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Shin Noguchi が可視化する美しき日常 シン・ノグチ

写真は生き様が反映されるアート。何を感じ、何を受け取って生きてきたのか。写真に投影されるのは、自分自身です。私の写真世界へようこそ。
作家活動に積極的に取り組む写真家たち、各人の写真世界に足を踏み入れてください。
「My World, My Essence 私の写真世界」5人目は、世界各国のブランドから撮影依頼を受ける、ストリートフォトグラファーのシン・ノグチさんへのスペシャルインタビューです。

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目次

プロフィール

シン ノグチ

ストリートフォトグラファー 1976年生まれ、東京都出身。鎌倉と東京を拠点に活動。街中の市井の人々を記録した写真や、自身の三人娘の成長を記録したプロジェクトが世界各国のメディアで特集され、HERMÈSやZARAなどから撮影依頼を受ける。現在、ライカカメラのグローバルキャンペーン「M is M」に起用されており、鎌倉女学院の創立120周年記念行事で写真コンクールの審査員を務める。おもな展示予定に「新宿北村写真機店リニューアルオープン記念写真展」、「第15回カナダ・ガスペジー写真祭」など。
愛用カメラ:Leica MP/M10-P
愛用レンズ:Summicron f2/35mm Pre-ASPH

My World, My Essence 私の写真世界

Shin Noguchiが可視化する美しき日常

2022年4月、神奈川県横浜市大岡川。「新型コロナウィルスへの規制が緩和されて多くの人々が3年ぶりに花見を楽しむ中、自国の民族衣装を身にまとい、仲良く撮影し合う二人。桜と女性らの“美しさ”を主題(写真の入り口)に読み手が写真の中に歩いていくと、桜を撮る人、花柄と桜、花見とクルーズ船、という各要素の繋がりに目が留まる。さらにそれらを注視すると、橋の上で撮影する女性のマスク姿、お花見クルーズ船の全乗客のマスク姿、そして民族衣裳の女性の手元からも撮影中のみマスクを外していることに気が付く。各レイヤーを丁重に組み合わせて“徹底的”瞬間にこだわることで、ここに写る時節柄や社会状況を、たった一枚の中であっても永遠に残し語ることができる」。

あなたは決して孤独ではない。この社会の中であなたの姿をどこかで見守っている人がいる。

2015年2月、神奈川県逗子海岸。「冬の暖かな日差しを求めて海岸に集まってくる人々。家族、夫婦、ひとりで、そして近くの作業現場から昼寝休憩のために。そんな四組四様の光景が揃った瞬間にシャッターを切った。と同時に、足元で砂遊びしていた当時5歳の娘がカメラの前に飛び出してきた。まさにカメラを持つ身として”日常に撮らせてもらった”写真。これはのちに各国のメディアで取り上げられ、最近では国際人権映画祭やライカカメラのキャンペーンに使用されるなど、ストリートフォト、家族写真、そして写真家としての仕事が一つに繋がることを示すことができた思い出の一枚のひとつ」。

ストリートフォトグラフィーとは “人生をみる”こと

「ストリートは、“生活”。ストリートフォトグラフィーとは、“人生をみる”こと。人々は、この社会を必死に生きている。時に独りで、時に互いを支え合い、時に泣き、時に笑いながら。私は、彼らの日常を撮る。彼ら自身さえ気付いていない、人間味あふれる瞬間が存在している日常を。人々の日常にスポットを当てることで、それぞれが孤立、孤独ではない“個”として、社会において重要な存在だということを視覚言語として写真に可視化していく。『あなたは決して孤独ではない。この社会の中であなたの姿をどこかで見守っている人がいる』というメッセージとともに、人間の本質と、その人間が作り出した社会の本質との“矛盾”を感じてもらえたら幸いである。私が記録した日常写真、社会的風刺写真を入り口に、被写体と読み手、人と人とが繋がる機会やそのきっかけをより多く残せたらと願って」。

“良い写真”を作ろうとしすぎないこと。次の一枚が“希望”となると信じて。

2022年11月 神奈川県箱根町仙石原

「私がシャッターを切るのは、“写真”を見ているからではない。そういう絵が欲しい、表現がしたい、ではなく、その場/その光景/その被写体に何かを感じた瞬間にシャッターを切る。私の手元にある写真は、あの時私が何かを感じた光景ということだけ。表現の表面的な統一性を求めることはせず、こだわるのは常に“今”に身を置くこと。決して背伸びをせず、足るを知る。“今”の自分の視点からぶれることなく、素直にその“今”を捉えること。そして、その光景やその日常を最良のカタチとして写真で伝え残せたらと、徹底的に瞬間にこだわり切り取っていく。人と人の繋がり、この世にある“間”、土地柄、人柄など、人が意識的に感じることができるものを写真の中に可視化できるような構成・構図を語り部として常に意識しつつ。撮り逃げすることなく、絵を撮ることを優先するのではなく、常にファインダーを通して社会やそこに生きる人々と対峙する」。

それぞれが“個”として尊い存在であることに気付いてもらえたら。

2019年1月 静岡県御殿場からの富士山

「私は決して自分の写真を、作品=アートとは呼ばない。人々の日常や風習など、社会的風景を記録させていただいている身に過ぎず、私自身が作り込んで仕上げたものではないから。それでも、この私の視点が読み手にとって“アート”として認識してもらえるとすれば、とても嬉しい。それは、この世界そのものの評価だと感じることができるから。私は、読み手が写真の中の光景や被写体と会話している時に一番の喜びを感じる」。

2013年8月 東京都渋谷センター街

「“良い写真”を作ろうとしすぎないことが、被写体の尊重とともに自身を肯定する機会にもなる。人それぞれに独自の視点があり、そのすべての解釈が今までの人生で培ってきた経験の宝として写真に可視化されていく。自己肯定意識下で街や人々と向き合えば、被写体はきっと心を開いてくれるんだと。今の自分しか写真には写らない。この手元にある写真は、自分自身がシャッター以前に存在していたという証。だから、今のままでいい。撮れない、話せない、動けない、という時があっても、それでいい。ただ、常に『この先に“何か”があるかもしれない』と希望を持つこと。その“何か”を掴むために、わずかでも進んでみようと思える時が必ず訪れると信じて。次の一枚が“希望”となると信じて」。

2017年2月 神奈川県鎌倉市、自宅にて

「被写体は、生きることの意味やその価値を私に教えてくれる。私にとって写真を撮るという行為は、人々の存在-人間の本質や業-を肯定することであり、それはまた自分自身の存在を肯定し、ありのままを受け入れる機会でもある」。

2018年1月 東京都 芝公園 大雪の日

2020年1月 東京都 浅草寺前

2016年3月 東京都 増上寺

GENIC vol.71【My World, My Essence 私の写真世界】
Edit:Satoko Takeda

GENIC vol.71

2024年7月号の特集は「私の写真世界」。
写真は生き様が反映されるアート。何を感じ、何を受け取って生きてきたのか。写真に投影されるのは、自分自身です。自分らしさとはいったい何なのか?その回答が見つかる「作品」特集。私の写真世界へようこそ。

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