Ken
フリーランスカメラマン 1986年生まれ、韓国・大邱出身。9年前に来日。日本に魅了され、カメラマンとして働きながら日本を満喫中。
愛用カメラ:Sony α7 Ⅲ、Sony α7R Ⅲ
愛用レンズ:SIGMA 85mm F1.4 DG DN ART、Sony FE 24-70mm F2.8 GM/FE 35mm F1.8
働く人
ストリートは私の師匠であり遊び場でもある
「ビルから落ちている光がフォトフレームのように感じ、ここで待っていたら何か面白いシーンが現れると思いずっと待ってみました。そこに白バイが見えて『これだ!』と思い衝動的にシャッターを切りました」。
韓国から留学し、日本旅行の記録を残すために写真を撮り始めたのがストリートフォトを撮るきっかけだというKenさん。
「最初は練習のためでしたが、撮れば撮るほどストリート写真の魅力にハマっていきました。事前に主題を決めて撮影に行っても予想してないシーンや、知らなかった場所を見つけたり、映画のようなワンシーンに出会えたりすることが路上写真の面白さだと思います。ストリートはカメラマンの私を作ってくれた場所であり、写真の先生であり、遊び場でもあるんです。そして街で人を撮っていて感じるのは、何かに夢中になっている人の姿は魅力的だということです。しかも自分と違う仕事をしている方、違う趣味を持っている方を見つけると、もっと知りたくなり、自然にシャッターを切っています。何かに夢中になっている姿を撮れる場面と出会うのはとてもラッキーなことなんですよね。ただ、ストリート写真は報道写真ではありません。被写体が、困難な状況にいたり、弱点や悲しみが見えたりする写真を望んではいません。撮られている人が、写真を見て恥ずかしく思う写真にならないように撮るのが大事ではないかと思います」。
「奈良行きの電車の中、景色がとても綺麗でずっと窓を見ながら写真を撮っていました。ちょうど綺麗な光が車内に入った時、車掌さんの背中に映っている乗客の姿が見えました。まるで車掌さんがお客様の安全な旅を背負っているように感じて撮った1枚」。
「大阪の天満市場での1枚。人混みの中、新聞を読みながら『はいは~い』と余裕で接客をされていました。賑やかな市場とは真逆で、その店員さんだけは別世界で自分の時間を過ごしている姿に視線を奪われました」。
何かに夢中になっている人ってそれだけで魅力的
「カフェで休憩しているサラリーマンたちと、その下で雪の中働いている警備員。真逆な感じが面白いなと思いシャッターを切りました。対照的な光景にユーモアを感じてもらえたら」。
「雪が降っている浅草の日常を撮りに。コロナ禍で静かな浅草でしたが車夫の人たちは一生懸命お客様を呼んだり、人力車を引いていました。赤信号で止まる人もいれば、同時に動いている人もいる。仕事も同じということを感じて欲しいです」。
思いをのせてシャッターを切ることが大切。それはまるで親が撮ってくれた家族写真のように
「サラリーマンが多い有楽町周辺では空ではなく、スマホを見ている人が多い。そしてその姿は、写真を見ている私たちでもある、ということを表現したく撮りました」。
「1日を頑張ったサラリーマンのために一生懸命美味しい焼き鳥を焼いている店員さんの表情が印象的で。そして新宿の思い出横丁の店員さんの仕事が終わる頃、またサラリーマンの1日が始まるのでしょう」。
Kenさんらしい写真とは、その先を想像ができるかどうか。
「食べ物だったら味を想像したり、ストリートだったら行ってみたいと思わせたり。それが私らしい写真なのかなと。ただ想像を掻き立てる写真を撮るためには注意点もあります。それは意味がないシャッターを切らないことです。撮る前に、どんな想像をして撮るかを自分で自覚していないと、自分自身もその写真に何も感じられなくなるからです。何かを感じて撮った写真には自分の感情もたっぷり入り、時間がいくら経ってもその時に撮った気分を生々しく感じられるものになると思います。それはまるで親が撮ってくれた昔の家族写真のように」。
GENIC vol.63 【街の被写体、それぞれの視点】
Edit:Megumi Toyosawa
GENIC vol.63
GENIC7月号のテーマは「Street Photography」。
ただの一瞬だって同じシーンはやってこない。切り取るのは瞬間の物語。人々の息吹を感じる雑踏、昨日の余韻が薫る路地、光と影が落としたアート、行き交う人が生み出すドラマ…。想像力を掻き立てるストリートフォトグラフィーと、撮り手の想いをお届けします。