気持ちをのせた自分だけのスナップ写真
きっと自分にしか見えていない、目の前の光と空気をそのまま受け入れて写す
tokyo -2018-「とにかく必死に目の前を見ていた」。
「私がスナップ写真を撮るタイミングは特に決まってはないですが、ホームや駅、家まで歩いて帰る時が多い気がします。私にとって、歩きながら見つけた一瞬を切り取るスナップ撮影と、シーンを決め込んで撮影する時の視点には、違いはあまりありません。どちらも、自分らしさを考えて撮ることはなく、ある意味、自分らしさがないのが自分らしさなのかも、とも思います。写真を撮る時は、ただその時の自分を信じて、その時の自分を否定しない。コツや秘訣といったことではないかもしれないけど、自分が今置かれている環境をそのまま受け入れて撮影しています。きっと私にも、誰か他の人にも、その時にしかわからないことや見えないものが、それぞれにあるはずだから」。
【TIPS 01】とにかく目の前を見てその時にしか見られない「何か」を逃さない
トウキョー -2019-「とにかく人が多い。私はここ」。
「スナップをしたくなる瞬間を探して見つける、という感覚はなく、とにかく常に私は目の前を見ている。そうすると、目の前のシーンがなんか良いな、おもしろいな、気になるな、と思うことがあります。その瞬間に撮るのですが、撮りたい!となる時にはすでに撮っているので、なぜそう思ったかはその時はわかっていないことも多いです。あとで写真を見て思うのは『自分はこれが好きなんだな。面白いんだな』ということ。きっと心が動いた時に撮っている、ということだと思います」。
【TIPS 02】光とともに気持ちを一緒に切り取る
「光を求めて。自分の進む道が間違いでないことを祈って」。
「光を撮ることを大切にしています。光を見て、すごくわくわくする気持ちになる時もあれば苦しくなる時もある。朝方の光を写したとしても、見る人が夕方と思うこともあるのが光のおもしろさ。私自身は、光と一緒に、いろいろなその時の気持ちを切り取っているのだと感じています。例えば駅のホームで撮った写真(記事内1枚目)は、当時すごく悩んでいたこともあり苦しかった。だから今このような光を見ても苦しい。だからと言って、見てもらう人にその気持ちを感じてほしいわけではありません」。
【TIPS 03】その時の空気を消さずに撮る
地元の最寄りの駐輪場。「とにかくキレイだった記憶がある。まだカメラの使い方もよくわからなかったころ」。
学校帰り。「今思えば、写真を始めたころからこういう時に撮っている。あの時のみんなの気持ちが写っている」。
「少し曇ったふわっとした空気だったり、晴れている時の空気だったり。少し湿気を含んだ空気、完全に雨が降っている時の空気。どの空気もその時を写している。その時の空気を消さない。そのままを受け入れる。自転車置き場での写真は、晴れているけど少し寒い夕方で、最寄りの駅から家に帰る時。あの時の空気や温度やにおい、それらすべてを私は今も覚えています。スナップの場合は、より空気が写っていると感じます」。
柘植美咲
写真家 2000年生まれ、三重県出身。高校1年生から写真を撮り始める。2018年ポカリスエットの広告撮影に、高校生カメラマンとして起用され、業界で大きな話題となる。2020年、IMA next “LOVE”でグランプリを受賞。yonigeアルバム『健全な社会』へのアートワークの提供、羊文学や20th Centuryのアーティスト写真の撮影などを手がけている。
愛用カメラ:Nikon FM2
GENIC vol.69【写真家に聞く「スナップの腕をあげる3つの極意」】
Edit:Izumi Hashimoto
GENIC vol.69
1月号の特集は「SNAP SNAP SNAP」。
スナップ写真の定義、それは「あるがままに」。
心が動いた瞬間を、心惹かれる人を。もっと自由に、もっと衝動的に、もっと自分らしく。あるがままに自分の感情を乗せて、自分の判断を信じてシャッターを切ろう。GENIC初の「スナップ写真特集」です。