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色をテーマに水中の世界を描く 茂野優太

夢中になれるものを撮り続け、それが生きる糧となった人。レンズを通して、ひとつのことに情熱を注ぐようになった人。仕事と愛が交差する場所で生きる6名のフォトグラファーに、“好き”の先にある仕事を語ってもらいました。
「“好き”を撮って生きていく」5人目は、水中写真家の茂野優太さんです。

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目次

“好き”を撮って生きていく

「水中の定番、サンゴの写真に自分らしい目線が加えられないかと考え、沖縄県阿嘉島の海で、ドローンのように真上から撮影。陸上では限られる撮影範囲も、無重力の水中では360度自由に動けるからこそ独自の目線が大切に」。

「日本の海の持つ色の多様性に着目し、その豊かさを写真で表現したいと常々思っています。これは南からの黒潮と瀬戸内海からの寒流が入り込む愛媛県最南端の愛南町の海。様々な生き物がひしめき合う独特の環境が特徴。真ん中には南の島から流されてきた魚の姿も」。

ふと目に留まった水中写真に勇気づけられ写真家の道へ

「写真家になる前にダイビングや写真を学んだセブ島の最南端、リロアンでの1枚。コロナ禍でなかなか海外撮影ができない中、2023年に再び仕事として、修業時代を過ごした場所に行き、変わらない海と現地の人々を見て、止まらずに頑張ってきてよかったと思えた撮影でした」。

「まだ銀行で働いていた頃、仕事で落ち込んだときにSNSで流れてきた水中写真を見て、なぜだか無性に明日も頑張ろうという気持ちになりました。この経験で、写真には人を勇気づける力があることに気づき、水中写真家への道を決意。銀行を辞め、国内外の海でダイビングと写真の修業をスタート。仕事になるまでには、とにかく海の近くに居続け、1秒でも長く撮影を続けました。ネイチャーカメラマンは腕も必要ですが、貴重なシーンに立ち会えるかも重要。そのためにもいつでもそこに行けるよう態勢を整える、そんな泥臭いことを大切にしていました。また水中写真では自然を相手にするため、何時間撮影しようと、小笠原諸島まで行こうと撮れないことはざら。しかも潜水病などのリスクの問題で、1日に潜れる時間は限られています。だからこそ水中の美しい世界が撮れた喜びはひとしお」。

海の近くに居続け、1秒でも長く撮影するそんな泥臭いことを大切に、仕事にしていった

「ダイビングインストラクターと水中写真家、どちらに進むか迷っていた頃。小笠原に撮影に行き、まさに伝えたかった自然の美しさを前にしてシャッターを切ることができ、自分で自分の写真に心が揺さぶられました。これをきっかけに写真家としての道を歩むと決心しました」。

「2月の知床半島は気温マイナス15度、水温はマイナス1.5度。カメラのボタンが凍って押せなくなるほどの過酷な環境の中、美しい光の光景に息を呑む思いで撮影しました。流氷が作り出すダイナミックな光景は、今でも忘れられないほど」。

「海の中というのは青のフィルターのある世界です。同じ被写体でも撮る距離によって色が変わり、無限のグラデーションを生む、そんな刹那的に現れる色を表現できたときは最高。まだ見たことない水中の世界を見に行き、それを誰かに共有できるのがこの仕事の素晴らしさです。ちなみに今撮影したいと願っているのは、まだ日本のカメラマンで作品を撮った人がいない北極の氷河の下。そのための準備として、毎年知床半島での寒冷地の撮影や、テクニカルダイビングの修業をしています。世界の極限の地でどんな作品ができるのか、試したいです」。

茂野優太 プロフィール

茂野優太

水中写真家 1991年生まれ、神奈川県出身。学生時代、スキューバダイビングサークルに所属し、美しい世界が近くにあることを友人に伝えたくて、カメラを購入。卒業後に就職した銀行を1年半で辞め、写真とダイビングの世界へ。ダイビング雑誌やウェブ媒体での連載や、水中写真のセミナー開催など、写真家としての活動は多岐にわたる。日本各地の海のプロモーション映像制作や、映画『海の色は夢のつづき』の水中撮影など、映像も手掛ける。
愛用カメラ:Nikon Z8
愛用レンズ:NIKKOR Z MC 105mm f/2.8 VR S、AF-S Fisheye NIKKOR 8-15mm f/3.5-4.5E ED、NIKKOR Z 28-75mm f/2.8

GENIC vol.70【“好き”を撮って生きていく】
Edit:Satomi Maeda

GENIC vol.70

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