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記憶の解像度を上げる“旅のしおりづくり”のススメ/市川渚の“偏愛道” Vol.04

市川渚<連載コラム>第1・第3日曜日更新
ファッションとテクノロジーの世界で活躍する
クリエイティブ・コンサルタント市川渚が
身の回りのモノ/コトへの強いこだわり=偏愛を語る!

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記憶の解像度を上げる“旅のしおりづくり”のススメ/市川渚の“偏愛道” Vol.04

何事に対してもそうなのだけれど、準備に時間をかけるタイプである。
旅も然り。限られた時間を確保して出かけるのだから、機会損失は可能な限り少なくしたい。帰ってから「ああ、あそこも行けばよかった」「こんなところ、あったんだなあ」なんて、後悔はしたくないから。

そのためには旅に出る前の情報収集が欠かせない。夫とだけでなく、友人と旅に出かけることも多いのだけれど、基本的には各々が収集した情報をオンライン上でシェアしながら集めていく。これまで「Trello」というタスク管理ツールを使っていたのだが、今年から「Notion」に移行してみることにした。

NotionはメモとスプレッドシートとTo-Doリストを合わせて一箇所で管理できる情報管理ツール。PC、タブレット、スマホ、どこでも見ることができるから、普段からタスクの管理やメモ、面白かった記事、気になるモノや場所などの記録をしておく“知の蓄積スペース”として活用している。
この写真は「行きたい場所リスト」。国内と海外、分けてページを作ってある。

旅行先が決まったら、シートを作って一緒に出かけるメンバーと共有。上部には旅の目的や日程、宿泊先などの旅の概要を記載する。

その後は「Plan」と名付けたリストにTo-Doや行きたい場所を各々で追加していき、ある程度集まってきたら、「Schedule」リストに内容や時間、移動方法、距離などを鑑みながら旅程として組み立てていく。一連の作業はまさに“旅のしおり”作り。これが、楽しいのだ。

旅のしおりづくりのゴールは「旅行前・中・後に必要なすべての情報がそれを見れば得られること」だ。空港に着いて、タクシーに乗って、言葉の通じない運転手さんを目の前にして慌ててホテルの住所を調べた、なんてことよくあると思うのだけれど、そんな時もこれを開けばすぐにわかる。便利である。英語表記の住所は国によって通じないこともあるので、必ず現地の表記(言葉)を併記しておくのがベター。

旅の途中でおそらく使う機会が最も多いアプリであろう「Google Map」には、行く予定になっている場所や行きたい場所をリスト機能でどんどんと保存していく。

地図上に位置をマッピングしていくと各スポット同士がどのくらい距離が離れているのかを視覚的に確認することができるので、無理な旅程を組むことも防げる。また、ストリートビューで宿泊地の周囲がどんな街なのかということも必ず確認するようにしている。周辺スポットの検索機能も便利。

昨年末に決めた、2020年最初の旅行先は台北。ここまでのNotionを撮った写真はプランニング途中のものなので、まだまだ情報が充実していないけれど、出発する頃には情報密度の高い旅のしおりが仕上がっていることだろう。

二十歳そこそこのころ、当時留学していた友人たちを訪ねてロンドンに行った。ロンドンを訪ねたあと、ひとりでパリに行く予定だったので、パリの予定は自分で完璧にリサーチしていたのだけれど、ロンドンの街案内は友人たちに頼ることにした。

帰国してから、気付いたこと。それはロンドンで行った場所に対する記憶や情報の解像度が、パリと比べてあきらかに低いということだった。
その場所で実際にやったことや見たものは覚えているけれど、その場所がどんな地域に位置していたのか、どのバスに乗って、どこから移動してたどり着いたのか……覚えていなかったのだ。もちろん旅自体はとても楽しかったのだけれど。人任せにするとはそういうことか、と考えさせられる経験であった。

何も調べずに現地へ向かう行き当たりばったりスタイルの旅にも憧れるし、事前準備をしすぎると旅自体が答え合わせのようになってつまらなくなってしまう、と言われたこともある。とはいえ、抜かりない下調べのもとで旅のしおりを作るという作業は、旅先で機会損失をしたくないという欲張りな心を満たしてくれるだけでなく、人生にちょこちょこと刻まれていく旅の記憶の解像度を上げるために欠かせない“旅の一要素”になっている。
これがないと、私の旅は始まらない。

【市川渚の“偏愛道” 】バックナンバー

Vol.03 纏う服がくれる力
Vol.02 自分にとっての「心地よさ」を追求すること

市川渚

1984年生まれ。N&Co.代表、THE GUILD所属。
ファッションとテクノロジーに精通したクリエイティブ・コンサルタントとして国内外のブランド、プロジェクトに関わっている。自身でのクリエイティブ制作や情報発信にも力を入れており、コラムニスト、フォトグラファーやモデルとしての一面も合わせ持つ。

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