【龍崎翔子のクリップボード Vol.32】旅とキオスク

龍崎翔子<連載コラム>

龍崎翔子<連載コラム>第2木曜日更新
24歳にして5つのホテルを経営する
ホテルプロデューサー龍崎翔子が
ホテルの構想へ着地するまでを公開!

【龍崎翔子のクリップボード Vol.32】旅とキオスク

旅に出ると、すぐパンツ在庫が切れる。

何泊何日、というスケジュールを事前に立てずに、全ての用事が済むまでとりあえず北海道に行く!といった漠然とした日付感覚で飛行機に乗っているからかもしれないし、パッキングをするときに目分量で下着やら靴下やらをスーツケースに突っ込んでいるからかもしれない。

いずれにせよ、旅の途中のお風呂前に「やばい、もう明日の分がない!」ということが発覚し、コンビニに駆け込むのは日常茶飯事なのである。

デザインにも機能にも由来にも大して愛着を持てない、数日後には買ったことすら忘れてしまいそうな下着を買うくらいなら、多少値段が張っても旅のお土産になるようなものを買いたい。必要に迫られて、大した選択肢もない中で買うのだから、地元産の素材を使っていたり、独自の審美眼でキュレーションされたものだったり、そういう買うための理由があるといいのにといつも思っていた。

キオスク、という言葉はペルシャ語の「日陰をつくるもの」を意味するkuskという語に由来するのだという。陽射しのきつい中東や西アジアで、宮殿や邸宅の庭園の中の屋根のある離れとして作られた東屋のようなものがキオスクなのだ。

2020年を生きる私が猛暑日に灼熱のアスファルトから逃れるために用もなくキンキンに冷えたコンビニに立ち寄って涼むように、かつての砂漠の民も陽射しを遮ぎるキオスクでチルっていたのだろう。さしずめ、人の手で生み出されたオアシスといったところだろうか。

そういう経緯で、「最果ての旅のオアシス」をコンセプトに掲げているHOTEL SHE, KYOTOでは、私のような人のためにTシャツや下着、靴下などをキュレーションして販売するキオスクが併設されている。旅先での枯渇感を潤す場であり、今まで触れる機会のなかったブランドや価値観と出会うライフスタイルを試着する場となることを願っている。

龍崎翔子

2015年、大学1年生の頃に母とL&G GLOBAL BUSINESS, Inc.を立ち上げる。「ソーシャルホテル」をコンセプトに、北海道・富良野に『petit-hotel #MELON』をはじめとし、大阪・弁天町に『HOTEL SHE, OSAKA』、北海道・層雲峡で『HOTEL KUMOI』など、全国で計5軒をプロデュース。京都・九条にある『HOTEL SHE, KYOTO』はコンセプトを一新し、2019年3月21日にリニューアルオープン。

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