうするか…という状況でした。結果的にフリーランスのライターになったのですが、執筆のみだと収入が厳しく、何かしなければいけないと考えていました。そんなときウェブで仕事を探していると、あくまで文章がメインで不動産の物件写真を資料通り撮れば良いという仕事が。“少しでも収入が上がれば”そんな想いで始めました。スタートは“仕事にしたい”ではなく、生きるために必死でやった結果でした。SNSでの活動を含め、写真を撮っていく中でどちらかというと文章よりも写真のほうが高評価だと感じ、34歳で出張撮影のプラットフォーム『fotowa』に登録し家族写真を仕事にしました。また、『CURBON』にて撮影風景の動画のオンライン販売も開始。そこでの売上げを初めて確認したときに、ライター業をすべて断り、写真業のみでやっていくことに決めました」。

SNSのフォロワー数は僕の大きな武器のひとつ

「Instagramのフォロワー数が伸びた理由のひとつは、さっちゃんが写ってくれたから。彼女の魅力によってフォロワー数も増えた気がします。今でも自分の過去話をするとき、パッと頭に思い浮かぶのはさっちゃんです。感謝してもしきれないですね」。

フォロワー数が伸びたのは写真を見てくれる人たちの好きを追求した結果

「オリンピックの新体操の演技を見て、リボンの動きが美しいと思い自分の写真にも取り入れた静物写真。好きな写真ですが、Instagramでは数字が伸びることなく、このシリーズはやめました。今でも“続けていたらどうなっていたのかな”と思うことがあります。自分の写真を語る上で、外すことができない1枚」。

「そんな僕が仕事をもらえている理由のひとつは、SNSのフォロワー数に価値を感じてくれている方がいるから。スタジオマンも未経験、誰かに師事したこともない自分にとって、大きな武器のひとつだと思います。ただ、拡散力があるからではなく、ここまで数字を伸ばしてきた努力や継続力、物事を俯瞰する力を評価していただいている場合が多いのかもしれません。SNSの数字を伸ばす場合は、自分のアカウントを自分でプロデュースしなくてはいけないので、自分の写真を客観視できるかどうかが大切。そして、独りよがりではなく、全体を調整する考え方も持ち合わせておきたいですね。戦略的に動きつつも“これだけは譲れない”という自分のこだわりを常に持つことが、仕事をいただくことへと繋がる道なのかも知れません」。

「以前の僕の家で撮影。今見返しても、このときの写真が好きです。この頃の、お互い良いものを作ろうという純粋な気持ちには勝てない気がします」。

プロフィール

コハラタケル

フォトグラファー 1984年生まれ、長崎県出身。セクシー女優たちのデジタル写真集“とられちシリーズ”を撮影するほか、山本文緒『自転しながら公転する』や、島本理生『あなたの愛人の名前は』(文庫版)など、書籍カバーにも写真が採用されている。2023年にはライカギャラリー東京・京都にて写真展『撮縁』を開催。
愛用カメラ:FUJIFILM X-Pro3、Leica SL2-S
愛用レンズ:XF23mmF1.4 R/35mmF1.4 R、Leica Vario-Elmarit-SL 24-90mm f/2.8-4 ASPH.

GENIC vol.70【SNSでも人気のプロたちが歩む道】
Edit:Izumi Hashimoto

GENIC vol.70

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写真を愛するすべての人に知ってほしい、撮るという仕事の真実。写真で生きることを選んだプロフェッショナルたちは、どんな道を歩き今に辿りついたのか?どんな喜びやプレッシャーがあるのか?写真の見方が必ず変わる特集です。

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