富田望生
富田望生 女優 2000年生まれ、福島県出身。女優として活躍しながら、雑誌『UTB +』で交友のある女優を撮り下ろす連載企画「女友撮」を担当。最近は『美食探偵 明智五郎』(日本テレビ系)に出演。映画『私がモテてどうすんだ』が上映中。
❝私に写る東京という街❞
確かな演技力で、若手実力派女優として注目されている富田さん。“カメラ女子”としても知られ、その腕前はフォトグラファーとして雑誌の連載ページを担当しているほど。
「最初は、カメラが流行っているという安易な理由でデジタル一眼レフを購入したのですが、実は1年ほど飾り物状態でした。その後、もったいないから友達を被写体にガチで撮ってみよう!と、インターネットで露出やシャッタースピードなどを調べて、よくわからないまま設定して撮ったのがハマッたきっかけ。
その数ヶ月後、上白石萌歌ちゃんにカメラ屋さんに連れて行かれ、フィルムカメラに出会いました。撮影は本当に感覚だけでやっています。運良く“上手い”と思われがちですが、ただ好きなだけで撮っています」
❝密度に覆われた東京で、「自然の一コマ」を見つける❞
今回の東京の写真も、撮りたくなった瞬間をカメラに収めたもの。
「高揚感を感じさせる写真も、落ち着きが見える写真もあります。東京だなぁと思ったり、東京っぽくないなぁと思ったり…幅が広いですね。ただ全部、私に写った東京です。東京で写真を撮るのは、“あ、なんかいい”と思ったとき。そればっかりです。なんかいいと思えるときは、大体心に余裕があるとき。カメラを持ち歩くのも、心に何かを求める余裕があるときです」
「撮るものを探すのではなく、狙わないことを心がけています。私はプロの写真家ではないので、好きに押したらピントがずれて、ブレて…そんな感じで良いと思っています。好き勝手に撮った写真が、刺さることがあるんです」
東京は私にとって、まさかの“落ち着く場所”
福島県出身の富田さんは、東日本大震災後に東京へ転居。
「福島に住んでいた頃は、東京は異世界だと思っていました。小さい頃に東京の地下鉄に乗って、これが遊園地か!これが外国か!みたいな気分になったのを覚えています。とにかく動くもの、高いものが多い。電車もバスも車もビルも、そして行き交う人々も、クラクラしてしまうほどの密度に覆われた街。それが今では、まさかでしたが、落ち着きます」
「カメラで東京を写すと、密度が静止画として残ります。私が写したくなるものは、吹き抜けた空や、密度を思い浮かべないほどの緑など、“自然の一コマ”が多い気がします。密度に覆われた街でその瞬間を見つけている時間が、とても落ち着きます」
富田さんにとって、写真を撮る作業とは?
「カメラは相手と仲良くなる一つの手段かな、と思います。私もお芝居以外の“自分自身”を写されるときは、いまだに緊張します。なので撮る側に回るときは、その緊張感をいかにナチュラルな状態に戻せるかが大切。
初めは誰しも一定の距離を取っているものですが、それが心地よい距離感になったとき、その瞬間の表情を運良く撮れることがあります。実際に『望生ちゃんの撮る私が好きです』と言ってもらえたときは、本当に嬉しくて。カメラひとつで互いを信頼するきっかけになるんだなあ、と」
❝東京は人が多い分、素敵なことも傷つくことも多い❞
「これから撮りたいのは、東京のネオン街。また、自然光でしか撮ったことがないので、スタジオで照明を使った撮影にも挑戦してみたいです。あと、撮ったものでグッズを作りたいという野望があります。言葉にすれば叶うかもしれないので言っておきます(笑)」
「仕事面では、“来るもの拒まず”。軸となるお芝居はもちろんですが、軸を崩さずにどれだけ苦手なもの、未経験なものに挑戦できるのか」
「東京に来た理由は“地震のせい”とずっと思っていましたが、それはきっかけにすぎないと今は思えます。この街で女優という仕事ができているように、これからも出会うべくして出会った仕事たちに貪欲に向き合おうと思います」
GENIC VOL.55【表現者が撮る東京】
Edit:Satoko Takeda
GENIC VOL.55
テーマは「TOKYO and ME 表現者が撮る東京」