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写真への勘違いをなくして「いい写真」を広めたい 幡野広志

今の時代の象徴とも言えるSNSでも人気のプロフォトグラファーたちは、どのようにしてその位置に立ったのか?今、何に向き合い、これからどこに向かって歩んでいくのか?現代を生き抜くための重要なツールをものにした、彼らが歩く道に迫ります。
これまでのヒストリー、ここからのアプローチをお伺いする企画「SNSでも人気のプロたちが歩む道」1人目は、即完売の人気ワークショップを手掛ける写真家、幡野広志さんです。

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目次

SNSでも人気のプロたちが歩む道

<History>
21歳 写真の専門学校に入学。在学中に撮影スタジオでバイトをする。現場で必要とされるものと学校で学ぶことに差がありすぎて、学校の意味を感じずあっさり中退し、いろんな現場でアシスタント経験を積む。物撮りメインの広告写真家に師事。その後、独立。
現在 40歳。

吉本興業の映画祭用の動画撮影で行ったネパール・カトマンズにて。「撮影の合間に撮った1枚」。

製薬会社のお仕事で行った香港にて。「催涙ガスはいい香りがする(最初だけ)」。

仕事は無理してストレスを感じてまでやることはない

2021年に撮影と執筆をした気仙沼漁師カレンダー。経済産業大臣賞とドイツのグレゴールカレンダーアワードで銅賞を受賞。「漁船でカメラを構えると船酔いをする」。

ほぼ日刊イトイ新聞が企画する、プロ野球観戦を楽しむイベント『野球で遊ぼう。』の撮影で東京ドームへ。「高校球児が坊主にするのは意味ないよって選手に教えてもらった」。

「高校卒業後に写真の専門学校に通いながら、撮影現場のアシスタントのアルバイトをしていました。現場で習うことと学校で教わることがあまりにも乖離があって、現場にいた方がいいと思い半年ほどで辞めました。その後はスタジオマンをしながら、フリーのアシスタントとしてファッションやグラビア、取材などいろいろな現場に就いて学びました。そして物撮りの師匠に就いたあとに独立。今の仕事スタイルになったのは2016年に子供が生まれたタイミングです。
企業のウェブの撮影や旅の取材撮影などをしていますが、仕事は無理してストレスを感じてまでやることはないと思っています。今は何を撮っても楽しい。知らない世界を撮影するので、どんな撮影であろうとさまざまな発見があって面白いんです。また、最近ではワークショップを開催しています。きっかけは数年前に怪我をして仕事ができなくなったときに、“RAWデータを送ってくれたら現像をするよ”とX(Twitter)に投稿したこと。100人近くのデータを見ましたが、設定や撮り方を勘違いしている人が多かった。そこで、世の中の趣味で写真を撮る人は結構誤解していると知って。それを変えられたらいいなと思って始めました」。

写真に対する勘違いをなくして、いい写真が世にたくさん溢れて欲しい

BRUTUSの撮影で知床へ。「北海道は暗くなるのが早い」。

「いい写真が世にたくさん溢れて欲しいと思っているんですが、今はその逆になっている。SNS全般そうですが、いい写真から外れた写真がすごく増えた。それを見た人が写真を始めようと思ったら、またそこから誤解が生まれてしまう。危機感を覚えたわけではないですが、写真ってそういうものじゃないよっていうことを提案したかった。それに、勉強したい人が意外と多いんですよね。実際に伸びる人もたくさんいます。でも、本気で写真の仕事がしたかったら、写真の専門学校でもYouTubeでも写真の専門誌でもなく、ぜひ現場で経験を積んでもらいたいな、とは思っています」。

今は何を撮っても楽しい。知らない世界の撮影は発見があって面白い

「マイベスト。どんな仕事をしていても生活のためなので、家族のために無理をしない」。

近畿大学医学部、皮膚科学教室のウェブサイト用の撮影。「皮膚科の先生たちがたくさんの人の人生を救っていることを知った」。

プロフィール

幡野広志

写真家 1983年生まれ、東京都出身。写真の専門学校を中退し、広告写真家、高崎勉氏に師事。2011年に独立。2016年に長男が誕生。元狩猟家、血液がん患者。著書『他人の悩みはひとごと、自分の悩みはおおごと。 #なんで僕に聞くんだろう。』(幻冬舎)、『うまくてダメな写真とヘタだけどいい写真』(ポプラ社)。note、stand.fm『写真家のひとりごと』も更新中。

GENIC vol.70【SNSでも人気のプロたちが歩む道】
Edit:Izumi Hashimoto

GENIC vol.70

2024年4月号の特集は「撮るという仕事」。
写真を愛するすべての人に知ってほしい、撮るという仕事の真実。写真で生きることを選んだプロフェッショナルたちは、どんな道を歩き今に辿りついたのか?どんな喜びやプレッシャーがあるのか?写真の見方が必ず変わる特集です。

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